大倉山に王者の帰還 小林陵侑が今季初優勝
2023年1月20日(金)札幌(JPN) HS137/K123
16th World Cup Competition
1 | 小林 陵侑(土屋ホームスキー部) | 271.5pt |
2 | ダヴィド・クバツキ(POL) | 264.3pt |
3 | ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR) | 262.6pt |
30 | 中村 直幹(Flying Laboratory SC) | 195.4pt |
32 | 二階堂 蓮(日本ビールスキー部) | 106.8pt |
36 | 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) | 104.2pt |
44 | 内藤 智文(米沢スキージャンプクラブ) | 89.6pt |
47 | 竹内 択(team taku) | 87.3pt |
48 | 岩佐 勇研(東京美装グループスキー部) | 85.2pt |
50 | 原田 侑武(雪印メグミルクスキー部) | 73.9pt |
葛西 紀明(土屋ホームスキー部) | 予選51位 | |
小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) | 予選53位 | |
佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) | 予選59位 | |
清水 礼留飛(雪印メグミルクスキー部) | 予選63位 |
今季、なかなか結果を出せずにいた小林陵侑が表彰台の頂点に戻ってきた。
ここまで12戦にエントリーして最高位は開幕戦ヴィスワの7位。
それ以外には10位が2度あるだけ。2本目に進めない試合が3試合あるなど「らしくない」成績が続いていた。
ただし、これは日本勢全体に言えること。
他にシングル順位は中村直幹の第4戦ルカでの3位だけ。
全体的に予選敗退や2本目に進出できない結果が目立った。
不調の大きな要因として、今季大きくルールが変わったマテリアルへの対応で後れを取っていることが伺えた。
その面も含めた調整のためにチームはザコバネをスキップして帰国。札幌大会での起死回生を狙った。
帰国からの約2週間で雪印勢や二階堂蓮などが精力的に国内戦に参加し調整する一方で、小林陵侑は国内戦に姿を見せなかった。そのことに対していわれのない批判も受けたようだ。
しかし、もちろんその間に陵侑はしっかりと準備をしていた。マテリアルの調整も行われ体制を整えていた。
そうして迎えた3年ぶりの札幌の舞台。
比較的穏やかな追い風傾向の中、陵侑は31番スタートの1本目で135.0mを飛び電光掲示板のトップに表示された。
早い順番で飛ぶ状況にある今季、それでもその時点のトップになれないことがあった中、この日は断トツの得点でトップに君臨。そのまま1本目ラストのクバツキに抜かれるまでその位置を守り続けた。
誰も予想できなかった展開。会場が一気に盛り上がりを見せる。
でもトップのクバツキとの差は3.9pt。今季のクバツキの圧倒的な強さからすれば決して安心できるような差ではない。
さらには0.7pt差でグランネルが、1.9pt差でストッフが背後にピタリと着く。
今季これまでの陵侑を見る限りでは2本揃えることは難しいのではないか? 正直、不安をぬぐい切れないでいた。
そして2本目。陵侑は風が定まらずやや待たされた。
ますます嫌な予感がよぎる。こういう時は得てして悪い方に状況は転がりがちだ。
実際に、やや厳しい追い風の中でシグナルはグリーンに変わってしまった。
しかし、陵侑は何事もなかったかのように130.0mまで伸ばして見せた。そして19点が並ぶ見事な着地。
この条件で。この状況で。これが王者の底力。
ラストのクバツキも同じような条件だったが125.5mまでしか伸ばせず、かくして昨季の総合王者は札幌の地で表彰台の頂点に返り咲いた。
昨季2月のラハティ以来20戦ぶりの勝利。
通算28勝目。
札幌では自身初めてセンターポールに日の丸をはためかせることとなった。
まさに宇宙人としての面目躍如。
札幌大会における歴代日本人優勝者
1 | 1979/80 | 大倉山 | 八木弘和 |
2 | 1979/80 | 大倉山 | 秋元 正博 |
3 | 1983/84 | 宮の森 | 秋元 正博 |
4 | 1984/85 | 大倉山 | 秋元 正博 |
5 | 1986/87 | 宮の森 | 佐藤 晃 |
6 | 1992/93 | 大倉山 | 東 輝 |
7 | 1998/99 | 大倉山 | 船木 和喜 |
8 | 2004/05 | 大倉山 | 船木 和喜 |
9 | 2011/12 | 大倉山 | 伊東 大貴 |
10 | 2011/12 | 大倉山 | 伊東 大貴 |
11 | 2019/20 | 大倉山 | 佐藤 幸椰 |
12 | 2022/23 | 大倉山 | 小林 陵侑 |
Top10 & Team Japan
葛西紀明が予選に急遽エントリー。
大会前日の19日になって体調不良によりエントリーを取りやめざるを得なくなった選手が出たために、繰り上がりでエントリーされることになった。
このことについてネット上では、忖度によって選ばれたのでは? という声も散見されるが、それは全然違う。
札幌大会3連戦のうち最初の2戦には開催国枠があり、通常枠と合わせて12名がエントリーできる。
この12名のうち7名については、14・15日に行われたコンチネンタルカップ(COC)札幌大会の結果を受けて選出された。
COC札幌大会には9日の選考会を経て選出された10名がエントリーしていたので結果3名が落選したことになるが、葛西紀明もその一人となってしまっていた。
ところが前述の通り急遽欠員が生じた。
FIS(国際スキー連盟)の基準により、WCにエントリーすることができるのは次のいずれかの選手に限られており、落選した3名の内この基準を満たすのが葛西だけだったために彼が繰り上がったに過ぎない。
- WCポイントを獲得したことがある選手。
- 前シーズンまたは今シーズンにCOCポイントを獲得した選手。
予選結果は51位。わずか0.4pt差での悔しい予選敗退。
15日に落選が決まって以降、調整はせず「暴食」もしていたらしい。
ぶっつけ本番となってしまったので、この結果も致し方なかったか。
ただ、会場は-そしておそらく世界中が-大いに盛り上がったことは間違いない。
日本勢としては他には中村直幹が2本目に進むも30位。
選考会から勝ち上がってきた選手では、2018/19札幌以来の出場となった内藤智文が44位、2019/20ラスノフ以来の出場となった竹内択が47位、2018/19札幌以来の出場となった原田侑武が50位。
表彰式
2本目は4位の得点となり逆転を喫したクバツキ。
それでも1本目では唯一のヒルサイズジャンプを見せ会場を大いに沸かした。
今季14戦中13度目の表彰台。現在10連続中。
3位のグランネルは1本目でコーチリクエストにより2段ゲートを下げた。
GFの加点の為には130.0mが必要だが、しっかりと130.5mを飛びリクエストに成功。
ジャンプ週間初戦から6連続の表彰台。
17本もの130mジャンプが繰り出された空の大怪獣たちによる空中決戦は見ごたえたっぷり。
そして、このレベルの選手たちは皆、驚くほどにテレマークが綺麗だ。
ピックアップ ギャラリー
3年ぶりの札幌大会。過去には長距離遠征を嫌ってエントリーしない海外勢が多く出ることもあったけれど、今回は3試合あることもあってか53名の選手が参戦してくれた。
そんな、遠い遠いSapporoまで遥々やってきてくれた海外選手たちに敬意を表し、下手な写真ではあるが例によって何人かをピックアップしてみた。