二階堂蓮が今サマー2勝目 坂野旭飛は無傷の4連勝
2022年8月7日(日)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123
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女子組(基本ゲート1本目22、2本目22)
1 | 伊藤 有希(土屋ホームスキー部) | 187.9pt |
2 | 岩崎 里胡(下川商業高校) | 99.8pt |
3 | 五十嵐 彩佳(ガスワンスキーチーム) | 75.3pt |
少年組(基本ゲート1本目12、2本目10)
1 | 坂野 旭飛(下川商業高校) | 166.6pt |
2 | 中村 正幹(東海大学付属札幌高校) | 106.3pt |
3 | 西田 蓮太郎(下川商業高校) | 76.1pt |
4 | 森野 幹登(札幌日大高校) | 62.6pt |
5 | 山川 伶欧(新潟新井高校) | 54.7pt |
6 | 森 恢晟(東海大学付属札幌高校) | 49.4pt |
成年組(基本ゲート1本目12、2本目10)
1 | 二階堂 蓮(日本ビールスキー部) | 217.0pt |
2 | 渡部 弘晃(東京美装グループスキー部) | 202.5pt |
3 | 小林 陵侑(土屋ホームスキー部) | 198.3pt |
4 | 竹花 大松(土屋ホームスキー部) | 184.3pt |
5 | 内藤 智文(米沢スキージャンプクラブ) | 173.3pt |
6 | 竹内 択(team taku) | 165.4pt |
小林陵侑の1本目は大きくローリングしたように見えた。
この日の大倉山は、選手左からの横風が強かった。
いつもの陵侑なら軽くいなしたであろうけど、やはりまだ試運転の段階だろうか。
4位で折り返した2本目は、2番手のスコアで表彰台はゲット。
前日の試合から踏切のタイミングが早くて苦しんでいたらしい。
筋力も全然足りていないらしく、気のせいか顔も少しぽっちゃりしているように見える。
1本目で131.0mを飛びトップに立った二階堂蓮が今夏2勝目。
開幕からの北海道開催5試合中4試合で表彰台に上り残り1試合も9位入賞と絶好調。
大会 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
全日本朝日 | 二階堂 蓮 | 岩佐 勇研 | 馬淵 源 小林 朔太郎 |
サンピラー記念 | 岩佐 勇研 | 渡部 弘晃 | 坂野 旭飛 |
札幌市長杯NH | 小林 陵侑 | 二階堂 蓮 | 竹花 大松 |
札幌市長杯LH | 小林 陵侑 | 佐藤 幸椰 | 二階堂 蓮 渡部 弘晃 |
チャレンジ杯 | 二階堂 蓮 | 渡部 弘晃 | 小林 陵侑 |
2021年HBCカップ、2022年STVカップ、2022年カツゲンカップ(非A級公認)、2022年全日本朝日と勝利を重ね、この日でシニア5勝目。
竹花大松、小林龍尚、工藤漱太ら同期のライバルたちが高校卒業後に実業団入りを果たしたのに対し自らはどこからも声がかからなかった。
相当悔しかったようだが、しかし今では勝ち頭だ。
競技に専念するために大学を中退し、スポンサーを集めて活動していた。
今季は新たに発足した日本ビールスキー部の所属となり体制面は整った。
この日は金メダリストに勝利したが、相手が万全の状態でなかったことから浮かれる様子は全くない。
まずはこの冬のWC開幕メンバー入りを目指し、その先のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を見据える。
女子組
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伊藤有希は2位に88.1ptもの大差をつけた。
前日と同じ22番ゲートが使われたが、女子で20番代前半のゲートが使われるのは昨年10月に高梨沙羅が出場したUHBカップの20番以来のこと。
風向風速の条件によるので一概には言えないが、これはつまりWC仕様の設定と言ってよい。
なので、伊藤有希以外の選手たちにとっては非常に厳しい設定だった。
これで北海道開催5戦4勝。
唯一これを破ったのが宮の森での丸山希だが、彼女はその試合以外はエントリーしていない。
怪我の回復とメンタルの状態が整ったときに、この二人のラージヒルでの力関係を存分に楽しんでみたい。
大会 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
全日本朝日 | 伊藤 有希 | 佐藤 柚月 | 久保田 真知子 |
サンピラー記念 | 伊藤 有希 | 久保田 真知子 | 中山 和 |
札幌市長杯NH | 丸山 希 | 伊藤 有希 | 岩崎 里胡 |
札幌市長杯LH | 伊藤 有希 | 中山 和 | 久保田 真知子 |
チャレンジ杯 | 伊藤 有希 | 岩崎 里胡 | 五十嵐 彩佳 |
2位に入った岩崎里胡は、2日前の宮の森に続く今夏2度目の表彰台。
実は、その宮の森での3位がシニア初表彰台だったのだが、この日早くもベストリザルトを更新した。
2020年以降の女子は中高生たちの活躍が目覚ましい。岩崎里胡は現在高校2年生。次のシニア初優勝に最も近い中高生だろう。
2020年以降の全日本A級公認大会における中高生の初優勝
一戸 くる実 | N高1年 | 2020.吉田杯 |
中山 和 | 下川商業高1年 | 2021.TVh杯 |
櫻井 梨子 | 余市紅志高2年 | 2021.宮様NH |
葛西 春香 | 東海大札幌高3年 | 2021.吉田杯 |
佐藤 柚月 | 札幌羊丘中3年 | 2022.札幌五輪記念 |
齋藤 優 | 下川商業高1年 | 2022.宮様NH |
少年組
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63名がエントリーした男子(少年組・成年組)にあって坂野旭飛のビブナンバーは56番。
彼よりビブが大きい選手は7名しかいない。
少年組で次にビブが大きいのは32番の西田蓮太郎。これだって既に立派なことなのだが、旭飛はそこから数えただけでも23人ものシニア選手を従えての56番。あまりに素晴らしすぎる。
少年組の設定のなかった名寄を除き北海道開催4戦全勝。その名寄では男子組で3位に入って見せた。
そして、この日も男子組総合で6位。
二階堂蓮、竹花大松に続くスーパー高校生は、恐ろしいスピードで成長を遂げている。
大会 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
全日本朝日 | 坂野 旭飛 | 杉山 律太 | 森 恢晟 |
サンピラー記念(男子組) | (岩佐 勇研) | (渡部 弘晃) | (坂野 旭飛) |
札幌市長杯NH | 坂野 旭飛 | 三上 託摩 | 西田 蓮太郎 |
札幌市長杯LH | 坂野 旭飛 | 西田 蓮太郎 | 中村 正幹 |
チャレンジ杯 | 坂野 旭飛 | 中村 正幹 | 西田 蓮太郎 |
成年組
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表彰式
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9時に始まった公式練習の時から横風は強かった。予報でもかなり風は強くなるとあった。
それもあってか、運営は前日同様にかなり慎重なゲート設定を行ったように思う。
途中、風の影響により10分の中断があった。報道を見ても「風」について言及しているものが多い。
ただ、見た目と体感だけで言えば、この日の大倉山はむしろ割と穏やかだったように感じられた。
少なくとも、いつもの大倉山と比較して「風が荒れた」という印象は全くない。
おそらくは数値に表れない追い風の影響が大きかったのではないかと想像される。
ところで、FISはこの夏にWFのルールを改定した。
これまでは、向い風の数値に対して追い風は21%増の数値が設定されていた。これに対して今季は50%増の数値が設定されることになる。
向い風の有利さに対する補正よりも、追い風の不利をより多く補正しようとする意図がある。
例えばGP開幕戦が行われたヴィスワでは、昨季までは秒速1mの向い風に対して10.80pt減算し、追い風は13.07pt加算することになっていた。
対して開幕戦のヴィスワでは、追い風の補正は向い風の50%増の16.20pt加算に変更されていた。
もちろん、GPクーシュベルでも同様の変更がなされていた。
ヴィスワ | 向い風(m/s) | 追い風(m/s) | 備考 |
---|---|---|---|
昨季まで | -10.80pt | +13.07pt | 追い風は向い風より21%増の補正 |
今季から | -10.80pt | +16.20pt | 追い風は向い風より50%増の補正 |
しかし、今回の札幌3連戦では、このFISの改定は採用されなかった。
よって従来通りの「追い風は向い風より21%増の補正」が用いられた。
大倉山は、基本的に向い風が吹く台。追い風は(少なくとも数値上は)あまり吹かない。
でも、あまり吹かないからこそ、その時の不利をしっかりと救済してあげることが必要だと思う。
なので、今回のルール改定は大倉山のような台にこそ必要なのかなという気がする。
ただし、風向風速は7ヵ所の平均で採る。よって、どこか1ヵ所で強い追い風を受けたとしても、数値上は向い風として判断されてしまうことはよくあること。
この日の試合もそんな感じだったのかなぁと想像されるのだが、そうだとしたら21%を50%にしたところで何の意味も持たないことになってしまう。
ああ、やはり難しき大倉山の風。
ただ、私は大倉山の試合が「運ゲー」だとはこれっぽっちも思っていない。
それを言ってしまっては、今までこの台で勝ってきた選手たちにあまりに失礼だと思う。
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