2018/19 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第16戦札幌

クラフト3連勝で総合2位に浮上 小林陵侑 自国で表彰台

2019年1月27日(日) 札幌(JPN)HS137/K123 

 

 

20th World Cup Competition 

 シュテファン・クラフト(AUT)  248.2pt  135.0m  128.5m
 ティミ・ザイツ(SLO)  238.4pt  138.5m  125.0m
 小林 陵侑(土屋ホーム)  236.6pt  124.5m  129.5m
 
7  葛西 紀明(土屋ホーム)  229.9pt  131.5m  127.5m
20  中村 直幹(東海大学)  207.2pt  122.5m  125.5m
22  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)  200.0pt  125.5m 118.0m
23  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)  199.8pt  126.0m 120.0m
26  伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部)  189.0pt  121.5m 118.0m
28  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)  179.6pt  118.0m   110.0m
33  栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部)  92.3pt 119.5m   
38  原田 侑武(雪印メグミルクスキー部)  80.9pt  114.0m  
43  作山 憲斗(北野建設スキー部)  74.0pt  107.5m  
   内藤 智文(古河市スキー協会)  本戦失格  スーツ  
   竹内 択(北野建設スキー部) 予選落ち     
   伊藤 謙司郎(雪印メグミルクスキー部) 予選落ち     

予選 リザルト オフィシャル リザルト


 

前日は5位に終わった小林陵侑。
この日は予選をトップ通過したこともあり今度こそはと大きな期待がかかったが、見事その期待に応え表彰台の一角を射止めた。
自国での優勝は叶わなかったが、前日同様に2本とも不運な風に当たってしまったことを思えば大いに善戦したと言える。
実際、1本目の8位から2本目でカレントリーダーに立ち、そこからヨハンソン、ラニセク、グランネル、ライエ、ジワからトップを守り続けた表彰台攻防はスリリングで見ごたえ十分だった。

 

勝ったクラフトはこれで3連勝。ストッフを抜いて総合2位に躍り出た。
札幌での3日間は常に安定しており失敗がなかった。直線的な軌道で前へ前へグイグイと押し進んでいくフライトは絶品で、やはり見ていて楽しい選手。
次戦からフライングも始まる。2月には自国での世界選手権もある。シーズン後半に小林陵侑の最大のライバルとなるのはこの男か。

 

ザイツは初表彰台。
昨季WCデビューを果たしたばかりの18歳だが、壊滅状態に近いスロベニアの中にあって最上位の総合12位につけており、実質的にエース的な存在となりつつある。
スロベニアは2012/13シーズンから札幌大会で毎年表彰台に上り続けてきたが、ザイツのこの日の活躍でその記録を途切れさせることなく繋ぐことができた。(下表の黄色マーカーがスロベニアの選手)

 過去の札幌大会の表彰者
season 優勝 2位 3位
2009/10 1 トーマス・モルゲンシュテルン ヴァンク 伊東大貴
2 シモン・アマン 葛西紀明 コッホ
2010/11 1 セヴェリン・フロイント モルゲンシュテルン マリシュ
2 アンドレアス・コフラー フロイント モルゲンシュテルン
2011/12 1 伊東大貴 バーダル ストッフ
2 伊東大貴 ストッフ コフラー
2012/13 1 ヤン・マトゥラ ヒルデ クラニエッツ
2 ヤン・マトゥラ クラニエッツ ヴァンク
2013/14 1 ぺテル・プレヴツ ダミヤン 葛西紀明
2 イエルネイ・ダミヤン プレヴツ クラニエッツ
2014/15 1 ぺテル・プレヴツ クラフト コウデルカ
2 ロマン・コウデルカ ストッフ プレヴツ
2015/16 1 ぺテル・プレヴツ ドメン・プレヴツ クラニエッツ
2 アンデシュ・ファンネメル フォルファング 葛西紀明
2016/17 1 マチェイ・コット
ぺテル・プレヴツ
  クラフト
2 カミル・ストッフ ヴェリンガー クラフト
2018/19
NEW
1 シュテファン・クラフト ストッフ ヨハンソン
2 シュテファン・クラフト ザイツ 小林陵侑

 


 


① シュテファン・クラフト(AUT)

 


② ティミ・ザイツ(SLO)

 


③ 小林 陵侑(土屋ホーム)

 


=4 ピオトル・ジワ(POL)

 


=4 ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR)

 


6 カミル・ストッフ(POL)

 


7 葛西 紀明(土屋ホーム)

 


8 シュテファン・ライエ(GER)

 


9 ロベルト・ヨハンソン(NOR)

 


10 ヨハン-アンドレ・フォルファング(NOR)

 


20  中村 直幹(東海大学)

 


22 小林 潤志郎(雪印メグミルク)

 


23 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)

 


26 伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部)

 


28 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)

 


33 栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部)

 


38 原田 侑武(雪印メグミルクスキー部)

 


43 作山 憲斗(北野建設スキー部)

 


 

今季、苦しみ続けた葛西紀明がようやく長いトンネルを抜け出した。
1本目を10位で折り返すと2本目は更に順位を上げ結果は7位。
トップ10入りは昨季ヴィケルスンでの10位以来。シングルは昨季クルムでの5位以来1年ぶり。
残念ながらこれまで11大会連続で選ばれてきた世界選手権のメンバーからは漏れた。でも次戦は得意のフライング。「ここでポイントを稼げば堂々と来季の遠征メンバーに入れる。大事な後半戦になる」と前を見据える。

 

WC初出場となった佐藤慧一は土曜は26位、この日は23位で見事二日間ともポイントを獲得。
2016年4月に下川商業から雪印メグミルクに入り、この冬の名寄ピヤシリ大会でシニア初優勝を遂げ1月のHBC杯でも勝ったばかり。ようやくその実力に見合った結果が出るようになってきた。
SAJは今季から「派遣選考基準」を明示し、不透明な基準ではなく今まで以上にWCポイントやCOCポイントを重視した選手選考が行われるようになった。この2試合で獲得したポイントはまずは来夏のGP派遣に活きるはず。大事な大事な13ポイントだ。

 

表彰式


ザイツ、クラフト、小林

 


シュテファン・クラフト

 


小林 陵侑

 


 

個人的に大注目のヤン・ヘールはこの日も結果を出した。
前日の17位から二つ順位を上げて15位。
今後がホントに楽しみな選手。

 

そんなヘールをはじめとして、遠い遠いSapporoまで遥々やってきてくれた海外選手たちに敬意を表し、下手な写真ではありますが個人的な好みで何人かをピックアップしてみた。

 


12 ダヴィド・クバツキ(POL)

 


13 ドメン・プレヴツ(SLO)

 


14 ロマン・コウデルカ(CZE)

 


15 ヤン・ヘール(AUT)

 


16 マルクス・アイゼンビヒラー(GER)

 


17 アンドレアス・ヴェリンガー(GER)

 


18 ダニエル・フーバー(AUT)

 


19 マニュエル・フェットナー(AUT)

 


21 マチェイ・コット(POL)

 


25 ステファン・フラ(POL)

 


27 キリアン・パイエル(SUI)

 


30 ヤクブ・ヴォルネ(POL)

 


 

北海道新聞によるとこの2日間の観客数は合計7,200人で2年前の前回大会より18%増えたとのこと。
内訳は土曜日が前回の200人増の3,400人、日曜日が900人増の3,800人。
今年初めて売り出された企画チケットは、エキサイトゾーンが土曜日300枚、日曜日が360枚ほど売れたらしい。また、スカイVIP席は3組6名、ジンギスカン付きチケットは4組16名が利用したとのこと。

 

個人的には、これらの企画チケットを買った人たちに「来年も同じチケットを買うか?」と聞いてみたい。

 

 

また、これも今季初の試みである外部からのDJ派遣については、女子札幌大会の記事にも書いたのでそちらもご覧いただきたい。
派遣されたDJはスキージャンプのことをあまり知らないようなので、けっこうピントがずれたこと言ったりするのがやはり気になった。

  • やたらと連呼していた「世界ランキング」というフレーズ。
    「WCスタンディング」の事を言おうとしているんだろうけれど、スキージャンプにはWCスタンディングの他に「ワールドランキング」というものがある。
    よってこのフレーズには違和感しか残らなかった。
  • 日曜日に連呼していた「昨日のチャンピオン」というフレーズ。
    これも「前日の勝者」を指して言っているということは理解できるんだけれど、ファンは「チャンピオン」というと総合優勝者をイメージしてしまうもの。
    決して間違いではないのだけれど、やはり違和感が残った。
  • ヒゲの話。
    土曜日に札幌スキー連盟の女性MCのカタダさんが半分冗談として触れたヨハンソンやフェットナーのヒゲの話題を延々日曜日まで引っ張っていたが、最後の方はカタダさんもいい加減押し黙っちゃってた。

 

とにかく事前の勉強不足。手持ちの情報がないからヒゲの話題に頼らざるを得ない。
カタダさんらは常に下調べをしたであろう情報を手にMCに臨み、適宜それらの情報を提供してくれる。初心者が何の下調べもせずに臨むのは無謀。というか客に失礼。

 

失礼を承知で敢えて厳しいことを言うが、そもそも言葉で物事を伝えるというスキルそのものに疑問符が付くようにも感じられた。

  • 「世界ランキング41位の選手です!」ってどや顔で言われても…
    トップ10内の選手の紹介としてそれを言うならわかるけど、41位の選手の紹介にその情報は必要か? わざわざ「たいしたことない選手です」って紹介しちゃっているようなもの。
  • まだ2人しか飛んでいない時点で「ただ今の順位は第1位~~~っ!」って盛り上げられても…
    盛り上げようという気持ちはわかるが、全体的に状況判断ができていない印象。それ今言うセリフか?って感じさせる場面がやたら多かったように思う。
  • 「さぁ、次の選手の紹介をお願いしまっす!」と毎回毎回カタダさんに振るのも興ざめ。
    そんな余計なフレーズの繰り返しをする間が合ったら他に提供すべき情報はいくらでもあるはずなのに。

 

対して、予選を担当した女性MCカタダさんとドイさんのコンビはスゴかった。
55人が飛ぶのに35分しか掛からないという猛烈なスピードで予選が進行される中、小気味よくそれでいて過不足なく情報を提供してくれた。
目をつむっていても予選の状況がわかるのではないかというほどの見事な実況だった。

 

札幌スキー連盟には元々こんなに優れた場内MCさんたちが居る。
なのに、その方達の出番を削ってまで外部のDJを導入する必要ってあるのかな?

 

 

コメント

  1. DJ同様、日曜はSTVですから芸人呼んで盛り上げたいのは民放局の企画としてわからないでもないですが、スキー以上に滑りまくっていましたね。
    2本目の途中から突然DJの音声が切れて場内は幾分シラけモードに。
    後に音声復活しましたが、ありゃいらんですね。ヒゲの話もしつこい。
    次が日本人って時にテストジャンパー入れた際はまったく放送しないものだから慣れてない観客は日本人が飛んでくると思ってエラい状況になっていました。
    また、陵侑が表彰台かどうかって時に気持ちはわかりますが、上位選手の失敗ジャンプを期待するかのような発言には不快感を覚えましたよ。

    遙々札幌まで来られた選手・コーチ達に申し訳ない気持ちです。

    • FAさん、いつもコメントありがとうございます。

      スポーツってやる側にスキルと経験が必要なのはもちろんですが、見る側にも同じことが言えるような気がするんです。
      普段から野球でもサッカーでもテレビなり現地なりでよく観ている人は自然と「スポーツを観る目」が養われているんじゃないかと。

      あのDJは普段はあんまりスポーツを見ない人なんじゃないのかなぁと思いました。
      だから、スポーツを観る目が備わっていないんじゃないかと。
      それが備わっていれば、盛り上がるであろう場面に察しが付くし、今どんな情報が必要なのかも自ずとわかるはず。
      普段からスポーツ観ていないので、そういうことがわからなかったんじゃないかなぁと感じました。

      民放局でのプロ野球やJリーグの中継が激減しスポーツを観る機会が減っていますよね。
      一方でネットで結果”だけ”、ダイジェスト映像”だけ”が簡単に手に入る。
      でもそれを追っかけているだけではスポーツを観る目は養われないように思うのです。

      とにかく今回のDJは残念でした。