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2020/21 FISスキージャンプワールドカップ女子個人第13戦チャイコフスキー【シーズン総括】

クリジュナル総合優勝 高梨沙羅 総合2位 クラマーは破竹の4連勝

2021年3月28日(日)チャイコフスキー(RUS)HS140/K125

15th World Cup Competition

1 マリタ・クラマー(AUT)136.1pt
2 シリエ・オプセット(NOR)120.1pt
3 ニカ・クリジュナル(SLO)115.4pt
 
7 高梨 沙羅(クラレ)109.4pt
15 岩渕 香里(北野建設)82.2pt
19 勢藤 優花(北海道ハイテクAC)72.5pt
23 伊藤 有希(土屋ホーム)68.4pt
 丸山 希(明治大学)スーツ失格

オフィシャル リザルト

総合優勝争いが最終戦までもつれた今季の女子ワールドカップ。
数字上は暫定総合3位のクラマーまで可能性がある。
ただし、クラマーが勝っても沙羅は7位以上で上回れるし、クリジュナルも4位以上で上回れる。

  1. 高梨沙羅 826pt
  2. N.クリジュナル -15
  3. M.クラマー -66

今季ここまでの沙羅のワーストは7位で、現在7戦連続表彰台であることからも8位以下になることは考えにくい。
よって、総合優勝争いは沙羅とクリジュナルに絞られたとみてよい。

暫定総合1位の沙羅は、とにかくクリジュナルにさえ負けなければいい。
仮にクリジュナルに敗れたとしても15点差がものをいう。
いずれにしても沙羅が優位な状況ではあった。数字の上では―

前日の団体戦が難しい風の状況によりキャンセルされ、この日に順延開催となり個人最終戦の前に1本勝負で行われた。
目を引いたのはクリジュナル。強豪ひしめく4組目で、クラマー、オプセット、高梨を従えてトップスコア。

その試合から2時間半ほどの時間をおいて今度はラージヒルに場所を移して行われた個人最終戦。
難しい風の状況は、この日も変わらず。
結局、総合優勝を賭けた決戦は2本目がキャンセルという形で終わりを見た。

クラマーはさすがの強さを見せ破竹の4連勝。
団体戦で好調だったオプセットとクリジュナルが表彰台を射止めた。
沙羅は今季ワーストタイの7位。先ほど”沙羅が8位以下になることは考えにくい”と書いたばかりだが、全然ありえたかもしれないハナシだった。

なお、BLUE BIRDツアーは4戦全勝のクラマーがタイトルを手中に収めた。
2位は高梨。3位はクリジュナル。

2本目がキャンセルとなり、沙羅の総合優勝への逆転の機会が奪われてしまったことは残念だけど、ジャンプ競技にとってこういうことがあることは織り込み済みのこと。
だからそれは全然問題ない。

でも、1本目の結果には、ちょっとタラレバを考えてしまう。
クリジュナルが3位でも、沙羅は5位になれば得点で並び勝ち数が上回るので総合優勝だった。
5位までは3.9pt。飛距離にして僅か2.0m。嗚呼、惜しい…

2020/21シーズン総括

当初は25試合(個人戦21試合・団体戦4試合)行われるはずだった今シーズンの女子ワールドカップ。
そのうちの12試合が新型コロナの影響により中止となり、代わって追加されたのは3試合のみ。
結果として当初の予定より9試合少ない16試合(個人戦13試合・団体戦3試合)が行われた。

なお、個人戦が13試合というのは、女子ワールドカップ初年度の2011/12シーズンと2014/15シーズンの実開催数と並び最も少ない。

シーズンを席巻したクラマー

シーズンを席巻したのは、総合優勝のクリジュナルでも2位の高梨沙羅でもなく3位のクラマーだ。

昨季の札幌大会で初優勝を遂げたクラマーは、そのシーズンで総合9位に入るというブレイクを既に果たしてはいた。
なので、本人もそうだろうし我々ファンもそれなりの期待感を持って臨んだシーズンインではあった。

しかし、開幕戦でクラマーはその期待のはるか上を行く姿を見せつけた。
公式練習、予選、試技、そして本戦の計6本で全てトップを獲る完ぺきな勝利。
並み居るライバルたちから完全に主役の差を奪い取ってしまった。

その勢いのままに開幕から4試合で3勝。シーズン終盤には4連勝。
計7勝は今季最多勝利数。シーズンワースト順位でさえ4位。
圧倒的な強さだったと言っていいだろう。

にもかかわらず総合優勝できなかったのは、ひとえに新型コロナの影響によるものだった思える。
陽性の疑いがあったためルシュノフでの2試合の欠場を余儀なくされた。
その結果、開幕から維持してきたイエロービブをクリジュナルに奪われることとなった訳だが、その挽回の機会となるはずのRAW AIRも中止となってしまったのが痛かった。

ルシュノフ終了時点でトップと151点の差がついてしまったが、そこからは破竹の4戦全勝で、最後は11点差まで詰め寄った。
しかし、トップを奪い返すのには試合数が少し足りなかった。
当初の予定通り19試合あれば、いやせめてあと1試合多ければ、新しい女王はクラマーだったはずだ。

ワールドカップ総合順位

1 ニカ・クリジュナル(SLO)8712勝(7)
2 高梨 沙羅(JPN)8623勝(4)
3 マリタ・クラマー(AUT)8607勝(9)
4 シリエ・オプセット(NOR)6922位3回(10)
5 ダニエラ・イラシュコ-シュトルツ(AUT)5164位5回(6)
6 エマ・クリネツ(SLO)4922位2回(8)
7 イリーナ・アバクモワ(RUS)3495位2回(19)
8 マーレン・ルンビ(NOR)3384位1回(1)
9 カタリナ・アルトハウス(GER)3166位1回(5)
10 キアラ・ヘルツル(AUT)3085位2回(2)
11 丸山 希(JPN)2924位1回(13)
13 エイリン‐マリア・クバンダル(NOR)  2491勝
14 伊藤 有希(JPN)2455位1回(12)
30 勢藤 優花(JPN)6619位2回(18)
31 岩渕 香里(JPN)606015位1回(34)
右端の( )は昨シーズンの順位

WC総合

大会別優勝者

1ラムサウNH M.クラマー(AUT)
2リュブノNH E-M.クバンダル(NOR)
3ティティゼー-ノイシュタットLH M.クラマー(AUT)
4ティティゼー-ノイシュタットLH M.クラマー(AUT)
5ヒンツェンバッハNH N.クリジュナル(SLO)
6ヒンツェンバッハNH 高梨 沙羅(JPN)
7ヒンツェンバッハNH 高梨 沙羅(JPN)
8ルシュノフNH N.クリジュナル(SLO)
9ルシュノフNH 高梨 沙羅(JPN)
10ニジニ・タギルNH M.クラマー(AUT)
11ニジニ・タギルNH M.クラマー(AUT)
12チャイコフスキーNH M.クラマー(AUT)
13チャイコフスキーLH M.クラマー(AUT)

ポイントを取り続けたクリジュナル

総合優勝のクリジュナルは、第5戦ヒンツェンバッハで同僚のクリネツとの“どちらが先に勝つか対決”を制してワールドカップ初優勝。
この試合を皮切りに最終戦まで9試合連続で表彰台に登り続けた。

勝利数は2勝にとどまったが、開幕戦を含む10試合で表彰台に上がった。
なお、表彰台10回は今シーズンの最多。
また、表彰台登壇率はクラマーの72.7%(8回/11戦)、高梨沙羅の69.2%(9回/13戦)を上回る76.9%(10回/13戦)

技術的には、クラマーにも沙羅にも劣ってはいただろう。
でも、コロナによる欠場もなく、クラマーと沙羅が喰らった失格もなく、全試合に出場しコンスタントにポイントを獲得し続けたことが効いた。

特に、今シーズンは試合数が少なくなってしまったことで相対的に1試合の重みが増した。
だから1試合でもノーポイントがあるのは例年以上に致命的だった。
結果論ではあるけれど、試合数の少なさが総合優勝争いの明暗を分けたような気がする。

大きく変わった勢力図

3シーズン連続で総合優勝を遂げてきた女王マーレン・ルンビ。昨シーズン最多勝利で総合2位となったキアラ・ヘルツル。
いずれも今シーズンは、勝利はおろか表彰台すら一度もない。
また、昨季総合3位のエバ・ピンケルニッヒは、開幕2週間前の練習中に転倒し脾臓を痛める大怪我を負い今季の出場は2試合だけにとどまった。

ドイツ勢は全体に不調で、カタリナ・アルトハウス、ユリア―ネ・ザイファルトといった優勝経験のある選手も含めて誰一人として表彰台に登ることはなかった。

代わって輝いたのは、7度の表彰台で総合4位となったオプセット、出場2戦目にして初優勝を遂げたクバンダル、3季ぶりに総合トップ10に返り咲いたアバクモワ、小さな身体で力強いジャンプを見せたビョルセットあたりか。

中でもクバンダルには驚かされた。
力強い踏切から高さを保って飛距離を伸ばす様はとても魅力的だ。
でも、第7戦ヒンツェンバッハで転倒し半月板と前十字靱帯を痛めシーズンから退場した。
急激に飛距離を出す力を身に着けたけれど着地の技術が追い付いていなかった。
非凡さゆえに招いた悲劇。来季の復活を待ちたい。

完全復活した高梨沙羅

今季3勝を挙げ、クリジュナルとの接戦の末に総合2位となった高梨沙羅。
女子ワールドカップ10年の歴史の中で全てのシーズンで勝利を挙げており、今季9回の表彰台で通算登壇数は100回を超えた。

正直、沙羅がここまで復活してくるとは思っていなかった。
ここ数年行ってきた試行錯誤は、素人意見ながら私にはやりすぎのように思えてならなかった。
迷いの境地に入ってしまい平昌五輪のシーズンは2勝、その後の2シーズンは1勝ずつしか勝てていない。
沙羅はもう総合優勝を争うような位置に返り咲くことはないのではないか。そんな気すらしていた。

その思いは、昨秋の大倉山で見たときにも強く感じられた。
空中フォームが良かった時とは全く違って見えた。
向かい風の状況にもかかわらず随分と後ろに手を引いており上体が立ち気味。素人目に見てもあまり効率が良いとは思えなかった。

それがどうだ。シーズンが始まると徐々に試行錯誤の成果が表れ始めた。
助走から踏切へのスムーズさ。そして完了の速さと正確さ。空中でスキーが上下する場面が散見されるのが気になるが、直線的に前にグイグイ進むので多少スキーが乱れてもそれほど影響を受けていないように見える。
また、直線的な飛行曲線はランディングのし易さにも繋がっていてテレマークも難なく入る。

第10戦ニジニ・タギルで総合トップとなり自身久々のイエロービブを纏うこととなった。
最終戦まで総合優勝を争い、最後は惜しくもクリジュナルに敗れたが、見事に総合2位でシーズンを終えた。

こうしてまた沙羅はトップレベルに戻ってきた。

その他のシーズンタイトル

BLUE BIRDツアー総合順位

1 M.クラマー(AUT)869.4
2 高梨 沙羅(JPN)-71.1
3 N.クリジュナル(SLO)-80.2
4 S.オプセット(NOR)-90.5
5 D.イラシュコ-シュトルツ(AUT)-128.5
13 伊藤 有希(JPN)-180.8
16 丸山 希(JPN)-213.2
19 勢藤 優花(JPN)-242.4
27 岩渕 香里(JPN)-435.3

BLUE BIRD総合

団体戦 大会別優勝国

1 リュブノNH スロベニア日本4位
2 ルシュノフNH-Mix ノルウェー日本4位
3 チャイコフスキーNH オーストリア日本6位

ネイションズカップ総合順位

1 オーストリア3053
2 スロベニア-170
3 ノルウェー-573
4 日本-1003
5 ドイツ-1645

国別総合順位

日本チームの闘い

日本勢では、昨季に続いてまたも丸山希が成長を見せた。
自己最高位をそれまでの6位から2度更新して4位とし、いよいよ表彰台が見えてきた。
残念だったのは最終戦のスーツ違反による失格。これにより、総合トップ10もBLUE BIRDツアーの5位以内も失ってしまった。

それにしても今季の日本チームは失格が多かった。

  • 第2戦 伊藤有希 スキー長
  • 第5戦予選 伊藤有希 スーツ
  • 第5戦 高梨沙羅 スーツ
  • 第6戦 勢藤優花 スーツ
  • 第9戦 勢藤優花 スーツ
  • 第10戦 岩渕香里 スーツ
  • 団体2戦 勢藤優花 スーツ
  • 第13戦 丸山希 スーツ

スーツ違反については、巷で言われるような「日本つぶし」があるとは全く思わないが、尋常でない多さであることは間違いない。

スーツは”測られ方”ひとつで適法にも違法にもなってしまう。
ひょっとすると日本チームは、測られ方の”技術”に問題があるのかも。
いずれにしても、来季に向けて何らかの対策は必要と思われる。

なお、スーツに関しては以前詳しく書いているので、興味のある方は読まれたし。

来シーズンへの期待

シーズンが終わったばかりなので、来シーズンの展望など語る気もない。
ただ、コロナの影響を受けないシーズンであってほしいと願うのみ。
そして、無事に札幌と蔵王で開催されることを願うのみ。