第102回全日本スキー選手権ノーマルヒル

伊藤有希が全日本選手権初優勝 中村直幹は7年ぶり2度目の制覇

2023年10月26日(木)札幌市 宮の森ジャンプ競技場 HS100/K90

女子組(基本ゲート1本目15、2本目17)

1  伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 246.3pt
2  高梨 沙羅(クラレ) 241.9pt
3  一戸 くる実(CHINTAIスキークラブ) 228.2pt
 
4  岩佐 明香(大林組スキー部) 227.9pt
5  勢藤 優花(YAMAtune) 221.3pt
6  佐藤 柚月(札幌日大高校) 221.0pt

リザルト

男子組(基本ゲート1本目10、2本目6)

1  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 248.7pt
2  小林 陵侑(TEAM ROY) 247.2pt
3  坂野 旭飛(下川商業高校) 242.5pt
 
4  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) 241.1pt
5  中村 優斗(COOTS SC) 238.5pt
6  小林 朔太郎(群馬県スキー連盟) 238.2pt

予選 リザルト


全日本選手権は元々は冬に開催されていたが、2015年第94回大会以降は秋開催となった。
それまでWC組不在で決めていた全日本チャンピオンの座を全員参加で競わせようというのがその趣旨。

さらには、2018年頃からは全日本チャンピオンの称号に相応しい “ご褒美” が用意される大会に生まれ変わっている。

ご褒美について詳しくは『2023/24国際競技大会派遣選手選考基準』をご覧いただきたいが、男女ともに2023/24ワールドカップの開幕ピリオドに大逆転で出場することができるばかりでなく、その後のWC選考の機会に向けてもこの選手権の成績が非常に重要となる。

来るべき雪上シーズンを直前にして、いきなり大きな山場を迎える。
それが全日本選手権だ。

女子組

1 伊藤 有希(土屋ホームスキー部)
2 高梨 沙羅(クラレ)
3 一戸 くる実(CHINTAIスキークラブ)
4 岩佐 明香(大林組スキー部)
5 勢藤 優花(YAMAtune)
6 佐藤 柚月(札幌日大高校)

昨シーズンまでに全日本選手権NHで6連覇を果たしていた高梨沙羅。今年は7連覇か懸かる。
女子は第100回(2021年)大会からLHが加わったが、高梨はこれも2連覇中。
つまり今年は2冠の3連覇も懸かる。

しかしそれらは伊藤有希が阻止した。
この日の宮の森はやや難しい風の状態ではあったが、高梨は2本とも条件が良かった。
勝敗を分けたのはテレマークだっただろうか。

伊藤が2本のジャンプで9つの18点台が並んだのに対して高梨は18点台が二つだけ。16点台も一つある。
両者の飛型点の差である4.5ptが、ほぼそのまま総得点の差(4.4pt)となって表れた。

伊藤有希は意外にも全日本選手権初優勝。
それだけ高梨が勝ち続けてきたということ。

僅差で岩佐明香を逆転した一戸くる実も全日本選手権初表彰台。
全日本選手権の表彰台の常連であった丸山希は、やや風に煽られてしまったか8位に終わった。

全体として、K点オーバー連発のスペクタクルな試合だったように思う。

男子組

1 中村 直幹(Flying Laboratory SC)
2 小林 陵侑(TEAM ROY)
3 坂野 旭飛(下川商業高校)
4 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)
5 中村 優斗(COOTS SC)
6 小林 朔太郎(群馬県スキー連盟)

風のいたずらが随所で見られた試合ではあったが、風待ちのレッドシグナルは皆無。
公平性と安全性の担保はゲート変更でのみ行われた。
男子組においては、これが勝負の綾となったように思う。

2本目ではゲート変更は行われなかったが、1本目は10番で始まり→8番→6番と来て最後は4番まで全部で6段下げられた。

勝負の綾は二つ。
1つ目は31番スタートの中村優斗。強めに吹いた向かい風に乗って96.0mまで伸ばした。
ここで運営はゲートを6番に下げた。
ところが向かい風は弱まり後続の選手たちは撃沈。

勝負の綾の2つ目は42番スタートの坂野旭飛。6番ゲートで96.0m。
ここで運営は4番に下げた。ところがまた風は弱まる。
残り9人中でK点に届いたのは佐藤慧一だけ。小林陵侑、竹内択、小林潤志郎、内藤智文、二階堂蓮らの優勝候補たちが軒並みK点に届かなかった。

中村優斗も坂野旭飛も自らのジャンプでゲートを下げさせ後続の選手たちを苦しめた。
もちろんそこで向かい風が弱まったのは結果論に過ぎない。
それでもやはり二人にしてみれば「してやったり!」の心境だったのではないか。少なくとも私は見ていてそう思った。

8位で折り返した中村優斗は結果5位入賞。
坂野旭飛は堂々トップで折り返し表彰台を獲得。
二人とも、なかなか見事な戦いっぷりだったと思う。

そんな混戦模様の中にあって“どこ吹く風”とばかりに優勝したのが中村直幹。
スタート順が38番と早めだったために1本目で坂野旭飛がもたらした低速ゲート禍に巻き込まれずに済んだ。

2本目は小林陵侑に詰め寄られたが、2位で折り返したことも幸いしただろうか。
むしろプレッシャーをより強く感じていたのは1位で折り返した坂野旭飛だっただろうから。

この夏のGP3試合にエントリーするも48位、42位、予選落ちと散々な結果だった中村直幹。
マテリアルをいろいろと試していたようだが、その取り組みが実を結んだか。

中村直幹の全日本選手権優勝は2016年のNH以来となる2度目。
その時は大学生。蔵王のアイストラックが日差しで溶けてしまったために2本目がキャンセルとなり1本目の結果で決まった試合だった。

余談だが、2018年の白馬でも同じようなことが起こり、2019年札幌以降の全日本選手権はサマートラックが使用されるようになった。

表彰式

女子組
女子組
男子組
男子組

ひょっとすると、風のいたずら以上に選手たちを苦しめたのは雪虫だったかも。

道民にとっては、冬の訪れを告げる風物詩として子供のころからお馴染の虫。
いつもは何ら害となるようなことのない虫なのだが、今年は異常発生した。
おそらくは飛んでいる選手たちの鼻や口にも入ったことだろう。

観客もたいへんだったが、どういうわけか私の周囲にはあまり飛んでこなかった。
日陰にいたことが幸いしたのだろうか。
その代りとても寒かったけど。

全日本選手権ノーマルヒル歴代優勝者

大 会 男子 女子
第94回  伊藤 謙司郎(雪印メグミルク)  高梨 沙羅(クラレ)
第95回  中村 直幹(東海大学)  勢藤 優花(北海道メディカルスポーツ専門学校)
第96回  小林 潤志郎(雪印メグミルク)  高梨 沙羅(クラレ)
第97回  竹内 択(北野建設)  高梨 沙羅(クラレ)
第98回  小林 潤志郎(雪印メグミルク)  高梨 沙羅(クラレ)
第99回  佐藤 幸椰(雪印メグミルク)  高梨 沙羅(クラレ)
第100回  小林 陵侑(土屋ホーム)  高梨 沙羅(クラレ)
第101回  二階堂 蓮(日本ビールスキー部)  高梨 沙羅(クラレ)
第102回  中村 直幹(Flying Laboratory SC)  伊藤 有希(土屋ホームスキー部)

【女子】2023国内大会トップ3

大会 1位 2位 3位
サマー朝日 伊藤 有希 佐藤 柚月 日野森 琥珀
サンピラー記念 伊藤 有希 葛西 春香 佐藤 柚月
札幌市長杯NH 伊藤 有希 葛西 春香 勢藤 優花
札幌市長杯LH 伊藤 有希 勢藤 優花 葛西 春香
チャレンジ杯 伊藤 有希 勢藤 優花 葛西 春香
サマー蔵王 丸山 希 高梨 沙羅 勢藤 優花
塩沢 伊藤 有希 一戸 くる実 岩佐 明香
妙高サマー 伊藤 有希 丸山 希 岩佐 明香
白馬記録会 丸山 希 伊藤 有希 小林 諭果
白馬サマー 丸山 希 岩佐 明香 伊藤 有希
鹿角サマー 葛西 春香 櫻井 梨子 葛西 優奈
全日本選手権NH 伊藤 有希 高梨 沙羅 一戸 くる実

【少年】2023国内大会トップ3

大会 1位 2位 3位
サマー朝日 坂野 旭飛 西田 蓮太郎 西澤 希陸
札幌市長杯NH 西田 蓮太郎 坂野 旭飛 佐々木 星語
札幌市長杯LH 西田 蓮太郎 坂野 旭飛 杉山 律太
チャレンジ杯 西田 蓮太郎 坂野 旭飛 三上 託摩
サマー蔵王 坂野 旭飛 西田 蓮太郎 三上 託摩
塩沢 坂野 旭飛 西田 蓮太郎 三上 託摩
妙高サマー グロースエッガー 健志 久保田 康太郎 成田 絆

【成年】2023国内大会トップ3

大会 1位 2位 3位
サマー朝日 佐藤 幸椰 清水 礼留飛 渡部 弘晃
サンピラー記念 渡部 弘晃 馬淵 源 山元 豪
札幌市長杯NH 小林 陵侑 岩佐 勇研 中村 直幹
札幌市長杯LH 中村 直幹 小林 朔太郎 佐藤 幸椰
チャレンジ杯 小林 陵侑 中村 直幹 岩佐 勇研
サマー蔵王 小林 陵侑 二階堂 蓮 竹内 択
塩沢 工藤 漱太 永峯 寿樹 小林 潤志郎
妙高 山本 涼太 内藤 智文 小林 潤志郎
白馬記録会 山本 涼太 小林 潤志郎 二階堂 蓮
白馬サマー 小林 潤志郎 竹内 択 山本 涼太
鹿角サマー 清水 礼留飛 坂野 旭飛 佐藤 慧一
全日本選手権NH 中村 直幹 小林 陵侑 坂野 旭飛