2019/20 FISスキージャンプワールドカップ男子団体第2戦クリンゲンタール

日本 団体戦で今季初表彰台 優勝はポーランド

2019年12月14日(土)クリンゲンタール(GER)HS140/K125

7th World Cup Competition

1 ポーランド 968.7pt
ジワ、ヴォルネ、ストッフ、クバツキ
2 オーストリア 943.7pt
アッシェンバルド、シュリーレンツァウアー、ハイベック、クラフト
3 日本 911.0pt
佐藤幸椰、伊東大貴、小林潤志郎、小林陵侑
 
4 ノルウェー  
5 スロベニア  
6 ドイツ  
7 スイス  
8 ロシア  

オフィシャル リザルト


 

参加国中で唯一、個人戦優勝経験者4名を揃えて臨んだ日本。
試合を終えたばかりの高梨、伊藤らの女子チームが見守る中、ノルウェーとの激しい攻防の末に昨季オスロでの2位以来となる表彰台を手中に収めた。
4人はそれぞれに仕事をしっかりと果たしたが、中でも小林陵侑に本来の姿が戻ってきたことが大きい。

 

でも上の2チームに勝てる状態かというと、まだ少し差がある気がする。とにかくポーランドもオーストリアも強かった。
あとはドイツに結果が出ないのはやはり気になるところ。
昨季までポーランドのコーチだったホルンガッハーが指揮を執るが、その効果が表れるのにはもう少し時間が必要なのかも。

 

荒れた条件ではあったけれど、昨季あたりからたまに見られる雑なシグナルコントロールになることなく風待ちのレッドを出していたし、またWFもそれなりに機能していたようにも見える。
天候の荒れ具合に比べると試合が荒れたという印象はなく、現状の実力通りの結果が出た好ゲームだったように思う。

 

いずれにしても、最後まで試合ができてよかった。

 


 

9月5日に全日本スキー連盟から発表された『2019/2020 FIS ワールドカップ派遣選考基準』を、いま改めて見てみると下記の記載がある。

①②補足 WCエンゲルベルグ大会
 選考基準:②の遠征参加選手と①から最大2名が参戦

①は、WC開幕メンバーを指す。
②は、COC開幕メンバーを指す。

 

この選考基準を素直に読むと、エンゲルベルグにはまず②のCOC組をエントリーし、加えて①のWC開幕メンバーから最大2名をエントリーするということになる

 

「最大2名」と書いてあるのは、この選考基準が発表された9月5日時点でWC開幕ピリオドもCOC開幕ピリオドもクォーター数が確定していなかった為と思われる。
私の認識に誤りがなければ、WC開幕ピリオドのクォーター数はGP最終戦(10月5日)終了後に決まるはず。
COC開幕ピリオドのクォーター数はCOC最終戦(9月29日)終了後に決まるはず。

 

で、WCは「6」、COCは「5」と決まった。
これを受けてSAJから発表された派遣メンバーは下記の通り。(表はSAJのサイトから転載させていただいた)

第5次遠征メンバー

派遣期間 2019年11月20日(水)~12月17日(火)
派遣先  ヴィスワ(ポーランド)、ルカ(フィンランド)、
 ニズニ・タジル(ロシア)、クリンゲンタール(ドイツ)
派遣目的 ワールドカップ参戦
派遣選手  小林 陵侑 土屋ホームスキー部
 小林 潤志郎 雪印メグミルクスキー部
 佐藤 幸椰 雪印メグミルクスキー部
 伊東 大貴 雪印メグミルクスキー部
 葛西 紀明 土屋ホームスキー部
 中村 直幹 東海大学札幌スキークラブ
スタッフ  宮平 秀治、吉田 千賀、栗田 俊介、スティアン・スキネス、
 長谷部 大貴、ロジョレ・ザガー
第5次ジャンプ遠征 | 公益財団法人全日本スキー連盟
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第6次遠征メンバー

派遣期間  2019年12月3日(火)~12月24日(火)
派遣先  ヴィカースンド(ノルウェー)、ルカ(フィンランド)、
 エンゲルベルグ(スイス)
派遣目的  コンチネンタルカップ及びワールドカップ参戦
派遣選手  佐藤 慧一 雪印メグミルクスキー部
 竹内 択 飯山市スキークラブ
 栃本 翔平 雪印メグミルクスキー部
 岩佐 勇研 東京美装グループスキー部
 伊藤 謙司郎 雪印メグミルクスキー部
スタッフ  作山 憲斗、栗田 俊介、アンドレアス・グルーバー
第6次ジャンプ遠征(12/16 選手追加) | 公益財団法人全日本スキー連盟
...

 

ここにもはっきりと、第6次遠征は「コンチネンタルカップ及びワールドカップ参戦」と明記されており、ワールドカップの派遣先として「エンゲルベルグ」とも明記されている。
一方で第5次遠征にはエンゲルベルクの文字はない。
つまり、少なくとも第6次遠征については9月5日発表の『選考基準』通りの派遣が予定されていると見て取れる。

 

このように、成績や調子に関係なく前もって選手を入れ替えることを決めてしまう『選考基準』って果たしてどうなの?
…という点については後述するとして-

 

個人的には、『選考基準』として定めた以上は定めたとおりにやるのは当然のことと思う。
「一度決めたことであっても状況に応じて柔軟に対応すべきだ」という意見もあるようだが、 さて、ではそれを第6次遠征メンバーの前でも言えるだろうか。

 

つまり、「WC組の成績が思っていたよりも良いので、COC組のエンゲルベルク派遣の話はなかったことにします」ってCOC組に対して今更言えるかということ。
前述の通り彼らは「コンチネンタルカップ及びワールドカップ参戦」という目的を明示されたうえで派遣されている。
にもかかわらず、それを”なかったこと”にしてしまうような運用がなされてはそれこそ大問題。そんなことは絶対にあってはならないはずだ。

 

問題はそこではなくて『選考基準』にある「①から最大2名が参戦」の部分だ。
第6次遠征メンバーは5名。これに対してWCクオーター数は6枠。
つまり、WC組から1名が参戦できる余地がある。
この「1枠」をめぐって何やらちょっとした騒動になっているようだが…

 

第5次遠征メンバー全員が帰国を望んでいるというのなら話は別だが、少なくとも出場を熱望している選手がいるなら、基準通りに「①から最大2名が参戦」を適用しWC組から1名を参戦させるべきではないか。
もし参戦希望者が複数いるなら優先権はより上位にいる選手にあってしかるべきだろう。

 

なぜ要望は通らないのか? 他の誰かを参戦させるのか? それとも枠を一つ余らせるのか? そしてそれらを決めるのは誰なのか?
現場のコーチの判断なのであれば選手もそれに従うべきだと思うし実際に従うだろう。だから、おそらくこれは現場の判断ではないのだと思われる。
憶測にすぎないのでこれ以上の言及は避けるが、いずれにしても枠を一つ余らせるのだとしたらそれは愚策としか思えない。

 

次に、そもそも論。
このように、成績や調子に関係なくWC組とCOC組の入れ替えを行うことこを、前もって『選考基準』に定めてしまうことは果たしてどうなのか?
ちなみに『選考基準』では、エンゲルベルクの他にルシュノフでも選手を総入れ替えすることがあらかじめ定められている。

 

なお、昨年の『2018/2019 FIS ワールドカップ派遣選考基準』には同様の定めは見当たらないし、実際に陵侑、潤志郎、大貴、葛西は全戦にエントリーされている。(ただし、葛西のみ最終戦は上位30位に入れずにノーエントリー)

 

では、なぜ今季は入れ替えを行うことにしたのか?
国内戦への配慮? しかし、エンゲルベルクもルシュノフも国内のA級公認試合とは日程的にバッティングしていない。
とすると、例えば昨季の大貴と潤志郎の発言を考慮したとか?

さて、Jスポでは今年も札幌大会時に収録した選手のインタビューを紹介してくれた。
興味深かったのは、潤志郎と大貴がいずれも調整の時間が欲しいという趣旨のことを言っている点。
思えば陵侑が札幌大会前にやや低迷したのも、連戦による疲れからくるものだった。

日本に帰すかどうかは別としても、じっくりと調整する時間と場所をシーズン中とはいえ用意してあげる必要はあると思う。
事実、アイゼンビヒラーはジャンプ週間前にリレハンメルで合宿をしたことが、ジャンプ週間での好成績につながったとインタビューで答えていた。

日本は地理的にどうしても難しい面があるけど、もう少し選手の入れ替えを柔軟に考えてもいいような気がする。フル入れ替えするんじゃなくて必要に応じて一人でも二人でも。
他国はけっこうシーズン中にメンバーの入れ替えを行っているよね。

2018/19 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第18戦オーベルストドルフ

 

ただこれは、あくまでも選手の成績と調子を見て臨機応変に対応すべきということを大貴も潤志郎も(そして私も)言っているのであって、あらかじめ定めてあった時が来たら成績も調子も無視して機械的に入れ替えを行えという趣旨のものではないだろう。

 

過去にも国内戦出場の為や、札幌大会や世界選手権または五輪に向けての調整の為に、WCをスキップすることは普通に行われてきた。
時にはそういう対応は必要だとは思うし、さらには不調の選手の調整の為や他の選手に出場機会を与えるという意味でのスキップや入れ替えも必要となることはあるだろう。

 

ただし、あくまでもこれらは状況に応じて行うべきであって、成績や調子に関係なくあらかじめ行うと定めてしまうと、逆にその定めが足枷となりかねない。
今季の『選考基準』では、仮にルシュノフの時点で陵侑が総合優勝を僅差で争っていたとしても”当初の予定通り”入れ替えを行わなければならないわけで、そんなことになれば日本は世界の笑いものとなるだろう。

 

ところで-
2018/19以前はというと、私の知る限りではこのような『選考基準』は存在しないか、あったとしても公表されていなかったはず。

しかし、今までベールに包まれていた選考基準が明確に示されたという点は大いに評価したい。

2018 FISグランプリジャンプ 男子個人第5戦白馬

 

これまでブラックボックスだった選考基準が示されたことは、ホントに大きな前進だったと思う。なので『選考基準』の作成・公表は今後も続けてほしいと願っている。
でも、現状の『選考基準』の文言はやや言葉足らずで、なぜそうなのかという部分が分かりにくかったり、異なる解釈が入り込む余地があるように思える。
今回の入れ替えの件然り、先日記事にした全日本選手権LHの件然り。

 

だから『選考基準』に関する当ブログの今回の記事も過去の記事も、ひょっとして解釈の違いや根本的な認識違いによって誤ったことを書いてしまっているのではないかと正直ヒヤヒヤしている。
来季の『選考基準』は、選手にとってもファンにとっても、もう少しわかりやすく、かつ、納得性のある内容となることを切に願う。

 

いずれにしても、SAJも他のスキー連盟もファンに対する情報発信が少なすぎるように思える。
それが、変な誤解や憶測を招く原因となっているのではないだろうか。
例えばこの時とか、あるいはこの時とか、さらにはこの時とか。

 

あぁ、また長く書きすぎてしまった…
最近は文句ばっかり書いているような気がする。
ごめんなさいね。
これからは楽しい話を書くように心掛けるね。

 

コメント

  1. ノルッキーさん、どうもです。
    久しぶりにコメントさせていただきます。

    「最近は文句ばかり書いているような気がする」
    とのことですが、私はまったくそうは思いません。

    ノルッキーさんは、時に厳しい言葉を選ばれますが、
    それは常にスキージャンプの発展を見据えてのものであり、
    常に冷静で、見ている側も納得のできるものです。

    私はスキージャンプの情報を得るため、
    あらゆるものを見てきていますが、ノルッキーさんのサイトが
    一番情報の内容が細かく、厚く、そして面白いです。
    なかなかこちらでも把握できない情報を紹介してくださるので、
    こちらとしても助かりますし、
    過去の記事にも細かくリンクを貼られているので、
    昔のことを回顧することができます。

    SAJ側にも色々なことがあるんでしょうが、
    SAJに対しては、私もノルッキーさんと同感です。

    日本のスキージャンプ界がもっと発展していくためには、
    選手の選考面だけではなく、
    WFやGFの導入など、協議の運営面でも改善が必要です。
    でないと、世界の共通ルールの中で、
    選手たちが自らの正確な現在地を把握できないことになります。
    女子で言えば、いつまでも「沙羅・有希ゲート」を
    全選手に適用していくわけにはいかないような気がします。

    冬のシーズンが始まり、記事を書かれるのはさぞ大変なこと思いますが、
    楽しく読ませていただきますので、よろしくお願いします。

    • Supiさん、いつもコメントありがとうございます。

      まぁ私自身はスキージャンプの発展などという大それたことはあまり考えてなくて、ただ、単に楽しく観戦したいと願っているだけのことなんですけどね。
      だからSAJに望むことも「もっと楽しませてください」ってことだけ。
      それが無理ならせめて「楽しくなくなるようなことはしないでくれよ」ってこと。

      昨シーズンは陵侑のおかげでこのブログのPV数も一気に跳ね上がりました。
      おかげでこちらも力が入りすぎてしまって更新するのが正直しんどかった。
      一方でやり切った感もあり、シーズン終了時にはこれで終わりにしてもいいかなぁとも。

      その思いは今も引きずっているんですけど…

      でも、今こうしてSupiさんから数々のお言葉をいただき、たいへんありがたく思うと共にとても勇気づけられました。
      続けてきた良かったと素直にうれしく思います。

      文句ばかり書いているような気がする上に、泣き言まで書くようになっては読者の皆様は堪らないでしょうね。
      今季はとにかく楽しく観戦し楽しく更新することを心掛けていこうと思います。

      今後ともどうぞよろしく。