第66回HBCカップジャンプ競技会

4時間にわたる紆余曲折を経て悪天候によりキャンセル

全日本スキー連盟A級公認
  • 2024年1月8日(月・祝)
  • 札幌市 大倉山ジャンプ競技場
  • HS137/K123

女子組

  • 悪天候によりキャンセル

男子組

  • 悪天候によりキャンセル

WC遠征から帰ったばかりの伊藤有希、勢藤優花、一戸くる実が参戦。
HBCカップはWC日本シリーズの狭間で開催されることが多いためスキップする選手も多い中、「日本にいる限り、出ないという選択肢はない」(昨年のHBCカップ)と、伊藤有希はいつも出場してくれる。

このように国内戦に出続けるのはスキージャンプを普及させる狙いがある為とのこと。
伊藤有希のこうした姿勢は、もっともっと評価されていい。

しかし、そんな伊藤有希の心意気を暴風雪が阻んだ
大会は4時間にわたる紆余曲折を経てキャンセル。
HBCカップのキャンセルは2007年第49回大会以来となる5回目。

ドキュメント

  • 天気予報では朝から15時ごろまで雪。
    11時ごろから風が強まり、12時台には6m/sの予報。
  • 8:15頃
    現地では大粒でやや重めの雪がワッサワッサと降る。
  • 8:35頃
    予定通り9:00に試技を開始する旨のアナウンス。
  • 8:50頃
    悪天候のため30分ディレイのアナウンス。
  • 9:25頃
    11:00からバーン整備を行い、12:00から試技なし1本勝負を行う旨のアナウンス。
  • 11:00頃
    バーン整備が始まる。
  • 11:45頃
    15分早く開始されることになっていたようだが、その案内を聞き逃していた。
    朝の時点より深くなっている雪をかき分けながら何とかぎりぎりで上に登った。
  • 11:50頃
    コンピューターの不具合により試合は始まらない。
    復旧の目途も立たないとのこと。
  • 12:18頃
    12:25を目途にまずは女子の試技を行うとアナウンス。どうやらそこでコンピューターの様子を見たいらしい。その後すぐに女子1本目を行うとのこと。なお、男子については後ほどアナウンスするとのこと。
    「あと6分ほどでスタートです」とアナウンスされた時点でパッカーさんはまだ90m地点にいた。パッカーさんが通り過ぎないことにはK点とHSのラインも引けない。運営はかなり混乱していたであろうことが窺える。
  • 12:28頃
    女子試技開始。12:42に終了。
  • 12:50頃
    女子1本目開始。
    4人目の選手が転倒。バーンにはかなり雪が積もっており足を取られたように見えた。
    バーンの整備のために中断する旨のアナウンス。パッカーさんたちがリフトで登り始める。
  • 13:15頃
    全ラウンドをキャンセルする旨のアナウンス。

試技を飛んだ伊藤有希でさえ「怖かった」というほどなので、若い選手たちにとってはやはりかなり危険な状況だったであろう。
バーン整備を行っても雪はまた降るのでイタチごっこ。14:55開始のテレビ中継のタイムリミットも迫り、中止はやむを得なかったかと。

勢藤 優花(北海道エネルギースキー部)
小林 諭果(CHINTAIスキークラブ)
一戸 くる実(CHINTAIスキークラブ)
佐藤 柚月(札幌日大高校)

逆に、もっと早く中止を判断すべきだったという意見もあろう。
テレビ中継のために是が非でも開催しようという意向が働いたと見る向きもあるようだ。

そうした意向が全くなかったとは言い切れないが、今回はそういうこととは事情が違ったと思われる。

前回のブログに書いた通り、HBCカップと、その直後に行われる選考会の結果をもとにコンチネンタルカップ(COC)札幌大会の代表10名が決まることになっている。
実際は既に5名の選手が当確となっているので、残り5枠をめぐる争いが繰り広げられるはずだった。

COC札幌大会は、大倉山で1月20日(土)と21日(日)に計3試合が開催され、その結果によってワールドカップ札幌大会の代表が決まる。
そして、WC札幌大会での成績如何によっては、最終戦プラニツァまでのWC派遣選手として選考されることになる。

つまり、国内男子選手たちにとって、HBCカップと直後の選考会は今季のWCに出場するためのラストチャンスとなる。
また、WCポイントを獲得したことのない選手にとってはCOCで1ポイントでも獲得しておけば少なくとも来シーズンまでのWCのエントリー資格が得られるし、何よりもCOCに出られるだけでも名誉だ。

大げさに聞こえるかもしれないが、この日の試合は選考対象になっている選手たちにとってはまさに人生が懸かる試合だったといえる。
なんとしてでも開催しようと運営が奮闘したのは、そういった背景があってのことだったと私はそう理解している。

実は、この日は悪天候が予想されていたことから、前日(7日)の公式練習の際にCOC選考のための予備飛躍を1本だけ行っていた。
結果として、その1本によりCOC代表が決まることになった。

  • の基準により… 内藤智文
  • の基準により… 坂野旭飛、西田蓮太郎、中村正幹
  • の基準により… 佐藤慧一
  • の基準により… 小林朔太郎、佐藤幸椰、藤田慎之介、山元豪、葛西紀明

※ 1/9時点では公式発表はされていないので「内定」です。

まずは選考された選手たちに心からおめでとうを言いたい。
つかみ取ったチャンスを精一杯生かしてほしい。

一方で、この日に逆転を懸けていた選手たちには掛ける言葉が見つからない。
そもそも、選考対象者を決める名寄の2連戦は2試合目がキャンセルとなった。よって、2試合目での逆転を狙っていた選手にとってはそこでまず道が閉ざされた。
そして今回の件だ。

天候に左右されるスポーツなので仕方がないとはいえ、これで人生が変わってしまうのだとしたら厳しすぎるし切なすぎる。

キャンセルのアナウンスが流れた途端に、雪も風も止み晴れ間が差してきたことはなんとも皮肉だ。

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