小林陵侑、高梨沙羅 全日本選手権2冠達成
2021年10月24日(日)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123
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女子組(基本ゲート1本目18、2本目20)
1 | 高梨 沙羅(クラレ) | 235.5pt |
2 | 伊藤 有希(土屋ホームスキー部) | 223.2pt |
3 | 小林 諭果(CHINTAIスキークラブ) | 194.8pt |
4 | 勢藤 優花(北海道ハイテクAC) | 174.8pt |
5 | 岩渕 香里(北野建設SC) | 157.6pt |
6 | 岩佐 明香(大林組スキー部) | 126.5pt |
男子組(基本ゲート1本目12、2本目12)
1 | 小林 陵侑(土屋ホームスキー部) | 296.0pt |
2 | 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) | 277.7pt |
3 | 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) | 256.1pt |
4 | 二階堂 蓮(NSC札幌) | 254.3pt |
5 | 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) | 232.0pt |
6 | 中村 直幹(Flying Laboratory SC) | 230.3pt |
葛西紀明は言った。
「全日本選手権がここまですごい試合だと感じたことはなかった」と。
全日本選手権は元々は冬に開催されていたが、2015年第94回大会以降は秋開催となった。
それまでWC組不在で決めていた全日本チャンピオンの座を、全員参加で競わせようというのがその趣旨だ。
変わったのは開催時期だけではない。
2018年頃からは、全日本選手権優勝者(女子はNH、男子はLH)がWC序盤戦の遠征メンバー候補に挙げられる旨が選考基準として定められ発表されるようになった。
そしてこれは、今年10月22日に全日本スキー連盟から発表された2021/22国際主要大会参戦基準にも明記されている。
名ばかりだったとも言えた全日本選手権は、ここ数年の間に、名実ともに真の日本一を決める大会、かつ、その称号に相応しい “ご褒美” が用意された大会に生まれ変わっていたのだ。
さらに今年の全日本選手権は、北京五輪の代表選考が絡んでくる。
すでに発表済みの北京オリンピック派遣推薦基準には、男子は2022年1月6日終了時点のWC上位5名、女子は1月17日終了時点での上位者が代表となる旨が明記されている。
つまり、北京に行くためにはWC序盤戦のメンバーに選ばれることが必要となるのだが、その条件としては、先ずは昨季のWCの成績上位者であること。
それ以外の選手がここに食い込むためには、前述の国際主要大会参戦基準にあるとおり、全日本選手権で優勝するしか道はない。
つまり、昨季のWCの成績上位者に該当しない選手たちにとっては、全日本選手権がオリンピック出場へのラストチャンス。
過去9大会連続出場を誇る葛西にとっても、他の当落線上の選手たちにとっても、勝利しか生き残る術のない「すごい試合」。それが今年の全日本選手権。
女子組
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男子組
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運命の一戦を制したのは小林陵侑。
2日前に勝利したノーマルヒルとの2冠達成。
なお、全日本選手権男子の2冠達成は史上10人目。
今年新設された女子ラージヒルを制したのは高梨沙羅。
初代ラージヒル女王にして女子最初の2冠達成。
全日本選手権 2冠達成者 | ||
1962年 第40回 | 菊地 定夫(雪印乳業) | |
1965年 第43回 | 藤沢 隆(早稲田大学) | |
1968年 第46回 | 藤沢 隆(国土計画) | |
1969年 第47回 | 笠谷 幸生(ニッカウヰスキー) | |
1972年 第50回 | 板垣 宏志(国土計画) | |
1996年 第74回 | 西方 仁也(雪印乳業) | |
1998年 第76回 | 原田 雅彦(雪印乳業) | |
2001年 第79回 | 原田 雅彦(雪印乳業) | |
2002年 第80回 | 岡部 孝信(雪印乳業) | |
2012年 第90回 | 吉岡 和也(土屋ホーム) | |
2015年 第93回 | 佐藤 幸椰(雪印メグミルク) | |
2020年 第99回 | 佐藤 幸椰(雪印メグミルク) | |
2021年 第100回 | 小林 陵侑(土屋ホーム) | 高梨 沙羅(クラレ) |
表彰式
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女子NHと男子LHは、ともに昨季のWCの成績トップの者が勝利した。
これにより、全日本選手権優勝者としてWC序盤戦のメンバー候補に新たに食い込む者は生じることはなかった。
この結果を受けて、2021/22ワールドカップの男子の派遣メンバーが当日のうちに発表された。
国際主要大会参戦基準にある「前シーズンWCランキング上位からクォータ数」に該当する6名だ。
- 小林 陵侑(土屋ホーム)
- 佐藤 幸椰(雪印メグミルク)
- 佐藤 慧一(雪印メグミルク)
- 小林 潤志郎(雪印メグミルク)
- 中村 直幹(Flying Laboratory)
- 伊東 大貴(雪印メグミルク)
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コンチネンタルカップ(COC)に派遣される4名も同時に発表された。
- 藤田 慎之介(東海大学)
- 清水 礼留飛(雪印メグミルク)
- 渡部 陸太(東京美装グループ)
- 二階堂 蓮(NSC札幌)
選考基準にある「WC参加資格を持たない全日本選手権LH優勝者」と「WC派遣メンバー選出者以外で前シーズンWCランキング上位1名」に該当する者がいないので、「GPランキング上位選手(1~3名)」に該当する藤田、清水、渡部が選ばれたものと思われる。
「最大3名を派遣」となっているが、選考基準に該当しない二階堂が選ばれたのは全日本選手権NHとLHでいずれも4位に入ったことが効いただろうか。
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全日本スキー連盟の原田雅彦理事は、WC代表6名とCOC代表4名の計10名でオリンピックの5つの出場枠を争うとし、WCとCOCのメンバーの入れ替えはあるが、国内組の選手との入れ替えについては「今のところは可能性はないです」と明言。
これにより、この日22位に終わった葛西紀明をはじめ国内組の選手たちの北京オリンピック出場の夢は事実上潰えてしまったことになる。
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夢が潰えてしまったかもしれない選手がもう一人。
丸山希は、この日の1本目に高梨の2本目と並ぶ最長不倒タイの129.5m飛んだものの着地で転倒。
報道によると、左膝前十字靱帯損傷、外側半月板損傷および大腿骨腓骨骨挫傷という極めて大きな怪我を負ってしまった。
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今や高梨に次ぐ2番手のポジションにまで成長した丸山。
この冬のWCと五輪での活躍が期待されていたがシーズン中の復帰は難しいとの見方もあり、なんとも残念なことになってしまった。
今はただ、回復を願うばかりだ。
このため、女子のWC派遣メンバーの発表は後日に持ち越された。