FISノルディックスキー世界選手権2025トロンハイム男子個人LH

小林陵侑が銅 2大会連続2度目のメダル獲得 ドメン・プレヴツが個人初の金 銀はヘール

Men Large Hill Individual
  • 2025年3月8日(土)
  • トロンハイム(NOR)
  • HS138/K124

Official Results

 ドメン・プレヴツ(SLO) 301.8pt
 ヤン・ヘール(AUT) 286.6pt
 小林 陵侑(TEAM ROY) 284.7pt
 
25  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 231.3pt
26  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) 230.8pt
42  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 98.0pt

予選リザルト 本戦リザルト


小林陵侑が銅メダルを獲得した。
陵侑の世界選手権個人競技におけるメダル獲得は、前回大会の個人LHでの銀メダルに続き2大会連続2度目。

シーズン序盤は腰痛や風邪にも苦しみ、また、アプローチ姿勢が安定せずマテリアルの調整にも時間を費やしたことなどから成績が出ない状態が続いた。
しかし、ジャンプ週間後に帰国し調整に充てたことで調子を取り戻し札幌大会で今季初優勝からの2連勝
自ら「楽しみ」と言える状態で臨んだ大会で、最後にしっかりと結果を出した。

2025世界選手権ジャンプ競技の締め括りに相応しい激戦だった。
追い風条件の1本目が終わった時点でトップのプレヴツと2位リンビークの差は僅かに0.7pt。
更には5.5ptのうちに6人がひしめく大混戦。

5位につけた小林陵侑は、3位のヘールとの差は僅かに0.5pt差で十分にメダルを狙える展開。
いや、それだけでなくトップとの差も5.1ptしかなく、史上6人目となる五輪金、WC総合優勝、ジャンプ週間総合優勝と合わせた「4冠」も射程圏内に入った。

より追い風が強まった2本目。小林陵侑は最高の1本を繰り出した。
137.0m。飛型点は4人が19.5を付ける完璧に近いパフォーマンス。
4位で折り返したフォルファンを抜きカレントリーダーに。

しかし、ここからの3人も凄まじかった。
ヘールとリンビークは高さのあるフライトと、ビタビタのランディングで陵侑を上回る。
そしてラストのプレヴツ。上位陣では一番強い追い風を受けたが鋭い踏切からグングンとスピードを増し、飛距離はヒルサイズオーバーの140.5mにまで達した。そして二人が20点、残る3人が19.5点を付けた美しすぎるランディング。

最高のパフォーマンスを発揮したドメン・プレヴツが見事に金メダル。
今季WCにおいてオーベルストドルフFHでの1勝を含む3つの表彰台があるが、総合順位は17位。
正直、この金メダルは予想できなかった。

ドメン・プレヴツにとっては世界選手権初のメダル。しかもそれは兄ペテルでさえ獲得できなかった金メダル。
今大会では妹のニカが個人NHとLHの2冠を達成しているので、個人4種目のうち3種目をプレヴツ兄妹が制したことになる。また、兄妹は混合団体で銀、ドメンは団体でも金を獲得している。

ニカ・プレヴツ ドメン・プレヴツ
個人ノーマルヒル 
個人ラージヒル 
混合団体 
個人ラージヒル 
男子団体 
混合団体 

2位は個人NH金メダルのリンビーク。
3位は個人NH銅メダルのヘール。
小林陵侑は4位。メダルには僅かに1.9pt届かなかった。

と、これで終わったはずだった。
実際、NHK-BSの生中継はこの結果を伝えて放送を終えている。

ところが、ここから事態は急展開。
2位リンビークと5位フォルファンにスーツの違反があり失格に。
これによりヘールが1つ繰上り銀メダルに。そして小林陵侑も1つ繰上り銅メダルに。6位以下の選手たちも2つずつ順位が繰り上がることになった。

ジャンプ競技においてスーツ違反による失格は珍しい話ではない。
しかし、今回のこの二人の失格はこうしたケースとはかなり様相が異なる。
はっきりとしたことが私自身把握しきれていない状況なので現時点ではこれ以上の言及は避けるが、かなり大きな問題に発展してしまうのかもしれない。

後味の悪さは残る。けれど、試合後に失格により順位が繰り上がるケースは時として起こる話。
小林陵侑も「ちょっと複雑ではありますけど…」と言っているものの「すごくうれしい」と語っている。
ヘールの銀にも、陵侑の銅にも、もちろん一点の曇りもない。

男子個人ラージヒル歴代メダリスト(2007~)

 
2007 S.アマン H.オリ R.ヨケルソイ
2009 A.キュッテル M.シュミット A.ヤコブセン
2011 G.シュリーレンツァウアー T.モルゲンシュテルン S.アマン
2013 K.ストッフ P.プレヴツ A.ヤコブセン
2015 S.フロイント G.シュリーレンツァウアー R.ベルタ
2017 S.クラフト A.ヴェリンガー P.ジワ
2019 M.アイゼンビヒラー K.ガイガー K.パイエル
2021 S.クラフト R.ヨハンソン K.ガイガー
2023 T.ザイツ 小林陵侑 D.クバツキ
NEW D.プレヴツ J.ヘール 小林陵侑

さて、これで今回の世界選手権ジャンプ競技の日程は終了。
WCの勢力図と大きく変わらない戦いが繰り広げられた女子に対して、男子は違う顔ぶれによる戦いが繰り広げられた印象が強い。
休む間もなくすぐにWCが再開するが、この男子の戦いの構図がWCにも持ち越されるのかどうか。

女子個人戦は残り4試合。だし個人戦は残り6試合。
果たしてどんな戦いが待っているのか。

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