スキージャンプFISワールドカップ2023/24男子個人第20戦札幌

ドメン・プレヴツが5シーズンぶりの勝利 小林陵侑2位 二階堂蓮7位

24th World Cup Competition
  • 2024年2月18日(日)
  • 札幌(JPN)
  • HS137/K123

Official Results

1  ドメン・プレヴツ(SLO) 273.6pt
2  小林 陵侑(TEAM ROY) 269.8pt
3  クリストファー-エリクセン・スンダル(NOR) 261.7pt
 
7  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 251.6pt
32  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) 92.3pt
37  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 89.0pt
43  葛西 紀明(土屋ホームスキー部) 77.7pt
46  竹内 択(team taku) 66.7pt
47  坂野 旭飛(下川商業高校) 55.9pt
   内藤 智文(山形県スポーツ協会) 予選51位
   小林 朔太郎(草津スキークラブ) 予選56位

予選リザルト 本戦リザルト


前日に、4シーズンぶりのワールドカップ出場となった葛西紀明が5シーズンぶりにポイントを獲得し、小林陵侑がクラフトと息詰まる優勝争いを演じた札幌大会。
それをテレビ中継や報道で知り駆け付けた人も多かっただろうか。この日の大倉山もたくさんの観客で賑わった。

勝ったのはドメン・プレヴツ。
今季は個人第15戦ヴィリンゲンで5位になったのが唯一のシングル順位。なので、この勝利は正直予想できなかった。
2018/19ヴィケルスン以来となる5シーズンぶりの勝利。通算6勝目。

当時のドメンは、V字に開いたスキーの間から顔が出るほどに前傾を掛ける超攻撃的なスタイル。
大倉山で見たときにも随分と驚かされたものだ。

一人だけ違う競技をしているのかと思わせるぐらいに飛行曲線が低いけど、それでいてグライダーのように斜面をなめながらヒルサイズを超えてくる姿には思わず驚きの声を上げてしまった。

2015/16 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第14戦札幌

今は随分と”大人になった”ので、かつてのようなイケイケぶりもなく、よって地を這うような低空飛行でもなくなった。
それでも空中でのスピードは相変わらずで、カメラで追うのが難しい選手であることを思い出させてくれた。

ちなみに2015/16の札幌で2位になった時は、兄ペテルとのワンツーだった。
そのペテルは今シーズンを最後に引退することを表明している。
よって、札幌でペテルの雄姿を見るのはこれが最後となるが、2日とも見事にトップ10入りを果たした。

2015/16の総合優勝者であるペテル・プレヴツは、これまで挙げた23の勝利のうち4勝を札幌で挙げている。これはプラニツァと並び自身最多。
その験がいい地で、スキージャンプ界における名門プレヴツ家の王位がペテルからドメンに継承された。
そんな象徴的な試合に思えた。

Top10 & Team Japan

1 ドメン・プレヴツ(SLO)
2 小林 陵侑(TEAM ROY)
3 クリストファー-エリクセン・スンダル(NOR)
4 シュテファン・クラフト(AUT)
5 マニュエル・フェットナー(AUT)
6 ヤン・ヘール(AUT)
7 二階堂 蓮(日本ビールスキー部)
8 ペテル・プレヴツ(SLO)
9 ロブロ・コス(SLO)
10 ベンヤミン・オストヴォル(NOR)
32 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)
37 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)
43 葛西 紀明(土屋ホームスキー部)
46 竹内 択(team taku)
47 坂野 旭飛(下川商業高校)
予選51位 内藤 智文(山形県スポーツ協会)
予選56位 小林 朔太郎(草津スキークラブ)

事態は土曜の試合の終了後に起こった。

その試合で中村直幹が腰を痛めた。
日曜の試合には出られないということで、選考基準上の次点の選手に出場を打診する電話が入った。
18時半ごろのことだったらしい。

しかし、次点の選手-内藤智文-は拠点である山形にいた。
翌日の予選開始は9時30分。仙台空港からの便は間に合わず、羽田もギリギリ。
ということで青函連絡船を使っての移動をチョイスせざるを得なかったようだ。

自ら車を運転して青森へ。
23時半のフェリーに乗り、午前3時半に函館着。
そこから再び運転して、大倉山に到着したのは朝8時頃だったらしい。

寝たのはフェリーの中での3時間程度。
練習も試技もないまま一発勝負で予選に臨む。
結果は51位。僅か0.4ptで涙をのんだ。

内藤智文は、今季初めてWC開幕メンバー入りを果たした。
派遣期間中の全8試合にエントリーし6試合で予選を通過。
ポイント獲得には至らなかったが『選考基準』により次の派遣にも選ばれるものと思われた。

しかし、次の遠征の派遣選手リストに何故か内藤の名前はなかった。

次のチャンスはコンチネンタルカップ札幌3連戦だった。ここで日本勢総合3位までに入ればWC札幌大会の代表権が得られる。
しかし、4位におわり道を絶たれた。

そうした状況下で飛び込んできたのが土曜日の電話だ。
「地をはってでも出ますよ。ワールドカップは私にとってそういう舞台です」

表彰式

1本目が終わって小林陵侑は4位。そしてその一つ上には二階堂蓮。
二階堂蓮の初表彰台が見られるのか⁉ 日本勢二人の表彰台もあるかも⁉ ひょっとしてワンツーもあるかも⁉
大倉山は沸きに沸いた。

2本目。
1本目より向かい風が強まったことで、二階堂蓮は板が上がり過ぎで前に進まないという今季の悪い癖が出たとのこと。
表彰台はお預けとなったが、自己最高位を一つ更新して7位。

小林陵侑はトップスコアを出しドメンを猛追したが僅かに及ばず2戦連続の2位。
陵侑の2位は今季9度目。
札幌大会では7度目表彰台で6試合連続となる。(2021年と2022年は開催なし)

小林陵侑の札幌大会における表彰台

2019.01.27(日) 3位
2020.02.02(日) 3位
2023.01.20(金) 優勝
2023.01.21(土) 3位
2023.01.22(日) 優勝
2024.02.17(土) 2位
2024.02.18(日) 2位

前日は日本国内のみならずヨーロッパまでをも沸かせた葛西紀明。
この日も予選を突破し通算最多出場記録を571試合に更新。
2本目に進むことはできなかったが、「(WC出場を)励みにまた頑張っていける」「60歳までやりたい」と意気揚々。

最年少の坂野旭飛も2試合連続の予選突破。
ポイント獲得はならなかったが、将来のエース候補は大きな経験を得ることができたはずだ。

ピックアップ ギャラリー

かつてはヤンダやサカラなどの名選手を輩出したチェコ。
しかし今季は、事実上コウデルカしかいなくなってしまったような状態。
札幌でも勝ったことのあるコウデルカには今後も頑張ってもらいたい。チェコチームの灯を絶やさないためにも。

そんなコウデルカをはじめとして、遠い遠いSapporoまで遥々やってきてくれた海外選手たちに敬意を表し、下手な写真ではあるが例によって何人かをピックアップしてみた。

11 ダニエル・チョフェニック(AUT)
12 カール・ガイガー(GER)
13 ニコ・キトサホ(FIN)
15 マリウス・リンビーク(NOR)
20 アレックス・インサム(ITA)
21 ロマン・コウデルカ(CZE)
24 ヨハン-アンドレ・フォルファング(NOR)
31 キリアン・バイエル(SUI)
33 シュテファン・ライエ(GER)
34 ピウス・パシュケ(GER)

WC個人総合順位

表彰式終了後に、この日の観客数が3,100名だとアナウンスされた。
手元の記録によると、2012年の日曜が3,500人。2019年の土曜が3,400人、日曜が3,800人だったとある。(いずれも当時、北海道新聞が報じた数字)

しかし、私が観に行き始めた2010年以降では、見た目にも体感的にも今年が一番多かったように思えるけど、どうでしょう。

いずれも日曜日。試合中の最も観客が多かったであろう時間帯
いずれも日曜日。1本目が始まる直前あたりの時間帯。よってこの後もう少し観客は増えたはず
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