第67回HBCカップジャンプ大会

勢藤優花が伊藤有希を抑え7年ぶりの勝利 佐藤慧一は小林朔太郎の猛追をかわす

全日本スキー連盟A級公認
  • 2025年1月13日(月祝)
  • 札幌市 大倉山ジャンプ競技場
  • HS137/K123

女子組

1  勢藤 優花(オカモトグループ) 228.9pt
2  伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 226.8pt
3  葛西 春香(早稲田大学) 200.2pt

リザルト

男子組

1  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 248.8pt
2  小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部) 234.1pt
3  中村 優斗(COOTS SC) 221.9pt

リザルト


晴天に恵まれた2025年初戦の大倉山。
試合開始当初はランディングバーン横のリボンはだらりと垂れ下がり、体感的にもほぼ無風。
試合が進むにつれ徐々に風を感じ始めたが、大倉山にしては微風と呼べるレベル。
それでも数値上は時折1.0m/sを超える向かい風が吹き、WFは二桁のマイナスを示した。

女子組の優勝は勢藤優花。
条件にも恵まれたか、1本目でただ一人120.0mを超えてトップに立った。2位の伊藤有希との差は1.0pt。
2本目はさらに好条件を得て最長不倒となる126.5m。
120m台を2本揃えたのは勢藤だけ。伊藤有希との接戦を見事に勝ち切った。

「優勝できてすごくうれしい。あまり勝てたことはないので」と語る通り、勢藤の国内戦の優勝は2018 HBCカップ以来となる実に7年ぶり。
2014/15から海外を転戦してきたので国内試合に出場する機会が少なかったことに加え、出場するときは共に帰国している高梨沙羅や伊藤有希が出場するので「1番になりたいと思っていたけれど…達成できていなかった」

今回は伊藤有希を破っての勝利。喜びもひとしおだろうし、何よりも自信になったことだろう。
今季ワールドカップでは第2戦リレハンメルで9位。日本勢では第4戦張家口での高梨沙羅の4位に次ぐ高成績。
4日後に迫るワールドカップ札幌大会も俄然楽しみになってきた。

男子優勝は佐藤慧一。
一時帰国したワールドカップチームのメンバーが参戦していない中にあって、同じ雪印メグミルクチームに所属する小林朔太郎と共に参戦。両者は優勝争いを演じた。

国内では昨夏の札幌市長杯NH以来の勝利。HBCカップ優勝は2019年大会以来となる2度目。
「勝てたという事実にはほっとした」が納得はしていないという。
今季ワールドカップでは苦しい試合が続いているが、これが良いきっかけとなることを願いたい。

女子組

1 勢藤 優花(オカモトグループ)
2 伊藤 有希(土屋ホームスキー部)
3 葛西 春香(早稲田大学)
4 佐藤 柚月(札幌日大高校)
5 岩佐 明香(大林組スキー部)
6 中山 和(日本ビールスキー部)

伊藤有希の2本目は、いつもよりも飛行曲線が低いように感じられた。
今季は夏からずっとアプローチの不調に悩まされているという。アプローチが決まらなければ当然に踏切に影響するし、踏切が良くなければもちろん飛距離も出ない。

札幌大会はもうすぐ。その舞台で昨年は「狙って勝った」 
現状とても苦しんでいるのは承知の上で、それでもやはり期待せずにはいられない。

男子組

1 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)
2 小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部)
3 中村 優斗(COOTS SC)
4 竹花 大松(土屋ホームスキー部)
5 坂野 旭飛(雪印メグミルクスキー部)
6 鈴木 翔(札幌手稲スキー協会)

小林朔太郎には心底ぶったまげた。
最長不倒となる2本目は135.5m。テレマークも決まった。完成度の高いパフォーマンスに惚れ惚れする。
ただ、1本目は132.5mを飛ぶも転倒し飛型点を大きく失った。タラレバを言っても仕方がないが、これさえなければ優勝できていた。

元より非凡な選手ではあったけど、海外ワールドカップを経験して一回りも二回りも大きくなって帰ってきた感じがある。
経験させればさせるだけ伸びる選手なのだろう。
間違いなくワールドカップで勝つことができる力を持った選手。

表彰式

優勝者には副賞として住まいのリフォーム券。贈呈者であるNisshoの社長さんと。
このぐらい喜びを表してくれるとスポンサーさんもうれしいはず。
これは7年前の2018年大会で優勝したとき。この時は賞金100万円。

勢藤優花、伊藤有希、一戸くる実らワールドカップチームの選手と同様に、葛西春香と葛西優奈もまた複合ワールドカップの日程の合間を縫ってHBCカップに参戦した。
葛西春香は複合WCで現在総合3位。その実力通りにこの日は3位で表彰台に上った。

複合の国内大会があまり開催されない中にあって精力的にスペシャルの大会に出場していて、2021 吉田杯2022 HTBカップ2023 鹿角サマー2024 札幌五輪記念2024 宮様NHと5勝を挙げている。
日本のスペシャル女子選手にはあまり見られないテールを大きく開いたフライトが魅力的。

男子組3位は中村優斗。
2022 名寄ピヤシリで3位、2024 塩沢で3位、2024 サマー蔵王で2位などの表彰台経験があるが、大倉山での表彰台は今回が初めてのはず。
私の中ではこの時の印象が強すぎる。

女子組12位の長谷川芽依
名寄中3年生時に全国中学大会で5位。2024ジュニア世界選手権団体で佐藤柚月、岩崎里胡、一戸くる実と共に銀メダルを獲得。2023 札幌市長杯NHで7位。2024 サマー蔵王で9位とめきめきと力をつけてきている。
旭川で随一にして道内でも屈指の進学校である旭川東高校の2年生。将来の夢は医者になることなのだそうだ。

12 長谷川 芽依(旭川東高校)

この試合に少年組の区分はないが、男子組で3人が出場した中学生の中で森大耀と姫野蒼大が2本目に進出。
特に森大耀は自己最高位の13位と大健闘。
複合のオリンピアン森敏さんを父に持ち、東海大に進んだ兄の恢晟に続く逸材。本職は複合だが、スペシャルの選手に負けないジャンプの力を持つ。

13 森 大耀(札幌福井野中学校)
24 姫野 蒼大(札幌前田中学校)

昨年と一昨年のHBCカップは、その試合後に行われる選考会を含めてコンチネンタルカップ札幌大会に出場する選手の選考を兼ねていた。
今年も『選考基準』には名寄2連戦の上位者10名を対象に「選考会を2回行う」と書かれているので、過去2年と同様にこの日に行うと予想していたのだが…

今回のHBCカップが選考会を兼ねていたのかどうかは一切のアナウンスはなく今もって定かではない。
また、少なくともHBCカップ後の選考会は行われていないはず。
ひょっとすると前日の公式練習の際に行っていたのかもしれないし、そうでないのかもしれない。

こうしたことは事前に告知されることはなく、日本代表選手は知らないうちに知らない方法でひっそりと決められていく。

この試合に勝てばどうなるのか? 何位までに入れば次にどんなステップが待っているのか? 野球やサッカーであれば当たり前のようにあるこういった楽しみ方がスキージャンプの国内戦には希薄だ。

(中略)

実は「この試合に勝てばどうなるのか? 何位までに入れば次にどんなステップが待っているのか?」を表したものが『選考基準』だ。

(中略)

選考基準の内容を上手にファンに向けて発信し、それぞれの試合がどのような意味を持ち、どうしたら日本代表に選ばれるのかの道筋を分かり易く伝えることができたら国内戦をもっと楽しめるはず。

(中略)

少なくとも私は、その方が100倍楽しめる。

サマースキージャンプ2023山形蔵王大会

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