スキージャンプの結果を下手な写真でお伝えするブログです

2020/21 FISスキージャンプワールドカップ女子個人第5戦ヒンツェンバッハ

クリジュナル スロベニア対決を制し初優勝 高梨沙羅 失格

2021年2月5日(金)ヒンツェンバッハ(AUT)HS90/K85

6th World Cup Competition

1 ニカ・クリジュナル(SLO)237.4pt
2 エマ・クリネツ(SLO)236.6pt
3 エイリン‐マリア・クバンダル(NOR)226.6pt
 
14 丸山 希(明治大学)196.3pt
21 勢藤 優花(北海道ハイテクAC)192.7pt
31 岩渕 香里(北野建設)86.4pt
  高梨 沙羅(クラレ)失格
  伊藤 有希(土屋ホーム)予選失格

予選リザルト オフィシャル リザルト

強い高梨沙羅が還ってきた。
そう感じさせるに十分なパフォーマンスだったように思う。

2020/21 FISスキージャンプワールドカップ女子個人第4戦ティティゼーーノイシュタット

先週の試合で優勝争いを演じ2位となったときにそう書いた。
でも正直に言うと書いた時点では半信半疑だった。たまたまこの試合が上手くいっただけなのでは? 強さが還ってきたは言い過ぎでは? と。

しかし、そのパフォーマンスは女子ワールドカップとしては最大のHS142の台から最小のHS90の台に移ってもいかんなく発揮され、そんな疑念を一気に吹き飛ばしてくれた。

まずは、予選でHSを0.5m超えてトップ。
そして本戦1本目ではさらに飛距離を伸ばして91.5m。テレマークもしっかり入り、暫定2位のクリネツを4.4ptリードしてトップで折り返すことになった。

この時点で、最大の障壁であるクラマーとは11.1ptの差。この小さな台では大きな差だ。
しかも、この日はノルウェー勢にロストバゲージが発生し板が届かないというトラブルが発生。そのためにルンビーは棄権。オプセットは借り物の板で暫定14位と出遅れた。

沙羅にとって、今季初優勝へのおぜん立ては整ったかに見えた。

しかし、2本目へのインターバルの間に告げられたのは「失格」
スーツの太もも部分が規定よりわずかに大きいと判定されてしまった。
これにより、リザルトから高梨沙羅の名前は消えた。
限りなく勝利に近い位置にいたことを思うと、極めて残念な結果となってしまった。

試合の興味は、代わってトップに繰り上がったクリネツと2位のクリジュナルのスロベニア初優勝対決に移った。
飛距離は出したがテレマークが入らなかったクリジュナルに対して、テレマークは入れたが飛距離が微妙だったクリネツ。結果は僅か0.8ptでクリジュナルの勝利。

クリネツが先かクリジュナルが先か- ジャンプファン注目のスロベニア初優勝争いは、クリジュナルが先という結果に落ち着いた。
2015/16リュブノでのワールドカップデビューから71戦目にして初優勝。

それにしてもクリネツは、またも勝ちきれなかった。
リュブノではクバンダルに逆転負け。そして今日はクリジュナルに逆転負け。
今日は僚友クリジュナルの初優勝を称えたが、本音は相当悔しいだろう。

3位にはクバンダル。着地はやはり不安定だが、飛距離を出せるのは魅力。
なお、ロストバゲージに見舞われたノルウェー勢の中で彼女だけ板が届いたらしい。そういう運も持ち合わせているのか。

クラマーは4位となり、今季初めて表彰台に立てなかった。
アバクモワがTop5に入るのは、2017/18蔵王以来のこと。


さて、沙羅の失格をめぐって何やら騒がしい声がチラホラ聞こえてくる。曰く「日本つぶしだ」と。
予選で伊藤有希が同じくスーツで失格となっていることが余計にそういう声を生じさせているのだろう。

スキージャンプでは、着用するスーツ、スキー板、ブーツ等の道具にそれぞれ細かいルールが定められている。
例えばスーツであれば、実際の体のサイズよりも大きめのサイズのものを着用すれば、その部分に風を受けて凧のように浮力が生じることになる。
ルールでは、これを禁じているわけだ。

選手は事前に身体のサイズを登録しており、飛ぶ前に必ずスーツを着用した状態で登録したサイズとの差異がないかのチェックを受ける。そこで規定に合わなければ失格となる。
また、飛んだ後にも無作為に抽出された選手がチェックを受ける。そこでは、スーツの通気量などもチェックを受けることになる。

一つデータを示そう。
2019/20シーズンと、今季ここまでの個人戦の予選と本戦での失格者のデータだ。
ホントはもう数年前までさかのぼって調べたかったのだが、これぐらいあれば十分だろう

2019/20
2019.11.07リレハンメルRUNGGALDIER.E(ITA)SUIT
2020.01.11札幌QEDER.L(AUT)
RUNGGALDIER.E(ITA)
SKI LENGTH
SUIT
2020.01.11札幌AVVAKUMOVA.I(RUS)SUIT
2020.01.16蔵王QCLAIR.J(FRA)SKI LENGTH
2020.01.24ルシュノフQHARALAMBIE.D(ROU)SKI LENGTH
2020.01.31オーベルストドルフQNORSTEDT.A(SWE)SUIT
2020.02.01オーベルストドルフKUEBLER.P-L(GER)SUIT
2020.02.23リュブノQLUSSI.N(USA)SUIT
2020.03.10リレハンメルAVVAKUMOVA.I(RUS)BOOTS
2020/21
2020.12.17ラムサウQHARALAMBIE.D(ROU)SUIT
2021.01.22リュブノQSEYFARTH.J(GER)
PAGNIER.J(FRA)
BRECL.J(SLO)
LUSSI.N(USA)
SUIT
SUIT
SUIT
SUIT
2021.01.24リュブノITO.Y(JPN)SKI LENGTH
2021.01.30ノイシュタット  QRAUTIONAHO.J(FIN)
HESSLER.P(GER)
SUIT
SUIT
2021.01.31ノイシュタットMAKHINIA.I(RUS)
TIKHONOVA.S(RUS)
SUIT
SUIT
2021.02.05ヒンツェンバッハQITO.Y(JPN)
BJOERSETH.T-M(NOR)
MALSINER.L(ITA)
SUIT
SKI LENGTH
SUIT
2021.02.05ヒンツェンバッハTAKANASHI.S(JPN)SUIT

2019/20シーズンの失格者は10人。そのうちスーツの違反は6人。16試合でこの人数というのは、個人的には随分と少ない印象だ。
一方、2020/21シーズンの失格者はここまでで14人。そのうちスーツの違反は12人。今季はまだ5試合だけなのにすでに昨季の数を上回っている。

まず知ってほしいのは、失格はそれほど珍しいことではないということ。このデータで明らかなようにシーズンを通じてそれなりの人数の失格者は毎シーズン必ず生じている。
そして、特定の国や選手だけが失格となっているわけではないこともデータを見れば明らかだ。このデータを見てもまだ「日本つぶしだ」と言える人はいるだろうか。

スキージャンプは非常に繊細なスポーツだ。
スーツの股下が1cm長いか短いか、スキー板が1cm長いか短いかで飛距離が数メートル違ってきたりする。
なので、各国・各選手はルールの範囲内のギリギリを攻めてくる。

実は、沙羅は過去にもスーツの違反で失格になったことがある。

高梨沙羅はスーツ違反で失格。
工藤三郎御大の実況によると、61.0cm必要な股下が0.8cm足りていなかったとのこと。更に、前日と同じスーツだったらしい。

まぁ、測り方次第で0.8cmぐらいの誤差が生じることはあり得るのだろう。
それよりも何よりも、Jスポ元康氏によると、列強各国はスーツの”測定のされ方”も練習を重ね、それ自体も選手の技術の1つと考えられているとか。
つまり、”測り方”だけでなく”測られ方”ひとつで適法にも違法にもなるということがあり得るということ。

2018/19 FISスキージャンプワールドカップ女子個人第2戦リレハンメル

この時は、前日はOKとされた同じスーツが翌日には違反とされた。
今回も、予選ではOKとされた同じスーツが本戦では違反とされた。
まさに、”測られ方”ひとつで適法にも違法にもなってしまうわけだ。

先ほど、「ルールの範囲内のギリギリを攻めてくる」と書いた。
でも、おそらくこれは正しい言い方ではないだろう。
これでは「ギリギリセーフ」を狙っているように聞こえるが、実際にやっていることは「アウトをセーフに見せかける」ことなのではないかと言う気がするからだ。

競技の本質とは違う部分で優劣が決まってしまうみたいで、個人的には全面的に肯定はしたくないという思いはある。
でも、ライバルたちが「アウトをセーフに見せかける」以上は、日本だけ馬鹿正直にやっていては全く勝負にならない。
「アウトをセーフに見せかける」ことで「セーフ」と判定されれば、それはルール上「セーフ」なのだ。

こういう話を知って、スキージャンプにより興味を持つ方もいるだろう。
一方で、幻滅させられたという方もいるかもしれない。
私は、いちファンとして、こういう話も含めてスキージャンプを楽しんでいる。

いずれにしても、「日本つぶし」が行われたなんてことは、私はこれっぽっちも思っていないことだけは明言しておく。

スーツについて興味がある方は、この記事もぜひ読んでみてほしい。
スーツ生地には「トロと赤身」があるという話。

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