第104回全日本スキー選手権ノーマルヒル

“冬仕様”の伊藤有希が大会3連覇 小林潤志郎は3度目の大会制覇

全日本スキー連盟A級公認
  • 2025年11月9日(日)
  • 札幌市 宮の森ジャンプ競技場
  • HS100/K90

女子組

1  伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 246.0pt
2  丸山 希(北野建設SC) 238.0pt
3  高梨 沙羅(クラレ) 227.6pt
 
4  勢藤 優花(オカモトグループ) 221.7pt
5  一戸 くる実(雪印メグミルクスキー部) 207.5pt
6  櫻井 梨子(あいおいニッセイ同和損保) 191.5pt

リザルト

男子組

1  小林 潤志郎(Wynn.) 266.3pt
2  小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部) 263.4pt
3  内藤 智文(山形市役所) 253.1pt
 
4  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 243.7pt
5  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) 239.8pt
6  中村 優斗(COOTS SC) 229.5pt

リザルト


土曜日。
13cmという11月上旬としては記録的な積雪となった札幌。
この時期の札幌で10cm以上の降雪は9年ぶりなんだとか。

この積雪により、土曜日に予定されていた公式練習は中止。
関係者の方たちが人海戦術で除雪を行ってくださったおかげで、日曜日は予定通り大会を実施することができた。

女子組優勝は伊藤有希。
その1本目は圧巻。ほぼ無風の中、ヒルサイズに迫る99.0mの飛距離と二人が19.0点を付ける持ち前の美しすぎる飛型点で、2位丸山希に8.9ptの差をつけてトップに立った。

2本目は高梨沙羅と丸山希にポイントでは下回りはしたが、ただ一人K点オーバーを2本揃えてトップを守った。

この夏は、失格やKO戦を除けば11年間続いていた国内シニア戦での表彰台をいくつか逃した。
満を持して臨んだであろうグランプリ(GP)バルディフィエンメでは30位と28位。
GP最終戦クリンゲンタールでは3位表彰台となったものの、ここまで悪い姿は見たことがなかった。

しかし、どうやらこれは、冬にピークを合わせるために敢えてサマートラックに合わせないようにしてきたという戦略によるものだったようだ。

そして、実際にアイストラックで開催された全日本選手権ではLHで5位、そしてNHではこうして優勝を果たした。前述の3位となったGP最終戦も使用されたのはアイストラックだ。

アイストラックにアジャストするために、我慢の夏を過ごしたことは不安でもどかしい思いもあったというが、この戦略は「計画通りに」ピタリとはまった。

これで全日本選手権ノーマルヒルは3連覇。
冬仕様を極めてきた伊藤有希が、この冬にどんな姿を見せてくれるのか。
楽しみで仕方がない。

女子組

1 伊藤 有希(土屋ホームスキー部)
2 丸山 希(北野建設SC)
3 高梨 沙羅(クラレ)
4 勢藤 優花(オカモトグループ)
5 一戸 くる実(雪印メグミルクスキー部)
6 櫻井 梨子(あいおいニッセイ同和損保)

2位には、一週間前の全日本選手権ラージヒルの覇者である丸山希。
3位には、2012年(第90回大会)に中学生にして初優勝して以降8回の優勝を誇る高梨沙羅。
4位の勢藤優花も含めて、ワールドカップ(WC)常連選手たちのここ一番での勝負強さはさすがだと感じさせる。

全日本選手権NH【女子】歴代表彰者(過去10大会)

大会 優勝 2位 3位
第94回 高梨 沙羅 岩渕 香里 伊藤 有希
第95回 勢藤 優花 高梨 沙羅 岩渕 香里
第96回 高梨 沙羅 伊藤 有希 勢藤 優花
第97回 高梨 沙羅 伊藤 有希 岩渕 香里
第98回 高梨 沙羅 伊藤 有希 丸山 希
第99回 高梨 沙羅 伊藤 有希 丸山 希
第100回 高梨 沙羅 丸山 希 伊藤 有希
第101回 高梨 沙羅 伊藤 有希 丸山 希
第102回 伊藤 有希 高梨 沙羅 一戸 くる実
第103回 伊藤 有希 高梨 沙羅 丸山 希
NEW 伊藤 有希 丸山 希 高梨 沙羅

なお、女子においては、この試合の結果は、全日本選手権LHとHBCカップの結果と併せてWC蔵王大会第1戦の開催国枠の選考に影響する。
その意味からも、櫻井梨子、岩佐明香(7位)、中山和(8位)、小林諭果(9位)、斎藤優(10位)といった選手たちの争いも熾烈だ。

また、男女ともに、この試合の結果は、名寄ピヤシリ、名寄吉田杯などの結果と併せてジュニア世界選手権の選考に影響する。
その争いもまた熾烈。

男子組

1 小林 潤志郎(Wynn.)
2 小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部)
3 内藤 智文(山形市役所)
4 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)
5 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)
6 中村 優斗(COOTS SC)

伊藤有希の鮮やかな勝利と双璧をなしたのが小林潤志郎。
点数上は2位の小林朔太郎と2.9pt差の接戦だったが、数字には表れない強さを感じさせる勝利だったと思う。

1本目のヒルサイズジャンプも見事だったけど、2本目で98.0mを飛びピタリと背後に迫る朔太郎に対し、動じずに99.0mかつ4人が19点台を付ける見事なランディングで応戦した2本目に、より凄みを感じた。

昨年4月にプロ選手に転向してから国内2勝目。
全日本選手権ノーマルヒルは6年振り3回目の勝利。
この冬の国際大会はコンチネンタルカップ(COC)からのスタートとなるが、「兄弟でまた行きたい思いがある」という五輪出場をあきらめてはいない。

全日本選手権LH【男子】歴代表彰者(過去10大会)

大会 優勝 2位 3位
第94回 伊藤 謙司郎 竹内 択 作山 憲斗
第95回 中村 直幹 竹内 択 伊東 大貴
第96回 小林 潤志郎 小林 陵侑 渡部 弘晃
第97回 竹内 択 佐藤 幸椰 伊東 大貴
第98回 小林 潤志郎 佐藤 慧一 小林 陵侑
第99回 佐藤 幸椰 小林 潤志郎 伊東 大貴
第100回 小林 陵侑 佐藤 慧一 小林 潤志郎
第101回 二階堂 蓮 小林 陵侑 山本 涼太
第102回 中村 直幹 小林 陵侑 坂野 旭飛
第103回 内藤 智文 小林 陵侑 中村 直幹
NEW 小林 潤志郎 小林 朔太郎 内藤 智文

2位は、全日本選手権LHと同じく僅かに勝利に届かなかった小林朔太郎。
3位は、大会連覇を目指したが1本目でやや外れの条件を引いてしまった内藤智文。

朔太郎は連続2位。内藤は連続3位。
WC前のアイストラックでの国内戦で上々の結果を手にした。
良い形でWCに臨めそう。

なお、この試合では細田将太郎(GROWTHSapporoSkiClub)が9位に入った。
公認試合でのシングル順位は2023朝日サマーでの8位以来のはず。
同期である小林潤志郎の個人コーチを務めているが、互いに切磋琢磨することで相乗効果が生じているのだろうか

表彰式

女子組
女子組
女子組
男子組
男子組
男子組

11月12日。WC開幕メンバーが正式に発表された。

ワールドカップ女子代表
  • 対象大会:リレハンメル/ファルン/ヴィスワ
  • 高梨 沙羅(クラレ)
  • 伊藤 有希(土屋ホームスキー部)
  • 丸山 希(北野建設SC)
  • 佐藤 柚月(東京美装グループスキー部)
  • 勢藤 優花(オカモトグループ)
  • 宮嶋 林湖(松本大学)
ワールドカップ男子代表
  • 対象大会:リレハンメル/ファルン/ルカ/ヴィスワ/クリンゲンタール/エンゲルベルク
  • 小林 陵侑(TEAM ROY)
  • 二階堂 蓮(日本ビールスキー部)
  • 中村 直幹(Flying Laboratory SC)
  • 小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部)
  • 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)
  • 内藤 智文(山形市役所)

2025/26ワールドカップは、11月21日にリレハンメルにて男女同時に開幕する。