女子:丸山希、少年:森大耀、成年:小林朔太郎がノーマルヒルに続きラージも制する

女子組
1 | 丸山 希(北野建設SC) | 190.9pt |
2 | 一戸 くる実(雪印メグミルクスキー部) | 179.5pt |
3 | 伊藤 有希(土屋ホームスキー部) | 177.3pt |
少年組
1 | 森 大耀(東海大札幌高校) | 181.4pt |
2 | 三上 託摩(余市紅志高校) | 162.4pt |
3 | 岡部 凛大郎(下川商業高校) | 159.6pt |
成年組
1 | 小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部) | 288.5pt |
2 | 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) | 273.1pt |
3 | 二階堂 蓮(日本ビールスキー部) | 259.9pt |
各組いずれも、前日のノーマルヒルの勝者が連勝でラージヒルも制した。
前日の宮の森が今季初戦だった丸山希は、これで開幕2連勝。
丸山にとって大倉山は2021全日本選手権兼NHK杯で転倒し大怪我を負い2022北京五輪出場を断念せざるを得なくなった因縁の地。
その地でしっかりと勝ち切った。2026ミラノ・コルティナ五輪に向けて最高のスタートを切ることができたといえる。
少年組の森大耀は、この春に東海大札幌高校に進んだ新1年生。
昨季は中学生ながら、かつ、コンバインドを主戦場としていながら、スペシャルジャンプで高校生たちと対等以上の戦いを見せた。
今季からは、父(長野、ソルトレークシティー五輪複合代表の敏さん)と兄(森 恢晟)とは違い、スペシャルジャンプに専念するようだ。
成年組の小林朔太郎は、この日ただ一人ヒルサイズオーバーを2本揃えた。
特に143.0mまで飛距離を伸ばし着地も決めて見せた2本目は白眉。2本揃えられないことが課題だったというが、しっかりとその課題をクリアして見せた。
以前、朔太郎はいずれWCで勝てる選手になると予言めいたことを書いたことがあるが、そうした雰囲気がいよいよ立ち始めてきたと感じられる。
女子組






少年組






成年組






表彰式



試合前の公式練習が始まるときに、テストジャンパーがいきなり転倒した。
公式練習では葛西姉妹が揃って空中でバランスを崩した。
いつも以上に風が定まらず、かなり難しいコンディションだったと思う。
定刻より30分押しの10時30分に女子の本戦1本目がスタート。
比較的サクサクと進み、男子1本目は11時00分開始。
ところが、5分と経たないうちに選手が転倒。その際にソーメンがごっそりはがれブレーキングトラックまで滑り落ちてしまった。
その修復のために11時30分まで中断。
再開するも、風が定まらず12時00分まで中断。
12時になっても状況は変わらず更に20分の中断。
結局、1時間15分の中断。
下に降りるタイミングを逃し、炎天下のなか上で待ち続けたのでヘロヘロ。
暑くて長くてたいへんだったけれど、2024伊藤杯ファイナルで引退した楢木遊太さんが公式練習のコールを務め、本戦ではゲスト解説のような形で選手目線の興味深いお話をたくさん披露してくれたので、なんだか得した気分。

場内MCが、この真夏の札幌三連戦の結果は、直近のグランプリやそれに続くワールドカップ、ひいては五輪の選考が懸かっているという趣旨のことを盛んに紹介していた。
しかし、これは私の認識と少し異なる。
確かに昨シーズンは、男子において札幌三連戦の総合上位2名がGP第1次遠征に派遣された。
対して、今年の札幌三連戦の結果はGP遠征の選考に全く結びつかない。
今夏の男子GP第1次遠征の選考は、下記の選考基準によりALSJMの上位者(D.1 WC+GPに限る)と定められている。
- 対象大会:Courchevel/Wisla
- 選考人数:5名
- 選考基準:ALSJM上位者(D.1 WC+GPに限る)
ALSJMとはオリンピック・アロケーション・リスト(五輪出場枠配分リスト)のこと。
2026年冬季オリンピックにおけるスキージャンプの参戦数は50名。各国の最大枠数は4枠。
この各国の参戦枠数を決めるのが五輪出場枠配分リストだ。
五輪出場枠配分リストは、2024年7月1日~2026年1月18日に開催されるワールドカップ(WC)及びグランプリ(GP)の成績によってランキングされる。
2026年1月19日時点で最終集計し、ランキング順に各国4名に達したらその国の5番手以降の選手はカウントせず、50名に達するまでカウントしていく。
50人の中に4名いればその国の出場枠は4。3名であれば出場枠は3… という算出法で各国の出場枠が決まる。
このリストで50名の枠が埋まらなかった場合にはコンチネンタルカップ(COC)及びインターコンチネンタルカップ(ICOC)の結果を対象としたリストを用いる。
五輪出場枠配分リストが「D.1 WC+GP」、後者のリストが「D.1 COC」と区分されている。
目安として、五輪出場枠配分リストの25位以内に4人が入れば4枠が確保できるとされているらしい。
現時点では、9位:小林陵侑、18位:二階堂蓮、25位:中村直幹、37位:小林朔太郎、38位:佐藤慧一、48位:小林潤志郎、51位:佐藤幸椰、89位:竹内択の8名がリストアップされている。
現時点では目安の25位までに3名が入っているが、ただし、この順位は2026年1月18日までの間で、GPとWCが開催されるたびに絶えず変動していく。
なので、夏の間にできる限りポイントを稼いで25位圏内に4名を送り込んでおきたい。
男子GP第1次遠征の選考を、ALSJMの上位者、しかも「D.1 WC+GP」に限ったのは五輪出場枠の最大4枠を確保するためであることは明白だ。
作山ヘッドコーチもその主旨の発言をしている。
もちろん、リストにない選手を新たに派遣して、その選手がリストの上位に入ってくれればそれでもよい。
が、ゼロから上位を目指すよりは既にリスト上に名前のある選手のポイントを加算させていく方が確率は高い。
その意味では、GP第1次遠征の選考をALSJMの上位者としたのは理にかなってはいる。
GP第1次派遣の選考結果は札幌三連戦に先立つ7月25日に既に発表されており、中村直幹、小林朔太郎、佐藤慧一、小林潤志郎、佐藤幸椰が選出されている。
五輪出場枠配分リストの上位二人(小林陵侑、二階堂蓮)の名前がないが、これは選手側の意向によるものではなく、既にこの2名による2枠確保は堅いので、それ以外の選手たちを上位に押し上げ4枠を確保しようというSAJ側の意図によるものだろう。
なお、五輪出場枠配分リストはあくまでも各国の参戦枠数を決めるためのリストであって、選手個人の出場権を決めるためのリストではない。
よって、このリストの上位50名に名前が挙がった選手が、そのまま五輪に出場となるわけではなく、確定した枠数に対し具体的にどの選手を選考するかは各国がそれぞれの方法で決めることになる。
では、SAJでは五輪代表の派遣基準をどのように定めているか。
2024/2025~2025/2026シーズンのFISワールドカップ、サマーグランプリまたは世界選手権において、基準日までに下記の成績を収めた選手を選出する。
- 8位以内の成績を1回以上
- 10位以内の成績を2回以上
- 15位以内の成績を3回以上
- 基準日時点の2025/2026シーズン ワールドカップスタンディングス上位者
❶、❷、❸の基準を現時点で満たしているのは次の選手たち。
最終的には、これを満たした選手の中から2026年1月19日時点のWCスタンディング上位者より出場枠数に該当する人数が選出される。
- 小林陵侑、二階堂蓮、佐藤慧一、中村直幹
- 小林潤志郎
- 小林朔太郎
しかし、他の選手たちにチャンスがないわけではない。
2026年1月19日までに上記❶、❷、❸の基準を満たせば選考対象となり得る。
ただし、そのためには今夏のGPに派遣されるか、冬のWCに派遣されないことには話にならない。
が、前述のとおりGP第1次遠征の選考は既に終了している。
GP第2次遠征(ルシュノフ/バルディフィエンメ/ヒンツェンバッハ/クリンゲンタール)の選考基準には、今後の国内戦の結果はおろか、COCの結果すら反映されない。(一応「COC出場選手と入れ替えを行う場合がある」と明記されてはいるが…)
- 対象大会::Rasnov/ Val di Fiemme/ Hinzenbach/ Klingenthal
- 選考人数:5名(クォータにより人数を変更する場合がある)
- 選考基準:
- 2024/2025 WCランキング上位2名の選手
- ALSJM上位の選手
- 特記事項:
- COC出場選手と入れ替えを行う場合がある
- WCクォータおよび2026OWGクォータの確保を優先する場合、選考基準に沿わずコーチ会議を行い、HC判断で選手を決定する
つまり、五輪出場枠配分リストに名前がない選手にとって、今夏のGP参戦への扉はピシャリと閉じられてしまっているような状態だ。
GPに参戦して、そこである程度の成績を残さなければWCに選考される可能性も薄い。GPにもWCにも出場できなければ五輪派遣基準は満たせない。
冒頭で、「札幌三連戦はGP、WC、五輪の選考が懸かっている」に対して「これは私の認識と少し異なる」と書いたのはこのためだ。
初めから五輪の枠数が確定している状態なのであれば、他にやりようもあるのだろう。
でも実際は、枠の確保と選手選考を同時進行で行わなくてはならない。
なので、こういうやり方を取らねばならないことは理解できる。
ただ願わくば、せめてこの夏の段階では扉を閉めずに多くの選手にチャンスを与えてほしかった。心情的にもそうだし、競い合うことで全体のレベルが底上げされることも期待できる。
ただ、扉は完全に閉じられてしまったわけではない。
男子においては、今回の札幌三連戦の結果はCOC第2ピリオドの選考に繋がるとされている。
札幌三連戦の総合上位6名の選手のうち少なくとも1名は、サマー蔵王での最終決戦によりCOC第2ピリオドに派遣されることが選考基準に明記されているのだ。
- 対象大会:Hinterzarten/Klingenthal
- 選考人数:4名
- 選考基準:
- 2024/2025 COC ランキング上位1名
- GP第1ピリオドでポイントを獲得したALSJM下位2名
- 最終選考会を開催し、対象選手から上位者を選出する
- 最終選考会対象選手:COCの出場資格を有している
- 下記3大会の総合JPポイント上位6名、
- GP2025第1ピリオドポイント未獲得選手
- 選考会対象大会:
- 第43回札幌市長杯宮の森サマージャンプ大会
- 第26回札幌市長杯大倉山サマージャンプ大会
- チャレンジカップ2025大倉山サマージャンプ大会
- 最終選考会:サマースキージャンプ2025山形蔵王大会
- 選考方法:最終選考会の上位者
- 最終選考会対象選手:COCの出場資格を有している
- 特記事項:
- WCクォータおよび2026OWGクォータの確保を優先する場合、選考基準に沿わずコーチ会議を行い、HC判断で選手を決定する
このCOC遠征でピリオド3位以内となれば、WC開幕ピリオドが1枠増となる。通例によればその1枠に自身が収まるはずだ。
なお、この基準の「2024/25 COCランキング上位1名」に該当するのは内藤智文。昨季の冬の再現が期待される。
もう一つは、これも通例によれば全日本選手権ラージヒルの成績によってWC開幕ピリオドに選出されるという道が残されている。
ただし、現時点では冬の選考基準は示されていない。昨季は夏の選考基準と同時に冬の選考基準が発表されたが今年はまた元に戻ってしまった。
五輪シーズンゆえに、枠の確保状況が流動的なので、冬の基準を予め明確にすることができないということだろうか。それは理解できる。
ただ一方で、五輪シーズンゆえに、選手・関係者に予めしっかりと道筋を示してほしいとも思う。
いずれにしても熾烈な戦いは続く。
2025サマー国内戦の表彰台(女子)
大会 | 優勝 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
サマー朝日 | 伊藤 有希 | 佐藤 柚月 | 櫻井 梨子 |
サンピラー記念 | 一戸 くる実 | 佐藤 柚月 | 伊藤 有希 |
札幌市長杯NH | 丸山 希 | 一戸 くる実 | 葛西 春香 |
札幌市長杯LH | 丸山 希 | 一戸 くる実 | 伊藤 有希 |
2025サマー国内戦の表彰台(少年)
大会 | 優勝 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
サマー朝日 | 三上 託摩 | 糸氏 琉人 | 長谷川 琉已 |
サンピラー記念 | (9位 三上 託摩) | (12位 森 大耀) | (20位 姫野 蒼大) |
札幌市長杯NH | 森 大耀 | 三上 託摩 | 布施 飛雄真 |
札幌市長杯LH | 森 大耀 | 三上 託摩 | 岡部 凛大郎 |