伊東大貴が有終の美 茂野美咲、平山友梨香らが涙の引退
2022年3月19日(土)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123
女子組(基本ゲート1本目28、2本目30)
1 | 小林 諭果(CHINTAIスキークラブ) | 192.4pt |
2 | 中山 和(下川商業高校) | 186.4pt |
3 | 一戸 くる実(N高等学校) | 182.0pt |
男子組(基本ゲート1本目18、2本目17)
1 | 伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部) | 249.2pt |
2 | 渡部 弘晃(東京美装グループスキー部) | 237.6pt |
3 | 岩佐 勇研(東京美装グループスキー部) | 235.5pt |
4 | 渡部 陸太(東京美装グループスキー部) | 231.1pt |
5 | 竹花 大松(土屋ホームスキー部) | 225.9pt |
6 | 栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部) | 219.1pt |
伊東大貴の今シーズン限りでの現役引退が発表されたのは3月6日。
オリンピックシーズンでもあるので覚悟はしていた。
いや、2017年11月ヴィスワでの選手生命を脅かすほどの負傷を負った転倒と、その怪我を押して出場した2018年2月の平昌オリンピック以降は、いつ辞めてもおかしくないとずっと心の準備はしてきたつもり。
けれど、実際にこの報に接すると想像していた以上の大きな感情が込み上げた。
その気持ちは言い表しようもないのだけれど、敢えて言えば「喪失感」だろうか。
私のジャンプファン歴は15年程度に過ぎないが、その最初から伊東大貴がいた。
来シーズンからその姿が見られなくなることに未だ現実感が乏しい。
大貴は今年2月の北京オリンピック後もワールドカップを転戦していたが、最後の雄姿を見たいという家族のリクエストに応え国内最終戦であるこの試合に出場。
そして、見事に優勝した。
ファンの一人としても、このように最後の雄姿を目に焼き付ける機会を作ってくれて本当に良かったと思う。
この後は、もう一度欧州に戻り24日からのWCプラニツァ大会に出場。
オリンピック代表に選ばれたシーズンに、ワールドカップ代表チームの一員のまま引退することとなる。
なんと鮮やかな幕切れだろうか。
男子組
女子組は、今季を象徴するような結果となった。
小林諭果は、今季5勝目。
中山和は、今季4度目の表彰台。
一戸くる実は、今季6度目の表彰台。
引退試合となった茂野美咲は4位。
平山友梨香は5位。
津志田雛は6位。
女子組
表彰式
引退試合で見事に優勝を飾った伊東大貴。
私が観戦してきた中では、2014年大会の小浅星子(ライズJC:当時)と2015年大会の細山周作(雪印メグミルクスキー部:当時)が伊藤杯ファイナルでの引退試合で優勝を成し遂げている。
雪上シーズンの表彰台(女子)
1位 | 2位 | 3位 | |
名寄ピヤシリ | 宮嶋 林湖 | 葛西 春香 | 小林 諭果 |
名寄吉田杯 | 葛西 春香 | 中山 和 | 小林 諭果 |
HBCカップ | 小林 諭果 | 一戸 くる実 | 中山 和 |
HTBカップ | 葛西 春香 | 一戸 くる実 | 小林 諭果 |
STVカップ | 小林 諭果 | 茂野 美咲 | 葛西 春香 |
TVh杯 | 小林 諭果 | 宮嶋 林湖 | 葛西 春香 |
雪メグ杯 | 小林 諭果 | 葛西 春香 | 櫻井 梨子 |
カツゲンカップ | 中山 和 | 一戸 くる実 | 小林 諭果 |
札幌五輪記念 | 佐藤 柚月 | 茂野 美咲 | 齋藤 優 |
宮様ノーマル | 齋藤 優 | 一戸 くる実 | 茂野 美咲 |
宮様ラージ | 茂野 美咲 | 小林 諭果 | 一戸 くる実 |
伊藤杯ファイナル | 小林 諭果 | 中山 和 | 一戸 くる実 |
雪上シーズンの表彰台(男子)
1位 | 2位 | 3位 | |
名寄ピヤシリ | 渡部 弘晃 | 岩佐 勇研 | 池田 龍生 |
名寄吉田杯 | 岩佐 勇研 | 渡部 弘晃 | 内藤 智文 |
HBCカップ | 岩佐 勇研 | 栃本 翔平 | 渡部 弘晃 |
HTBカップ | 内藤 智文 | 岩佐 勇研 | 葛西 紀明 |
STVカップ | 二階堂 蓮 | 岩佐 勇研 | 渡部 陸太 |
TVh杯 | 岩佐 勇研 | 二階堂 蓮 | 渡部 弘晃 |
雪メグ杯 | 葛西 紀明 | 竹花 大松 | 宮﨑 敬太 |
カツゲンカップ | 二階堂 蓮 | 清水 礼留飛 | 岩佐 勇研 |
札幌五輪記念 | 渡部 陸太 | 岩佐 勇研 | 二階 堂蓮 |
宮様ノーマル | 渡部 陸太 | 二階堂 蓮 | 岩佐 勇研 |
宮様ラージ | 渡部 弘晃 | 竹花 大松 | 渡部 陸太 |
伊藤杯ファイナル | 伊東 大貴 | 渡部 弘晃 | 岩佐 勇研 |
引退式
オリンピックシーズンということもあって、いつもより多い11人の選手が青野さんのラストコールに送られることとなった。
- 津志田 雛(下川商業高校)
- 黒川 龍(札幌大学)
- 斉藤 祐輝(東海大学)
- 佐藤 友星(日本大学)
- 大井 栞(早稲田大学)
- 傳田 英郁(あさい農園スキークラブ)
- 馬淵 点(イトイ産業スキーチーム)
- 曽根原 郷(東京美装グループスキー部)
- 平山 友梨香(信託ホームスキー部)
- 茂野 美咲(CHINTAIスキークラブ)
- 伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部)
人数が多かったせいかラストフライトは行われなかった。
また、大井栞は名寄ピヤシリ大会で負った怪我により試合には出場せず、傳田英郁はテストジャンパーとしての参加だった。
27年間の競技生活に幕を閉じた茂野美咲。
あっという間の21年間だったと語った平山友梨香。
いずれも日本女子ジャンプ界の礎を築いてきた選手。
ジャンプを見始めた頃に最初に好きになったのが彼女たち国内の女子選手。ブログをやっている選手が多く、人となりが知れて魅かれていった。
その選手たちが、これでほぼいなくなってしまい、最年長は岩渕香里、伊藤有希、小林諭果らの世代となる。
一時代が確実に終わった。とても寂しい。
涙の挨拶となった茂野と平山に対して伊東大貴は晴れやかだった。
挨拶ではいつものようにジョークを交え、涙を見せるような事はなかった。
試合前に記者会見を行い「悔いなく、すっきり終えられる」と語ったらしい。
個人的にはソチオリンピックの団体銅メダルの表彰式での笑顔が最も印象に残っている。
大貴自身は、ワールドカップで挙げた4勝のうちの最初の勝利である2012年の札幌大会を挙げている。
もちろん私にとっても、忘れられない試合だ。
長野オリンピック後の低迷期に日本ジャンプ界を支えたのは紛れもなく伊東大貴だった。
ソチ以降は葛西紀明と共に両輪となってチーム・ニッポンを牽引した。
怪我に泣かされた競技人生ではあったけれど、素晴らしい選手であったことに疑いはない。
今後は雪印メグミルクスキー部でコーチを務めるとのこと。
引退式では「チームの垣根を超えて何でも聞いてください」と後進たちに呼びかけた。
きっと立派な指導者となることだろう。
日本にはまだまだ伊東大貴の力が必要だ。
引退する全ての選手に僭越ながら「ありがとう」の言葉を贈りたい。
そして、新たなステージでの益々のご活躍を祈念いたします。