2019/20 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第18戦札幌

クラフト 大倉山の風を手なずけ圧勝 小林陵侑は3位

2020年2月2日(日)札幌(JPN)HS137/K123

22nd World Cup Competition

1  シュテファン・クラフト(AUT) 268.5pt
2  シュテファン・ライエ(GER) 247.4pt
3  小林 陵侑(土屋ホーム) 239.0pt
 
12  佐藤 慧一(雪印メグミルク) 216.8pt
16  佐藤 幸椰(雪印メグミルク) 208.5pt
19  伊東 大貴(雪印メグミルク) 202.2pt
20  小林 潤志郎(雪印メグミルク) 199.1pt
29  岩佐 勇研(東京美装グループ) 161.8pt
31  竹内 択(team taku) 86.2pt
33  渡部 弘晃(東京美装グループ) 85.2pt
36  葛西 紀明(土屋ホーム) 80.7pt
39  中村 直幹(東海大学札幌SC) 75.5pt
46  二階堂 蓮(下川商業高校) 68.3pt
50  栃本 翔平(雪印メグミルク) 32.3pt

予選リザルト オフィシャル リザルト


前日よりは多少風が和らいだ札幌大倉山。 もっとも、前日も個人的にはいつもの大倉山であり特に荒れたという印象はない。 まぁ、2本のジャンプで順位に乖離が見られる選手もチラホラなので、難しい条件の試合であったことは間違いないのだけれど。

 

それでも最後には、そこに立つことに何の違和感もない3人が表彰台を占めた。

 

昨年ここで2連勝を果たしているクラフトは今年も強さを見せた。 映像を見ていないので細かいことはわからないけれど、現地では2本とも向かい風に上手く上体を預けてグイグイと前に進む様が見て取れた。 これで札幌大会3勝目、かつ、6連続表彰台。強い!

 

2位のライエは2本目で風に乗ってこの日の最長不倒となる142.0m。1本目8位から今季初、そして通算3度目となる表彰台を射止めた。 シーズン序盤はほぼ居ないも同然の存在だったのに、気付けばここ数戦は表彰台争いに絡んできていた。それだけに、世界有数の初優勝者の産地である札幌大倉山での初勝利を密かに期待していたんだけれど… まぁ、2本揃えるのは難しかったね。

 

陵侑は昨年同様に2試合目で表彰台に登った。 アプローチに問題を抱えているようで、たださえ低速設定なのにそれに輪をかけてスピードが上がらない。フライトの高さも本来のものとは違うように見えた。 それでも結果は3位。観客の期待に応え、立派に仕事を果たしてくれた。

 

スタンディング

 

 過去の札幌大会の表彰者
season 優勝 2位 3位
2009/10 1 モルゲンシュテルン ヴァンク 伊東大貴
2 アマン 葛西紀明 コッホ
2010/11 1 フロイント モルゲンシュテルン マリシュ
2 コフラー フロイント モルゲンシュテルン
2011/12 1 伊東大貴 バーダル ストッフ
2 伊東大貴 ストッフ コフラー
2012/13 1 マトゥラ ヒルデ クラニエッツ
2 マトゥラ クラニエッツ ヴァンク
2013/14 1 P.プレヴツ ダミヤン 葛西紀明
2 ダミヤン プレヴツ クラニエッツ
2014/15 1 P.プレヴツ クラフト コウデルカ
2 コウデルカ ストッフ P.プレヴツ
2015/16 1 P.プレヴツ D.プレヴツ クラニエッツ
2 ファンネメル フォルファン 葛西紀明
2016/17 1 コット P.プレヴツ   クラフト
2 ストッフ ヴェリンガー クラフト
2018/19 1 クラフト ストッフ ヨハンソン
2 クラフト ザイツ 小林陵侑
2019/20 NEW 1 佐藤幸椰 クラフト クバツキ
2 クラフト ライエ 小林陵侑
トップ10 & チームJAPAN

1 シュテファン・クラフト(AUT)

 

2 シュテファン・ライエ(GER)

 

3 小林 陵侑(土屋ホーム)

 

4 ぺテル・プレヴツ(SLO)

 

5 カール・ガイガー(GER)

 

6 ダヴィド・クバツキ(POL)

 

7 ティミ・ザイツ(SLO)

 

8 ミハエル・ハイベック(AUT)

 

9 カミル・ストッフ(POL)

 

10 アンツェ・ラニセク(SLO)

 

12 佐藤 慧一(雪印メグミルク)

 

16 佐藤 幸椰(雪印メグミルク)

 

19 伊東 大貴(雪印メグミルク)

 

20 小林 潤志郎(雪印メグミルク)

 

29 岩佐 勇研(東京美装グループ)

 

31 竹内 択(team taku)

 

33 渡部 弘晃(東京美装グループ)

 

36 葛西 紀明(土屋ホーム)

 

39 中村 直幹(東海大学札幌SC)

 

46 二階堂 蓮(下川商業高校)

 

50 栃本 翔平(雪印メグミルク)

 


日本勢は全員予選通過。

 

佐藤慧一が1本目で6位になったのにはぶったまげた。 2本目は大歓声の中、条件も良かったけれど伸ばせず。 でもしっかりと自己最高位の12位。

 

岩佐勇研が前日に引き続きポイントゲット。 2試合ともポイントを獲れたのは、佐藤幸椰、小林陵侑、佐藤慧一と勇研の4人だけだ。

 

前日は失格で出場できなかった伊東大貴は大声援を力に19位。 同じく失格で前日は出場できなかった渡部弘晃は5季ぶりのWC出場となったが、前週のCOCで見せた好調ぶりは残念ながら発揮することはできなかった。

 

表彰式

 


この2試合で6位と11位となり健闘した我が愛しのコウデルカ。 彼はかつて、土屋ホームの現コーチであるリヒャルト・シャラートに師事したことがあるらしい。 そんなロマン・コウデルカをはじめとして、遠い遠いSapporoまで遥々やってきてくれた海外選手たちに敬意を表し、下手な写真ではあるが例によって何人かをピックアップしてみた。

 

11 ロマン・コウデルカ(CZE)

 

13 ダニエル-アンドレ・タンデ(NOR)

 

14 ダニエル・フーバー(AUT)

 

15 ロベルト・ヨハンソン(NOR)

 

17 ロビン・ペデルセン(NOR)

 

23 ドメン・プレヴツ(SLO)

 

24 ヤン・ヘール(AUT)

 

26 アンティ・アアルト(FIN)

 

30 グレゴール・デシュバンデン(SUI)

 

44 キリアン・パイエル(SUI)

 


土曜の試技の途中で3番ゲートを使い始めた時には、いったい今年の札幌大会はどうなってしまうのかと不安にさせられた。 今までずいぶんと多くの試合をここで観てきたけれど、3番ゲートというのはちょっと記憶にない。 同じ向かい風でも終始安定して吹き続ければよいのだが、ここではいつもそうならずにピタリと止んだかと思えば、急に突風のように吹くときもある。 運営としては、この突風に備えてゲートを低く抑えざるを得ないのであろう。

 

両日とも本戦で3番ゲートが使用されることはなかったが、風の影響によるアタリハズレの大きい試合であることに変わりはなかった。 それはいつものことなのだけれど、特に今年はあちこちで「糞台」呼ばわりが過ぎるような気がする。その最も大きな理由は、土曜の試合で陵侑が表彰台から転がり落されたことにあるんだと思う。

 

確かにこの台はSurprised boxとも称される世界的にも稀な台。 2018年にFISの指示によりHS付近を底上げしてK点とHSを3.0m後方にずらす大改修を行ったが、欲を言えばその際にもう少し大胆なフラット化がなされていれば良かったのにとは思う。 でも、それはないものねだり。札幌市民として、そしてこの台に通い続け愛着を感じている者として、色々と悪く言われるのはすごく悲しい。

 

これまでに何度か書いてきたけれど、昨シーズンあたりからシグナルコントロールが雑になったように感じられる。 昨年、ここでストッフが驚愕のヒルレコードを出した時の風速は2.17m/s。対して1本目2位だった陵侑の2本目は0.41m/s。こんなにも条件が違うのにコンピューターはどちらもGOサインを出した。しかも陵侑の方がゲートが2段低いのに。 これほど極端ではないにしても、この二日間にも、もう少しきめ細やかなシグナルコントロールがあっても良かったんじゃないかと思う場面が何度かあった。 まぁ、Surprised boxゆえに、待ったところで状況が平均化されるとは限らないんだけれど、それでも台の欠点をカバーするにはそれ以外に方法はないのだから。

 

 

これまで何度も書いてきたMC氏とDJ氏についてのこと。 先月の女子大会では競技中のMCは青野さんとカタダさんとドイさんが勤め、MC氏が競技中に言葉を発することは一切なかった。 あぁ、よかった。改善された。と思っていたところ… …男子の二日間は競技中にもバンバンかぶせてくる昨年のスタイルに逆戻り。 でも、上のスピーカーにはMC氏の声もDJ氏の音楽も流れてこなかったので、あまり気になることはなかった。

 

名寄や朝日の大会は、選手名や飛距離はもちろんアナウンスされるけれど、それ以外の情報が音声として伝えられることはない。 朝日には電光掲示板がないし、名寄にはあるけれど私が観戦している位置からは全く見えない。 よって、現地で観戦しているにもかかわらず、表彰式を見るまで誰が勝ったかすらわからないなんてこともままある。 シーズン開幕期の試合なので選手の調子を見たりする楽しみはあるので観戦に行っているけれど、コンペティションとしての楽しみは極めて薄い。

 

そういう観戦を知ると青野さんやカタダさんのありがたみがよくわかる。 適宜、過不足なく情報を伝えてくれるので試合の状況や流れが分かりやすいし、何よりもスキージャンプに対する愛情を感じる。 本音を言うと青野さんは病気をされてからはかつての名調子ぶりが影をひそめてしまったと感じられるが、一方で、その後継者たるカタダさんのMCにはますます磨きがかかってきた。 今や、彼女こそがこの道の第一人者。ていうか、スキージャンプの場内MCができる人なんか全国にそう何人もいないはず。

 

知識があって、愛情があって、観客が必要とする情報を適宜過不足なく伝えてくれて、結果としてコンペティションとしての楽しみを提供してくれる。 それに最も適した人が既にいるのに、その出番を削ってまで他所からわざわざ門外漢を連れてくる意味ってある?

 

土曜日は14時始発の無料シャトルバスに90人もの人が並んだらしい。 客の入りは早く、14時30分の時点で普段の国内戦の客数をはるかに超えていた。15時30分開始の試技まで1時間もあるというのに。 でも、エキサイティングシートの良い場所を取りたいという人以外には早く会場入りすることにあまり意味はなく、割と時間を持て余す。

 

こんな時こそMC氏とDJ氏の出番ではないのかね。 試合前や試合の合間に観客を盛り上げボルテージをアゲさせるのなんて、それこそMC氏やDJ氏の得意とするところなんじゃないの? 一方、カタダ女史はコンペティションとしての楽しみを提供する実況MCが大得意。 ならば、それぞれ得意な分野で本領を発揮してもらえばいいだけのこと。 開催者側がどうしてもMC氏とDJ氏を使いたいというのなら、女子大会の時のように競技中の実況MCと競技外の時間のMCを明確に役割分担するのがベターだと思う。