内藤智文 HSオーバーで逆転優勝 葛西春香 大倉山初V
2022年1月15日(土)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123
女子組(基本ゲート1本目29、2本目27)
1 | 葛西 春香(東海大学付属札幌高校) | 183.8pt |
2 | 一戸 くる実(N高等学校) | 165.3pt |
3 | 小林 諭果(CHINTAIスキークラブ) | 143.5pt |
男子組(基本ゲート1本目16、2本目12)
1 | 内藤 智文(古河市スキー協会) | 271.9pt |
2 | 岩佐 勇研(東京美装グループスキー部) | 265.5pt |
3 | 葛西 紀明(土屋ホームスキー部) | 251.5pt |
4 | 二階堂 蓮(NSC札幌) | 250.0pt |
5 | 渡部 弘晃(東京美装グループスキー部) | 244.8pt |
6 | 山川 太朗(東京美装グループスキー部) | 243.6pt |
例年はFISコンチネンタルカップを兼ねて行われるこの大会。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年と同じくコンチネンタルカップは中止。
よって、大会名から「国際」の文字が外されて純粋な国内大会として開催された。
昨年との違いは、女子組が開催されたこと。
HTBカップで女子組が開催されるのは2012年と2013年以来となる3回目。
ただし、前2回は男子のHTBカップ兼コンチネンタルカップの表彰式が終了してから、それとは異なる「HTBカップ女子スキージャンプ競技大会」として行われていた。よって、他の国内戦のように男女同時に一つの大会の中に組み込まれるのは今回が初めてとなる。
その女子組では葛西春香が優勝。
12月の名寄吉田杯に続くシニア2勝目。ラージヒルは初優勝。もちろん大倉山での初優勝だ。
高校3年生の葛西春香が、前日の2位の勢いのままにシニア初優勝。
第37回吉田杯ジャンプ大会
日本女子ジャンプ界のパイオニアの一人である吉泉賀子(旧姓:葛西)を叔母に持つ高校3年生。
本職は複合で、双子の姉の優奈と共に複合U20強化指定選手に選ばれている。
姉の優奈は複合のWC代表として今季2度の3位表彰台がある。姉の活躍にうれしさはあったが悔しさの方が大きかったらしく、その思いを力に代えて、純ジャンプ勢を破って見事に初優勝を遂げた。
向かい風が強く、突然凪いだり横風も混じる。降雪も時に激しい。
経験豊富な茂野美咲と小林諭果でさえ1本目で大きく煽られ、あわや墜落の難しいコンディション。
そんな中で、葛西春香は1本目で「今まで飛んだことのない」130.5mのビッグジャンプ。
風の助けもあったかもしれないが、若い選手の何人かは向かい風がむしろ抵抗になって前に進んでいかない様子も見られたなかで、安定したフォームで上体をうまく向かい風に預けて飛んでいたように思う。
一戸くる実は、5日前のHBCカップと同じ2位。
2019朝日レディースサマー大会で「表彰台に乗る彼女の足の筋肉の付き方が、ちょっと他の女子選手たちとは―というか、男子も含めて他のジャンプ選手たちとは―全然違う感じで、相当鍛えているであろうことが伺える。(空手は今も続けているのかな? そっちで付けた筋肉かもしれない)」と書いた。
空中で右に体を開く癖があるが、パワフルでダイナミックな高い曲線で飛距離を伸ばす様は魅力的だ。
1本目で風に煽られ思わず「きゃー!」と悲鳴を響かせ84.0mに落ちてしまった小林諭果。
一つ前に飛んだ茂野の風速が+2.66m/sだったのに対して小林は-0.33m/s。あっという間に風向風速が変わる大倉山の恐ろしさ。
2本目は条件も良く126.5mでトップスコア。1本目10位から7人捲って表彰台を射止めた。
女子組
前日の公式練習が強風の為キャンセル。
試合当日も10m/s近い強風の予報で、試合が行われるかどうかが危ぶまれた。
しかし、現地に着くと拍子抜けするぐらい穏やか。予定通り9時に公式練習が始まった。
しかし、雪が激しくなる。
男子31人目が飛んだ9時25分に30分の中断が宣告された。その後さらに30分が加算され、再開されたのは10時35分。本戦開始は約1時間押しの11時05分。
その後も断続的に雪が降り、当初は穏やかに思われた風はどんどん強まっていった。
男子組で優勝した内藤智文はこの風をうまく捉えた。
1本目で3位となった135.0mも見事だったが、白眉はHSオーバーとなる141.5mを飛んだ2本目。
飛距離では葛西紀明の143.0mに及ばなかったが、葛西が着地を決められず飛型点が49.5ptにとどまったのに対し、内藤は18点台が並ぶ55.0pt。
その葛西は昨年3月の札幌オリンピック記念の3位以来となる表彰台。
5日前のHBCカップでも4位で、この日は1本目で143.0mを飛びトップ。
130m台の飛距離を普通に出せるくらいには復調してきているようだ。
ボクサー並みの減量で体重を絞ったことが功を奏しているらしい。
ひときわ高い飛行曲線を見せ続けている岩佐勇研が2位。
この冬は、名寄ピヤシリ:2位、名寄吉田杯:優勝、HBCカップ:優勝、そしてこの日の2位と絶好調。
ガッツポーズがさく裂し続けている。
男子組
表彰式
内藤の勝利は昨年10月の鹿角サマー以来。
他に2017.7全日本朝日、2017.12名寄ピヤシリ、2017.12名寄吉田杯、2018.1雪印杯、2018.3宮様NH、2018.11札幌市長杯LHで勝利を挙げ、2019年国体でも悲願の優勝を遂げている。
しかし、冬の大倉山での勝利はこれが初めて。
実業団に所属しないでこれだけの勝利を挙げている稀有な選手であることこそ、もっと取り上げられるべきだと思う。
ぜひ、次の記事なども読んでいただきたい。
二階堂蓮、渡部陸太、清水礼留飛、藤田慎之介。
コンチネンタルカップを転戦していた選手たちが帰ってきた。
彼らは成績次第ではワールドカップメンバーとの入れ替えの可能性があり、そこでの成績次第では五輪代表の可能性もあった選手たちだ。
残念ながら、ワールドカップ昇格は果たせず、それゆえ五輪代表に選ばれることもなかったが、五輪候補として戦うことができるという良い経験を積むことができたのではないだろうか。
なお、この試合は昨年と同じくYouTubeで全編生配信された。
テレビ中継前に全て生配信で見せてしまって大丈夫のかとHTBさんの視聴率が心配になるが、無送送迎バスも含めて、それでもビジネスとして成立しているのだろうからスゴイとしか言いようがない
ぜひ、他局もそのノウハウを得て追随していただきたい。