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スキージャンプFISワールドカップ2021/22男子個人第28戦プラニツァ【シーズン総括】

小林陵侑が3季ぶり2度目の総合優勝

2022年3月27日(日) プラニツァ(SLO)HS240/K200

36th World Cup Competition

1 マリウス・リンビーク(NOR)455.1pt
2 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)446.8pt
3 ペテル・プレヴツ(SLO)438.6pt
 
8 小林 陵侑(土屋ホームスキー部)423.7pt
26 中村 直幹(Flying Laboratory SC)348.1pt
29 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)313.0pt

オフィシャル リザルト


最終戦までもつれた総合優勝争い。
89pt差でリードする小林陵侑に逆転するためには、カール・ガイガーは最終戦に勝利することが絶対条件。そのうえで陵侑が21位以下となることが必要となる。

圧倒的に有利な状況にあり「プレッシャーは正直なかった」という陵侑は1本目で6位。
対して1本目で14位だったガイガーは、2本目を飛んだ時点でカレントリーダーとなれなかった。
ガイガーが絶対条件である勝利を逃したこの瞬間に小林陵侑の総合優勝が確定した。


試合に勝ったのはリンビーク。
ツボにはまった時のリンビークは凄まじい。前日の団体戦と合わせて計4本のジャンプは、好調スロベニア勢を置きざるにするほどの圧巻のパフォーマンスだった。

そして、2位には今季初表彰台となる佐藤幸椰が来た。
世界選手権から始まるフライング連戦では良いところを見せてはいたが、まさか表彰台に乗るとは正直思っていなかった。
リンビークと遜色のない一発となった2本目では珍しくガッツポーズを決めた。本人も納得の1本だったのだろう。

前戦で2年ぶりの表彰台となったぺテル・プレヴツが2戦連続の表彰台。
スロベニアは国別総合でオーストリアを逆転しての初タイトルが期待されていた。3位から7位に5人の選手が並びポイントを稼いだが、リンビークと幸椰にしてやられて逆転はならなかった。

2020/21シーズン総括

2018/19シーズン以来となる2度目の総合優勝に輝いた小林陵侑。
ガイガーとの一騎打ちの様相を呈したシーズンで最後までもつれたが、最終戦で見事にタイトルを決めた。

ワールドカップ総合順位

1 小林 陵侑(JPN)16218勝(4)
2 カール・ガイガー(GER)15154勝(6)
3 マリウス・リンビーク(NOR)12315勝(10)
4 ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR)12272勝(1)
5 シュテファン・クラフト(AUT)10694勝(17)
6 マルクス・アイゼンビヒラー(GER)9502位2回(2)
7 アンツェ・ラニセク(SLO)9361勝(9)
8 ティミ・ザイツ(SLO)7111勝(46)
9 ヤン・ヘール(AUT)6621勝(39)
10 セネ・プレヴツ(SLO)6573位(38)
11 ダニエル・フーバー(AUT)5561勝(12)
13 佐藤 幸椰(JPN)5302位(11)
20 ジガ・イエラル(SLO)3891勝(25)
21 ダニエル-アンドレ・タンデ(NOR)3391勝(14)
31 中村 直幹(JPN)1964位(34)
32 小林 潤志郎(JPN)1799位(33)
39 伊東 大貴(JPN)  888位(55)
49 佐藤 慧一(JPN)3822位(20)
右端の( )は昨シーズンの順位

WC総合

大会別優勝者

1ニジニ・タギルLH K.ガイガー(GER)
2ニジニ・タギルLH H-E.グランネル(NOR)
3ルカLH 小林 陵侑(JPN)
4ルカLH A.ラニセク(SLO)
5ヴィスワLH J.ヘール(AUT)
6クリンゲンタールLH S.クラフト(AUT)
7クリンゲンタールLH 小林 陵侑(JPN)
8エンゲルベルクLH K.ガイガー(GER)
9エンゲルベルクLH 小林 陵侑(JPN)
10オーベルストドルフLH 小林 陵侑(JPN)
11ガルミッシュ-パルテンキルヘンLH 小林 陵侑(JPN)
12ビショフスホーヘンLH 小林 陵侑(JPN)
13ビショフスホーヘンLH D.フーバー(AUT)
14ビショフスホーヘンLH M.リンビーク(NOR)
15ザコパネLH M.リンビーク(NOR)
16ティティゼーーノイシュタットLH K.ガイガー(GER)
17ティティゼーーノイシュタットLH K.ガイガー(GER)
18ヴィリンゲンLH 小林 陵侑(JPN)
19ヴィリンゲンLH M.リンビーク(NOR)
20ラハティLH S.クラフト(AUT)
21ラハティLH 小林 陵侑(JPN)
 H-E.グランネル(NOR)
22リレハンメルLH S.クラフト(AUT)
23オスロLH M.リンビーク(NOR)
24オスロLH D-A.タンデ(NOR)
25オーベルストドルフFH S.クラフト(AUT)
26オーベルストドルフFH T.ザイツ(SLO)
27プラニツァFH Z.イエラル(SLO)
28プラニツァFH M.リンビーク(NOR)

小林陵侑 vs カール・ガイガー

最終戦。2本目を飛び終えた陵侑の元にガイガーが歩み寄り、二人は健闘を称えるように抱き合った。
開幕から28試合に渡ってタイトルを争い続けた二人。イエロービブはこの両者の間だけを行き来した。

シーズン序盤に、陵侑が失格とコロナ陽性反応により3試合を失ったために総合6位にまで落ちた場面を除けば、総合優勝争いはこの二人によってのみ繰り広げられ、他の者が入り込む余地はなかった。

ガイガーは着実にポイントを重ね開幕から10試合に渡りトップを守り続けた。
しかし、コロナによる欠場からの復帰後に陵侑が一気に勢いづく。
ジャンプ週間での3連勝でイエロービブ奪取に成功。続く第12戦でも勝利し4連勝。
個人的には、正直これで勝負あったかとも思われた。

が、ガイガーもノイシュタットでの2連勝などで巻き返す。
北京オリンピックの前後あたりで両者は激しくイエロービブを奪い合った。

激しい争いは、しかし、シーズン終盤に向けてやや違った色合いを帯びる。
陵侑は第22戦の勝利と第23戦の2位以降表彰台がない。
ガイガーもまた、ノイシュタットでの2連勝を最後に勝利がなく表彰台は第23戦での3位が最後。
総合優勝争いのクライマックスは、表舞台とは別のところで行われていた感がある。

勢いではなく成熟を感じさせた小林陵侑

2018/19の総合優勝との違いがここにある。
宮平ヘッドコーチはその時の総合優勝を「勢い」と表現した。
比較して今季の陵侑にはあの時のような勢いは無かった。

しかし、勢いは無くても、しっかりとポイントを積み重ねる安定感としたたかさがあった。
ガイガーがトップ10を4度外したのに対して、陵侑は出場した全試合でトップ10。
2018/19の13勝のうち1本目を首位で折り返しそのまま優勝した試合が12試合だったのに対して、今季は8勝のうち5つが逆転勝利だ。

2018/19 2021/22
1本目2本目 1本目2本目
1位1位1勝2位1位
1位1位2勝1位1位
1位1位3勝2位1位
1位1位4勝5位1位
1位6位5勝1位4位
1位3位6勝2位1位
1位1位7勝1位/
4位1位8勝5位1位
1位1位9勝
1位6位10勝
1位1位11勝
1位1位12勝
1位2位13勝

ガイガーはクラフトとの総合争いに敗れた2019/20シーズンの終盤同様に、結果が出なくなると少しイラついている様子が見受けられた。
対して陵侑はシーズン終盤に向けて首をひねる場面こそ増えたものの、勝てなくてもあまり意に介していないように見えた。
このようなメンタル面でガイガーよりも安定していたことも非常に大きく結果を左右したのではないかと思う。

後述するが、今シーズンは全体としてとてもハイレベルなシーズンであったように思う。
少なくとも「勢い」で勝てるレベルではなかった。
夢か現か幻か…という間に勝ち続けた2018/19とは違い、泰然として、それでいてしたたかに、、、、、ポイントを積み上げる大人の戦い方でタイトルを掴んだ。

今季は、小林陵侑のアスリートとしての「成熟」を感じさせるシーズンだったように思う。

歴史に名を刻み続ける小林陵侑

3季ぶり2度目の総合優勝を果たした小林陵侑。
前回の総合優勝も記録尽くしのものとなったが、今回も歴史的なものだと言ってよい。

ワールドカップにおいて複数回の総合優勝を遂げた選手は過去に11人。
陵侑はこの偉大なる先人たちに続く12人目の選手となった。

複数回の総合優勝を遂げた選手

マッチ・ニッカネン(FIN)4回82/83、84/85、85/86、87/88
アダム・マリシュ(POL)4回00/01、01/02、02/03、06/07
アンドレアス・ゴルトベルガー(AUT)3回92/93、94/95、95/96
アルミン・コグラー(AUT)2回80/81、81/82
プリモシュ・ペテルカ(SLO)2回96/97、97/98
マルティン・シュミット(GER)2回98/99、99/00
ヤンネ・アホネン(FIN)2回03/04、04/05
トーマス・モルゲンシュテルン(AUT)2回07/08、10/11
グレゴア・シュリーレンツァウアー(AUT)2回08/09、12/13
カミル・ストッフ(POL)2回13/14、17/18
シュテファン・クラフト(AUT)2回16/17、19/20
小林 陵侑(JPN)2回18/19、21/22

また、陵侑は今季、2018/19以来2度目となるジャンプ週間総合優勝を果たし、北京オリンピックNHでは金メダルに輝いた。
同一シーズンにWC総合優勝、ジャンプ週間総合優勝、オリンピック金メダルの3冠を達成したのは陵侑の他に過去に5人しかいない。

同一シーズンでのWC総合、ジャンプ週間、五輪の3冠達成

83/84イェンス・バイスフロク(DDR)サラエボ五輪70m級
87/88マッチ・ニッカネン(FIN)カルガリー五輪70m・90m級
91/92トニ・ニエミネン(FIN)アルベールビル五輪LH
93//94エスペン・プレーデセン(NOR)リレハンメル五輪NH
17/18カミル・ストッフ(POL)平昌五輪LH
21/22小林 陵侑(JPN)北京五輪NH
※ ニッカネンは4冠

通算27勝。
葛西紀明は「シュリーレンツァウアーの全盛期より上」と愛弟子を評した。
これについては様々な意見もあるだろうが、少なくともシュリーリを超えていく選手であることは間違いないと言えるだろう。

ハイレベルな好敵手たち

小林陵侑とガイガー以外の選手たちは、ふたりの争いを指を咥えて見ていたわけではない。
総合優勝争いに直接絡むことはなかったとはいえ、むしろ全体として見ればとてもハイレベルなシーズンだったように思う。
陵侑やガイガーといえど、シーズン終盤には表彰台に上ることすら難しかったことがその証左となろう。

最終戦で、前年王者グランネルに逆転し総合3位となったリンビークは、シーズンの中盤から終盤にかけては主役の二人を喰うほどの力を見せた。
アグレッシブな踏切と空中は魅力的で凄まじいパフォーマンスを見せるが、やや安定せず成績にムラがあるのが惜しい。

スロベニア勢の活躍も素晴らしかった。
空中での技術の高さは彼らの真骨頂ではあるが、それが成熟していったシーズンだったと思う。
何らかのマテリアル上の優位性もあるのかもしれないが、それも含めてチームとしての総合力が高かった。

前年王者グランネルが2つの勝利で面目を保ち、クラフトは4つの勝利で真価を示した。
一方でポーランドは未勝利。ジワが2回、ストッフが1回表彰台に立つのが精いっぱいだった。
ニューカマーとしては、コス(SLO)、チョフェニック(AUT)、サドレーフ(RUS)あたりが挙げられるだろうか。

なお、今季の優勝者数は11人。
過去9シーズンの平均が10.9人なので、多くもなく少なくもなくといったところ。
うち初優勝者はラニセク、ヘール、フーバー、イエラルの4人。

12/1313/1414/1515/1616/1717/1818/1919/2020/2121/22
11人14人13人10人9人11人11人11人8人11人

その他のシーズンタイトル

Four Hills Tournament 総合順位

1 小林 陵侑(JPN)1162.3pt
2 M.リンビーク(NOR)-24.2
3 H-E.グランネル(NOR)-34.1
4 K.ガイガー(GER)-38.7
5 M.アイゼンビヒラー(GER)-44.7
10 佐藤 幸椰 (JPN)-97.6
17 小林 潤志郎 (JPN)-285.5
28 中村 直幹 (JPN)-453.5
32 伊東 大貴 (JPN)-552.4
54 佐藤 慧一 (JPN)-950.7

4HT総合順位

RAW AIR 総合順位

1 S.クラフト(AUT)1203.3pt
2 K.ガイガー(GER)-30.7
3 小林 陵侑(JPN)-40.4
4 C.プレヴツ(SLO)-48.6
5 M.アイゼンビヒラー(GER)-54.1
20 佐藤 幸椰(JPN)-182.7
27 佐藤 慧一(JPN)-297.3
30 小林 潤志郎(JPN)-402.4
33 伊藤 大貴(JPN)-422.1
43 中村 直幹(JPN)-599.5

RAW AIR総合順位

Planica7 総合順位

1 T.ザイツ(SLO)1532.5pt
2 M.リンビーク(NOR)-3.8
3 P.プレヴツ(SLO)-7.4
4 Z.イエラル(SLO)-19.6
5 A.ラニセク(SLO)-21.4
7 佐藤 幸椰(JPN)-36.6
9 小林 陵侑(JPN)-64.4
40 中村 直幹(JPN)-1028.8
42 小林 潤志郎(JPN)-1047.4
43 伊東 大貴(JPN)-1061.0
44 佐藤 慧一(JPN)-1065.9

Planica7 総合順位

Ski Flying 総合順位

1 Z.イエラル(SLO)270pt
2 T.ザイツ(SLO)-10
3 S.クラフト(AUT)-46
4 P.プレヴツ(SLO)-76
5 A.ラニセク(SLO)-99
8 佐藤 幸椰(JPN)-119
9 小林 陵侑(JPN)-127
31 中村 直幹(JPN)-255
43 小林 潤志郎(JPN)-268
44 佐藤 慧一(JPN)-269
 伊東 大貴(JPN)-270

Ski Flying 総合順位

団体戦 大会別優勝国

1 ヴィスワLH オーストリア日本5位
2 ビショフスホーヘンLH オーストリア日本2位
3 ザコパネLH スロベニア日本3位
4 ヴィリンゲンLH-Mix スロベニア日本5位
5 ラハティLH オーストリア日本5位
6 オスロLH-Mix スロベニア日本4位
7 プラニツァFH スロベニア日本6位

ネイションズカップ総合順位

1 オーストリア5789
2 スロベニア-47
3 ドイツ-400
4 ノルウェー-429
5 日本-1712

国別総合順位

日本チームの戦い

飛躍の年となるものと期待された佐藤慧一の不振は想定外だったが、それ以外は概ね昨年と同じ総合順位に落ち着いた。

開幕戦で表彰台に迫る4位となった中村直幹。
クリンゲンタールで2年ぶりにトップ10入りを果たした小林潤志郎。
ヴィリンゲンで2年ぶりの1桁順位となった伊東大貴。
そして佐藤幸椰は、最後の最後に表彰台を射止めた。

五輪のメンバーから漏れた佐藤慧一を除く5人は、11月に日本を発ってから一度も帰国することなくシーズンを戦い抜いた。
通常であれば札幌大会で帰国できるのだが、昨季に続いてコロナ禍により中止となったため、その機会も奪われた。

肉体的にも精神的にも過酷ともいえる状態だったと思うが、欧州各国にはないこうしたハンディキャップを背負いながら戦った日本の選手及びコーチングスタッフには心から敬意を表したい。