スキージャンプFISワールドカップ2022/23男子個人第16戦札幌

小林陵侑が「とんでもない3日間」を大ジャンプで締める

2023年1月22日(日)札幌(JPN) HS137/K123

スキージャンプワールドカップ札幌大会2023

18th World Cup Competition

1  小林 陵侑(土屋ホームスキー部) 280.9pt
2  ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR) 268.9pt
3  マルクス・アイゼンビヒラー(GER) 256.9pt
 
14  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 229.2pt
29  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) 165.6pt
42  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 86.6pt
43  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 85.0pt
44  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) 84.1pt

予選 リザルト


金曜日には小林陵侑の今季初かつ札幌大会初の勝利を、そして土曜日には11位からの猛追による連続表彰台を見届けた大倉山のジャンプファン。
すでに満足感でいっぱいだが、この日は更に凄いものを目撃することになった。

まずは予選。
この3日間で最も向かい風が強くなったために予感はあったが、84~85km/h台の低速設定ながら世界の猛者たちはお構いなしにガンガン飛んでくる。

今季ここまでの小林陵侑の予選の最高位は7位。一桁順位は6回だけで、20位台後半なども散見された。
それが一転して140.0mの大ジャンプで予選トップ。
朝早くから集まった観客の眠気を一気に吹き飛ばす一発に、会場のボルテージが高まる。

小林陵侑の予選順位

個人戦 予選順位 予選トップ
第1戦 17位 クバツキ
第2戦 7位 クバツキ
第3戦 17位 ラニセク
第4戦 32位 グランネル
第5戦 8位 クバツキ
第6戦 26位 クバツキ
第7戦 8位 グランネル
第8戦 27位 フェットナー
第9戦 23位 グランネル
第10戦 27位 クバツキ
第11戦 26位 クバツキ
第12戦 8位 グランネル
第13戦 参戦せず チョフェニック
第14戦 9位 グランネル
第15戦 9位 クバツキ
第16戦 1位 小林陵侑

そして本戦1本目。
5番ゲートで始まった試合は強い向かい風にさらされ、31人飛んだところで1段下げ4番に。
2人飛んでまた1段下げ3番。そして3人飛んで遂に2番まで下がった。

しかし、ここでやや風が収まり始める。
2番ゲートで飛んだ最初の3人-リンビーク120.0m、ヴェリンガー125.0m、ガイガー119.0m-が次々と撃沈され、嫌な流れでゲートについたのが陵侑。

しかし、ここで稀代の勝負師が天をも味方につける。
再び向かい風が強まり141.0mまでぶっ飛んだ。
1本目だけで5本の140m台が繰り出されたスペクタクルな展開。2番ゲートでこれをやってのけた陵侑とグランネルの二人が2位と1位で折り返す。

そして2本目。
ここでも3本の140m台が見られたが、中でも白眉は陵侑。
ライバルたちよりも少し向かい風が弱まったにもかかわらず143.0mまでぶっ飛び、3人のジャッジが20点をつける完璧すぎるテレマークを入れて見せた。

1本目で6.2ptあったグランネルとの差を一気にひっくり返し12.0ptの差をつけての鮮やかすぎる逆転勝利。
140m台が8本見られた試合だが、それを2本揃えたのは陵侑だけ。しかも予選も含めると3本。飛型点もフルマーク3人を含むいずれも高得点。
我々は皆、凄すぎるものを目撃してしまった。

今季2勝目。通算29勝目。この3日間では優勝‐3位‐優勝の3戦連続表彰台。
札幌大会が始まる前までは総合21位に甘んじていたが、この3連戦で一気に7位に浮上した。
陵侑自身は「とんでもない3日間でした」と札幌大会を振り返っているが、皆同じ気持ち。

Top10 & Team Japan

小林 陵侑
1 小林 陵侑(土屋ホームスキー部)
ハルヴォア-エグナー・グランネル
2 ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR)
マルクス・アイゼンビヒラー
3 マルクス・アイゼンビヒラー(GER)
ドメン・プレヴツ
4 ドメン・プレヴツ(SLO)
ヨハン-アンドレ・フォルファン
5 ヨハン-アンドレ・フォルファン(NOR)
ぺテル・プレヴツ
6 ぺテル・プレヴツ(SLO)
ダニエル・チョフェニック
7 ダニエル・チョフェニック(AUT)
ピオトル・ジワ
8 ピオトル・ジワ(POL)
アンツェ・ラニセク
9 アンツェ・ラニセク(SLO)
ティミ・ザイツ
10 ティミ・ザイツ(SLO)
二階堂 蓮
14 二階堂 蓮(日本ビールスキー部)
小林 潤志郎
29 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)
中村 直幹
42 中村 直幹(Flying Laboratory SC)
佐藤 慧一
43 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)
佐藤 幸椰
44 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)

逆転を確信したか、飛び終えた陵侑に駆け寄り抱き合った二階堂蓮。
我々は、もう一人のモンスターの歴史の始まりの目撃者となったのかもしれない。

昨夏のGPで初出場初優勝を遂げるなど好成績を残し、今季初めてWC遠征メンバー入りを果たした。
ところがWCでは結果を出せず、開幕戦で28位となった以外はポイントを獲れずにいた。
札幌大会においても、土曜日には1本目で14位となり上位フィニッシュが期待されたが不運な風に叩かれ結果は30位。

しかし、この日は1本目の23位から2本目は8番手の得点で14位にジャンプアップ。
14位は、今季の日本勢では小林陵侑の優勝、中村直幹の3位に次ぐ成績だ。
「本来の調子ならもっと上に行ける」- 彼ならすぐにそれを証明してくれると思う。

表彰式

スキージャンプワールドカップ札幌大会2023

土曜の試合で4位となり連続表彰台が10で途絶えたクバツキは、この日11位に終わり2試合連続で表彰台に届かなかった。
また、好調のラニセクは土曜は50位となり今季初めてノーポイントに終わった。

一方でアイゼンビヒラーは今季初表彰台。
この日の2本目で久々にバーンを這うように滑空する姿を見せたドメン・プレヴツも今季初の一桁順位。

大倉山はサプライズボックスと称されるほど風に翻弄される台。
でも、真に力のある者しか上位に来ない。
決して運だけに左右されているわけではない。

札幌大会の歴代表彰者(過去11シーズン)

season 優勝 2位 3位
2009/10 1 モルゲンシュテルン ヴァンク 伊東大貴
2 アマン 葛西紀明 コッホ
2010/11 1 フロイント モルゲンシュテルン マリシュ
2 コフラー フロイント モルゲンシュテルン
2011/12 1 伊東大貴 バーダル ストッフ
2 伊東大貴 ストッフ コフラー
2012/13 1 マトゥラ ヒルデ クラニエッツ
2 マトゥラ クラニエッツ ヴァンク
2013/14 1 P.プレヴツ ダミヤン 葛西紀明
2 ダミヤン プレヴツ クラニエッツ
2014/15 1 P.プレヴツ クラフト コウデルカ
2 コウデルカ ストッフ P.プレヴツ
2015/16 1 P.プレヴツ D.プレヴツ クラニエッツ
2 ファンネメル フォルファン 葛西紀明
2016/17 1 コット
P.プレヴツ
  クラフト
2 ストッフ ヴェリンガー クラフト
2018/19 1 クラフト ストッフ ヨハンソン
2 クラフト ザイツ 小林陵侑
2019/20 1 佐藤幸椰 クラフト クバツキ
2 クラフト ライエ 小林陵侑
NEW
2022/23
1 小林陵侑 クバツキ グランネル
2 クラフト グランネル 小林陵侑
3 小林陵侑 グランネル アイゼンビヒラー

特筆すべきは、大倉山には世界が羨む豊富で質の良い雪と、それを整備する高い技術力があるということ。
今季は男女共に人工雪の試合が多く、着地に難がありそうで観ていてヒヤヒヤさせられた。
選手も関係者も豊富で良質な雪の台で飛べることを心待ちにしていたらしい。

この日8本の140m台の大ジャンプが見られたが危険な感じは皆無と言ってよかった。
選手の技術力の高さもさることながら、大倉山ゆえのことでもあったといえるのではないだろうか。

ピックアップ ギャラリー

カメラに関してはど素人。腕がないので早く直線的に飛ぶ選手を追うのが苦手。
この3日間で最も捕捉が難しかったのがジョバンニ・ブレサドーラ
3日目にしてようやく何とかまともな写真が撮れた。

そんなブレサドーラをはじめとして、遠い遠いSapporoまで遥々やってきてくれた海外選手たちに敬意を表し、下手な写真ではあるが例によって何人かをピックアップしてみた。

ダヴィド・クバツキ
11 ダヴィド・クバツキ(POL)
アンドレアス・ヴェリンガー
12 アンドレアス・ヴェリンガー(GER)
シュテファン・クラフト
18 シュテファン・クラフト(AUT)
コンスタンチン・シュミット
22 コンスタンチン・シュミット(GER)
カミル・ストッフ
23 カミル・ストッフ(POL)
フィリップ・ライムント
24 フィリップ・ライムント(GER)
ヤン・ヘール
25 ヤン・ヘール(AUT)
ジョバンニ・ブレサドーラ
27 ジョバンニ・ブレサドーラ(ITA)
キリアン・パイエル
30 キリアン・パイエル(SUI)
ミハエル・ハイベック
31 ミハエル・ハイベック(AUT)
マリウス・リンビーク
32 マリウス・リンビーク(NOR)
ロベルト・ヨハンソン
37 ロベルト・ヨハンソン(NOR)
ロマン・コウデルカ
47 ロマン・コウデルカ(CZE)

WC総合順位

3年ぶりのワールドカップ観戦は男女ともに大満足に終わった。
参戦したすべての選手とチーム関係者、そして開催と運営に尽力していただいたすべての方々に感謝いたします。
そして、全国から集まったジャンプファンの皆様、また来年も大倉山でお会いいたしましょう!