スキージャンプFISワールドカップ2024/25男子個人第11戦オーベルストドルフ

第73回ジャンプ週間開幕 今季初優勝のクラフトが先制 オーストリアは2試合連続の表彰台 

13th World Cup Competition
  • 2024年12月29日(日)
  • オーベルストドルフ(GER)
  • HS137/K120

Official Results

1  シュテファン・クラフト(AUT) 335.1pt エンバッハ―
2  ヤン・ヘール(AUT) 331.6pt トルンツ
3  ダニエル・チョフェニック(AUT) 323.6pt ラーソン
   
17  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 290.3pt 小林陵侑
18  小林 陵侑(TEAM ROY) 286.8pt 中村直幹
23  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 280.3pt 内藤智文
36  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 128.9pt コス
38  小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部) 125.7pt スンダル
47  内藤 智文(山形県スポーツ協会) 116.0pt 二階堂蓮

予選リザルト マッチアップ 本戦リザルト


第73回を迎える伝統のジャンプ週間が開幕した。
年末年始にドイツとオーストリアの4つの台で繰り広げられるKO方式による特別な舞台。
4試合合計の最高得点者には、総合優勝者の証である金鷲のトロフィーと10万スイスフラン(約1,750万円)の賞金、そして何よりもオリンピックの金メダルに匹敵すると言われる名誉が与えられる。

28日の予選ではオーストリアが5位までの上位を独占。これに今季開幕からの主役であるパシュケ、最高のシーズンを送るデシュバンデン、復調傾向にあるフォルファンが続いた。
本戦も、おそらく彼らが表彰台争いを繰り広げることになるであろうことがうかがえた。

本戦もオーストリア勢が違いを見せつけた。
クラフトが今季初優勝。今季2勝のヘールが2位、同じく2勝のチョフェニックが3位。
オーストリアは並びこそ違うが、同じ3人が一週間前のエンゲルベルクに続く2試合連続の表彰台独占をやってのけた。

2014/15ジャンプ週間の覇者であるクラフト。
その時も初戦オーベルストドルフで勝利。これがワールドカップでの初勝利。
そして、この時に最後まで総合優勝を争ったのがハイベック。同国対決だった。
2016/17オーベルストドルフでも勝利しているが、この時の総合優勝はカミル・ストッフ。クラフトは6位だった。

エンゲルベルクでは10位と18位だったパシュケ。そこまでの8試合で5勝を含む7回の表彰台と圧倒的な強さを誇っていたが果たして勢いは止まってしまったのか。
この試合は、その答え合わせとなる試合だったが、表彰台まで2.3pt差の4位。勢いは決して止まってはいないようだ。

ドイツ勢のジャンプ週間総合優勝は、初のグランドスラム(4戦全勝)を成し遂げた2001/02のスヴェン・ハンナバルトまで遡る。
今季のパシュケには、23年ぶりの金鷲獲得にドイツ国民の大きな期待がかかるが、そのプレッシャーは如何ほどのものか。

表情を見る限りは柔和で笑顔も見られ、この舞台を楽しんでいるように見える。
ただ、オーストリア包囲網に一人で立ち向かうのは厳しい。
この日はガイガーがラッキールーザーながら上位争いに加勢してくれたが、ヴェリンガーやライエにもオーストラリア勢を止めるための上位争いが求められる。

内藤智文がCOCでピリオド総合3位となったことで、ジャンプ週間の国枠が1つ増えた日本。
これにより内藤智文は自らジャンプ週間初エントリーをつかみ獲っただけでなく、小林朔太郎も初の海外WCに引き上げることとなった。

その内藤は、自身にとって4つの台のうちオーベルストドルフを最難関と捉えていたようだが、なんと予選を20位で通過。
ところが本来はもっと上位で予選通過できるであろう二階堂蓮が31位だったためにKOラウンドでマッチアップすることとなってしまった。
予選の感触を維持したかったためか試合前の試技は棄権。しかし、本戦では予選のようなパフォーマンスを発揮できずWC初ポイント獲得はならなかった。

二階堂蓮は、1本目こそ29位と振るわなかったが、2本目ではこの日の最長不倒となる142.0mを繰り出し雄たけびを上げた。
最終結果は23位ではあるものの2本目だけ見れば10位。順位云々ではなく久々に出た会心の一発が次戦に繋がるだろう。

中村直幹にも会心の一発が出た。
全体で5つあった同国対決のうち不運にも日本が二つ。中村は小林陵侑との対決に敗れはしたもののラッキールーザーの2番手として2本目に進出した。
そこで繰り出した140.5mは2本目で9位の得点。笑顔がはじけた。

ディフェンディンクチャンピオンの小林陵侑は18位。
1試合で3人がポイント獲得するのは、第5戦ヴィスワ以来となる今季4度目。
4人目の壁がなかなか破れないのはもどかしい。
次戦に期待したい。

4Hillsトーナメント暫定順位

1  シュテファン・クラフト(AUT) 335.1pt
2  ヤン・ヘール(AUT) -3.5
3  ダニエル・チョフェニック(AUT) -11.5
4  ピウス・パシュケ(GER) -13.8
5  ヨハン-アンドレ・フォルファン(NOR) -16.2
6  グレゴール・デシュバンデン(SUI) -16.5

4HT総合順位

WC個人総合順位


12/27
FISコンチネンタルカップ第5戦エンゲルベルク
4  小林 潤志郎(Wynn.)
8  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)
13  葛西 紀明(土屋ホーム)  
27  竹内 択(team taku)  

リザルト

12/28
FISコンチネンタルカップ第6戦エンゲルベルク
9  小林 潤志郎(Wynn.) ピリオド総合4位
14  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)  
20  竹内 択(team taku)  
23  葛西 紀明(土屋ホーム)  

リザルト COC総合 WRL

前述の通り、内藤智文がCOCでピリオド総合3位となったことでジャンプ週間の国枠が1つ増えた日本。
これにより内藤智文がワールドカップメンバーに昇格しただけでなく、『選考基準』により小林朔太郎も昇格。代わって小林潤志郎がWCチームを外れCOCチームに編入された。

2減1増により、COCチームは一枠が空いたのだが、そこには佐藤幸椰が選考された。
この選考は選考基準には明記がないが、「※状況に応じて、コーチ会議を行い、ヘッドコーチが最終決定する」という文言がある。

佐藤幸椰は、直前に開催された名寄2連戦で盤石ともいえる2連勝を遂げた。
この2連戦は、COC札幌大会の出場権を懸けた選考会に出場できる10名を選出するための大会でもあった。
その意味からは上位10名の中に入りさえすればひとまずはOKであって、優勝することまでは求められていない。
しかし今回、佐藤幸椰がCOCに選考されたのは名寄の成績があってのことであろう。

昨年のCOC札幌大会の選考をめぐって佐藤幸椰はSNSで「口酸っぱく言います. “良い準備をしましょう”」と、おそらくは若手に向けて苦言とも取れる思いを綴った。
国内の選手が国際試合に選考されるチャンスは限られている。しかも、その少ないチャンスは天候などの要素によっても奪われる。いつ何時チャンスが巡ってくるかわからない。でもそのチャンスを掴むのは良い準備をした者だけ。

幸椰は選考基準には直接は明記されていない形でこのチャンスを掴んだ。
2023年9月のCOCオスロ以来1年3ヵ月ぶりの海外派遣。8位と14位の好成績。
自らの言葉をしっかりと体現して見せた。

そして、小林潤志郎も、いつか来るであろうチャンスの為に良い準備を怠らなかった。
ワールドカップ開幕メンバーとして10試合の舞台を踏んだが最高位は37位でノーポイント。
辛酸をなめた。

選考基準によりチームを外れCOCに舞台を移したが、ここでようやく霧が晴れた。
1戦目で4位。2戦目は9位。エンゲルベルクの2試合だけで構成されるこのピリオドで総合4位。
いったい何があってのこの変貌なのか。

プレッシャーから解放されたということがまず挙げられるのかもしれない。
しかもここには葛西紀明、竹内択、伊東大貴コーチといった、かつて一緒にヨーロッパを転戦していた先輩たちがいる。昨季までチームメートだった佐藤幸椰もいる。
そうした環境にリラックスできたのではないだろうか。先輩たちからは何らかのアドバイスもあったのかもしれない。

小林潤志郎ピリオド総合4位ではあるが、上位3名は以下の通り。

  • 1. 160pt C.アイグナー(AUT)
  • 1. 160pt M.フェットナー(AUT)
  • 1. 160pt F.ホッフマン(GER)
  • 4.  79pt 小林 潤志郎(JPN)

COCピリオド総合3位までの選手の国に次のWCピリオドに1枠が与えられるが、「1ヵ国のクオータは最高6選手に制限する」(ジュニア世界選手権のメダル枠は別)ためオーストリアに2枠は与えられない。
なので、4位の日本に1枠が与えられるということになるようだ。

よって、日本は現在のピリオド(ジャンプ週間の4試合)に続いて、次のピリオド(ザコパネとオーベルストドルフFH)も6枠で臨むことになる。

オーストリア、ドイツ、ノルウェーなどの強豪国は、かねてから戦略的にCOCによる1枠増を使ってきている。
日本は地理的ハンデがあってCOCに選手を派遣することができていない。
でも派遣すれば派遣したなりに良いことがあることが実証された。
もちろん当たり前に枠が獲れるわけではないが、それができる力を持っている選手がいるのであれば、これを使わない手はないだろう。

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