第102回全日本スキー選手権ラージヒル 兼 第65回NHK杯ジャンプ大会

二階堂蓮が圧巻のヒルレコードで全日本選手権LH初制覇 高梨沙羅は三連覇

2023年10月29日(日)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123

女子組(基本ゲート1本目23、2本目22)

1  高梨 沙羅(クラレ) 248.7pt
2  伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 241.1pt
3  丸山 希(北野建設SC) 208.2pt
 
4  岩佐 明香(大林組スキー部) 177.1pt
5  一戸 くる実(CHINTAIスキークラブ) 177.0pt
6  佐藤 柚月(札幌日大高校) 176.2pt

リザルト

男子組(基本ゲート1本目14、2本目13)

1  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 282.3pt
2  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 263.9pt
3  内藤 智文(山形県スポーツ協会) 247.1pt
 
4  葛西 紀明(土屋ホームスキー部) 243.2pt
5  坂野 旭飛(下川商業高校) 236.3pt
6  竹内 択(team taku) 230.4pt

予選 リザルト


全日本選手権ラージヒルは、ワールドカップ開幕メンバー入りを目指す選手たちにとってはラストチャンス。
エントリーに必要なFISのポイントを持っていることが前提となるが、この試合に優勝すれば男女ともに開幕メンバー入りの選考基準を満たすことになる。

ただ、女子にとってはミッション・インポッシブル。
既に選考基準を満たしている高梨沙羅、伊藤有希、丸山希といった選手たちを退けて優勝しなければならないが、それができる選手は正直見当たらない。

一方男子。
10/9時点のワールドランキングリスト(WRL)の上位5選手(小林陵侑、二階堂蓮、中村直幹、内藤智文、小林潤志郎)がひとまず基準を満たしているが、この5名以外の選手が優勝すると、その選手が優先的に選考されることになっている。
つまりWRLの5番目の選手は取って代わられる恐れを残す。まさに下克上がありうる状態。

ただ、現実的にその可能性はあるのか?
正直、可能性はかなり薄いといえよう。
ところが、二つの予想外の事態から風雲急を告げる展開となってきた。

まずは、小林陵侑の欠場。
WCに向けての調整を理由にこの試合を棄権したことで、優勝候補の大本命が消えた。

もう一つが葛西紀明の存在だ。
前日のUHB杯で144.5mの最長不倒で4位。優勝した陵侑とは大きな差がついたが、2位二階堂蓮との差は9.2pt、3位中村直幹との差は僅かに0.1pt。条件さえ揃えば勝機はある。

WRLの(陵侑を除く)4選手に勝てる選手がいるとすれば、それは葛西紀明をおいて他にいないだろうと思わせる雰囲気が漂う。
そして、この日の大倉山は前日よりもさらに向かい風が強まった。葛西にとっては神風か?

女子組

1 高梨 沙羅(クラレ)
2 伊藤 有希(土屋ホームスキー部)
3 丸山 希(北野建設SC)
4 岩佐 明香(大林組スキー部)
5 一戸 くる実(CHINTAIスキークラブ)
6 佐藤 柚月(札幌日大高校)

伊藤有希を0.5pt差で抑えてトップで折り返した高梨沙羅。
2本目では139.5mの会心の一発を見せ最大のライバルを突き放した。

木曜の全日本選手権ノーマルヒルでは、その最大のライバルに敗れ7連覇を逃した。
ただ、今年で創設3年目となるこの日のラージヒルにおいては見事に三連覇を達成。

この夏のGPでは5試合に出場して最高位は2位が3回。
国内戦ではこれまで出場した3試合でいずれも2位。
この日が国内・海外通じて今季の初勝利となったが、良い感触を得てワールドカップに臨むことができるだろう。

2年前のこの大会で転倒し大怪我を負い、1シーズンと北京オリンピックを棒に振った丸山希。
NHK杯としては、その時以来の出場。全日本選手権ラージヒルとしては復帰後初の表彰台。

男子組

1 二階堂 蓮(日本ビールスキー部)
2 中村 直幹(Flying Laboratory SC)
3 内藤 智文(山形県スポーツ協会)
4 葛西 紀明(土屋ホームスキー部)
5 坂野 旭飛(下川商業高校)
6 竹内 択(team taku)

神風を引いたのは葛西紀明ではなく二階堂蓮だった。
1本目で、この日最大の2.72m/sの向かい風を受け、低く鋭い軌道でグイグイと飛距離を伸ばした。
届いた先は147.5m。夏のヒルレコードを2.0m更新する驚異的な大ジャンプだった。

2本目でもHSを3.5m上回る140.5m。しかも、1本目では流石に難しかったテレマークを今度はきっちりと入れて見せた
当然の結果として2位に18.4pt差をつける圧勝。全日本選手権LH初制覇となった。

この日の大倉山は、時折いつも以上に強い向かい風が吹いた。
木曜のノーマルヒルでは慎重すぎるほど慎重だったゲート設定も、この日はそこまでではなかったか。

その点については二階堂蓮も、小林陵侑が出場していればもっと低いゲートだったはず、だから自分の大ジャンプでの優勝もそんなにすごいことではない、といたって冷静だったようだ。

終わってみればWRLの上位3名が、その順番通りにフィニッシュした。
なお、NHK杯としては二階堂蓮は連覇。
中村直幹と内藤智文も、並びこそ違うが2年連続の表彰台。

葛西紀明は、8位で折り返した2本目でHSに迫る136.5mを飛んだものの表彰台には3.9pt及ばず2試合連続となる4位。
「悔しい、惜しい反面、うれしい方が強いかもしれない」とのコメントを残したが、ファンも大方同じような思いなのではないか。

表彰式

NHK杯 女子組
NHK杯 男子組
全日本選手権 女子組
全日本選手権 女子組
全日本選手権 男子組
全日本選手権 男子組

全日本選手権ラージヒル歴代優勝者

大 会 男子 女子
第94回  作山 憲斗(北野建設)  
第95回  竹内 択(北野建設)  
第96回  葛西 紀明(土屋ホーム)  
第97回  伊東 大貴(雪印メグミルク)  
第98回  小林 陵侑(土屋ホーム)  
第99回  佐藤 幸椰(雪印メグミルク)  
第100回  小林 陵侑(土屋ホーム)  高梨 沙羅(クラレ)
第101回  小林 陵侑(土屋ホーム)  高梨 沙羅(クラレ)
第102回  二階堂 蓮(日本ビール)  高梨 沙羅(クラレ)

試合終了後に、ワールドカップ開幕メンバーが、今年もまたSAJからではなくマスコミから発表された。

女子ワールドカップ日本代表

Lillehammer/Engelberg/Garmisch-partenkirchen/Oberstdorf/Villach

  • 伊藤 有希(土屋ホームスキー部)
  • 高梨 沙羅(クラレ)
  • 丸山 希(北野建設SC)
  • 勢藤 優花(YAMAtune)
  • 宮嶋 林湖(松本大学)
  • 一戸 くる実(CHINTAIスキークラブ)
男子ワールドカップ日本代表

Ruka/Lillehammer/Klingenthal/Engelbelg

  • 小林 陵侑(TEAM ROY)
  • 二階堂 蓮(日本ビールスキー部)
  • 中村 直幹(Flying Laboratory SC)
  • 内藤 智文(山形県スポーツ協会)
  • 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)

男子においてこの全日本選手権は、コンチネンタルカップ出場の選考の場ともなっている。
坂野旭飛はNHの3位とLHの5位により、選考基準の「B指定選手の全日本選手権大会NH・LH 大会の総合上位1名の選手」に該当し当確となった。

他には「2023/24 SGPスタンディング上位1名の選手」により竹内択が当確。
また「2023/24 SGP第2ピリオドのRasnovで10位に入った選手→Rasnov終了後、日本に帰国した選手に限る」により佐藤慧一が当確。

下剋上でのワールドカップ出場はかなわなかった葛西紀明だが、COCには希望を残した。
しかし、NHが23位と振るわなかったのに対して、池田龍生がNHで11位、LHで7位と好成績を残している。
選考基準は「全日本選手権大会NH・LH大会の総合上位の選手」となっており、「総合」という文言をどう解釈するかによって両者ともに可能性があるようにも思えるのだが…

現時点(11月3日現在)では、まだ選考結果は発表されていない。
私は既に結果を小耳に挟んでいるのだが、ファンの皆さんと一緒に正式な発表を楽しみに待ちたいと思う。


【女子】2023国内大会トップ3

大会 1位 2位 3位
サマー朝日 伊藤 有希 佐藤 柚月 日野森 琥珀
サンピラー記念 伊藤 有希 葛西 春香 佐藤 柚月
札幌市長杯NH 伊藤 有希 葛西 春香 勢藤 優花
札幌市長杯LH 伊藤 有希 勢藤 優花 葛西 春香
チャレンジ杯 伊藤 有希 勢藤 優花 葛西 春香
サマー蔵王 丸山 希 高梨 沙羅 勢藤 優花
塩沢 伊藤 有希 一戸 くる実 岩佐 明香
妙高サマー 伊藤 有希 丸山 希 岩佐 明香
白馬記録会 丸山 希 伊藤 有希 小林 諭果
白馬サマー 丸山 希 岩佐 明香 伊藤 有希
鹿角サマー 葛西 春香 櫻井 梨子 葛西 優奈
選手権NH 伊藤 有希 高梨 沙羅 一戸 くる実
UHB杯 伊藤 有希 高梨 沙羅 一戸 くる実
選手権LH・NHK杯 高梨 沙羅 伊藤 有希 丸山 希

【少年】2023国内大会トップ3

大会 1位 2位 3位
サマー朝日 坂野 旭飛 西田 蓮太郎 西澤 希陸
札幌市長杯NH 西田 蓮太郎 坂野 旭飛 佐々木 星語
札幌市長杯LH 西田 蓮太郎 坂野 旭飛 杉山 律太
チャレンジ杯 西田 蓮太郎 坂野 旭飛 三上 託摩
サマー蔵王 坂野 旭飛 西田 蓮太郎 三上 託摩
塩沢 坂野 旭飛 西田 蓮太郎 三上 託摩
妙高サマー グロースエッガー 健志 久保田 康太郎 成田 絆

【成年】2023国内大会トップ3

大会 1位 2位 3位
サマー朝日 佐藤 幸椰 清水 礼留飛 渡部 弘晃
サンピラー記念 渡部 弘晃 馬淵 源 山元 豪
札幌市長杯NH 小林 陵侑 岩佐 勇研 中村 直幹
札幌市長杯LH 中村 直幹 小林 朔太郎 佐藤 幸椰
チャレンジ杯 小林 陵侑 中村 直幹 岩佐 勇研
サマー蔵王 小林 陵侑 二階堂 蓮 竹内 択
塩沢 工藤 漱太 永峯 寿樹 小林 潤志郎
妙高 山本 涼太 内藤 智文 小林 潤志郎
白馬記録会 山本 涼太 小林 潤志郎 二階堂 蓮
白馬サマー 小林 潤志郎 竹内 択 山本 涼太
鹿角サマー 清水 礼留飛 坂野 旭飛 佐藤 慧一
選手権NH 中村 直幹 小林 陵侑 坂野 旭飛
UHB杯 小林 陵侑 二階堂 蓮 中村 直幹
選手権LH・NHK杯 二階堂 蓮 中村 直幹 内藤 智文