高梨沙羅 2連勝で完全復活を印象付ける
2021年2月7日(日)ヒンツェンバッハ(AUT)HS90/K85
8th World Cup Competition
1 | 高梨 沙羅(クラレ) | 234.1pt |
2 | ニカ・クリジュナル(SLO) | 231.0pt |
3 | シリエ・オプセット(NOR) | 223.5pt |
18 | 丸山 希(明治大学) | 200.5pt |
20 | 伊藤 有希(土屋ホーム) | 194.2pt |
28 | 勢藤 優花(北海道ハイテクAC) | 180.8pt |
36 | 岩渕 香里(北野建設) | 86.7pt |
高梨沙羅が完全復活を印象付ける2連勝を果たした。
予選でトップ。1本目も2本目もトップ。
前日は0.4pt差の大接戦となったクリジュナルに対してこの日は3.1pt差をつけての快勝。
確かに条件も味方した。
でも、沙羅の強さは本物だと思える。
助走から踏切へのスムーズさ。そして完了の速さと正確さ。
2本とも空中で少しスキーが乱れたが、直線的に前にグイグイ進むので多少スキーが乱れてもそれほど影響を受けていないように見える。また、直線的な飛行曲線はランディングのし易さにも繋がっていてテレマークも難なく入る。
イラシュコをしてアンドロイドと言わしめたかつての沙羅の姿、いや、むしろそれ以上の姿がそこにあるといっても褒めすぎではないようにさえ思える。
平昌五輪前から始まった試行錯誤は、素人意見ながら私にはやりすぎのように思えてならなかった。
そこからは迷いの境地に入ってしまい、成績的には3シーズンを棒に振ってしまい、平昌五輪のシーズンは2勝、その後の2シーズンは1勝ずつしか勝てていない。
正直、沙羅はもう勝てないのではないかとさえ思った。
でも、こうしてまた沙羅はトップレベルに戻ってきた。
うれしいと思う気持ちがあるのはもちろん、疑ってごめんねという気持ちもある。
いずれにしても、悲願の世界選手権金メダルへの準備は整いつつあることは間違いないだろう。
クバンダルが転倒し担架で運ばれた。
今季開幕戦でワールドカップデビューを果たし、2戦目でいきなり優勝したホープ。
力強い踏切から高さを保って飛距離を伸ばす様は魅力的だが、高いところから落ちる着地に難がある。これまでも、お手つき、尻もち、転倒を何度か見せてきたが幸いにして怪我につながるようなものではなかった。
下表は、今季のクバンダルの予選と本戦のデータ。
女子は飛型点が50点に届かない選手は珍しくはないが、上位に入る選手としては致命的に低い点数だと言わざるを得ない。
そして、前述の通り、短期間の間にお手つき、尻もち、転倒を繰り返している。
Rd | 飛距離 | 飛型点 | 順位 | 最終 | |
個人第1戦 HS98/K90 |
Q | 82.0 | 47.0 | 33 | |
1 | 78.0 | 46.5 | 33 | 33 | |
団体 HS94/K85 |
1 | 89.0 | 50.5 | 3 | |
2 | 95.0 | 34.5 | 5 | ||
個人第2戦 HS94/K85 |
Q | 84.5 | 48.5 | 11 | |
1 | 92.0 | 50.0 | 2 | 1 | |
2 | 89.0 | 53.0 | 2 | ||
個人第3戦 HS142/K125 |
Q | 125.5 | 47.5 | 6 | |
1 | 129.5 | 47.5 | 2 | 6 | |
2 | 133.0 | 44.5 | 7 | ||
個人第4戦 HS142/K125 |
Q | 126.5 | 49.0 | 11 | |
1 | 132.5 | 50.0 | 6 | 14 | |
2 | 136.5 | 26.5 | 15 | ||
個人第5戦 |
Q | 85.0 | 52.5 | 5 | |
1 | 84.5 | 52.0 | 4 | 3 | |
2 | 90.0 | 48.0 | 3 | ||
個人第6戦 HS90/K85 |
Q | 89.5© | 29.0 | 25 | |
1 | 82.0© | 52.5 | 19 | 16 | |
2 | 85.0© | 50.0 | 11 | ||
個人第7戦 HS90/K85 |
Q | 84.5© | 48.0 | 14 | |
1 | 89.5 | 48.5 | 4 | 15 | |
2 | 88.0© | 28.5 | 26 |
土曜日の第6戦からコーチリクエストでゲートを下げるという対策を取っていたが、それでも事故は起きてしまった。
頭からつんのめるように派手に転がる明らかに危険な転倒。
半月板と前十字靱帯を痛めたらしく今季絶望という状況のようだ。
若い選手には起こりがちなことなのかもしれないが、急激に飛距離を出す力を身に着けたけれど着地の技術が追い付いていなかった。
非凡さゆえに招いた悲劇。
いずれにしてもとても残念だ。
クラマーは4位。
この3連戦では失格もあり一度も表彰台に立てなかった。
昨シーズンのヒンツェンバッハ2連戦ではヘルツルが連勝、ピンケルニッヒが連続表彰台。ザイフリーズベルガー、エダー、イラシュコらがシングル順位などオーストリア勢が自国で強さを見せつけた
1年で随分と勢力図が変わってしまったものだと驚くばかり。
それでも、この3連戦でイラシュコはすべてシングル。金曜日にはエダーが、最終日にはヘルツルが、それぞれ今季初シングルとなった。
また、列強各国ではルンビ、アルトハウス、そして驚くことにアバクモワが調子を上げてきた。
次戦はルシュノフ。
それが終われば、いよいよ世界選手権。