スロベニア大躍進でボガタイが金 高梨沙羅4位
2022年2月5日(土) 北京(CHN)HS106/K95
Women’s Normal Hill Individual
金 | ウルサ・ボガタイ(SLO) | 239.0pt |
銀 | カタリナ・アルトハウス(GER) | 236.8pt |
銅 | ニカ・クリジュナル(SLO) | 232.0pt |
4 | 高梨 沙羅(クラレ) | 224.1pt |
5 | エマ・クリネツ(SLO) | 215.4pt |
6 | シリエ・オプセット(NOR) | 200.5pt |
7 | イリーナ・アバクモワ(ROC) | 196.3pt |
8 | リサ・エダー(AUT) | 193.4pt |
13 | 伊藤 有希(土屋ホームスキー部) | 176.7pt |
14 | 勢藤 優花(北海道ハイテクAC) | 176.5pt |
18 | 岩渕 香里(北野建設) | 169.6pt |
ワールドカップではいまだ勝利がないウルサ・ボガタイが見事に金メダルを獲得。
僅差で逆転されたカタリナ・アルトハウスが平昌オリンピックに続いて銀。
昨シーズンのワールドカップで総合優勝のニカ・クリジュナルが銅。
金と銅のスロベニアは、5位にクリネツ、9位にロゲリが入る大躍進。
前回銅メダルの高梨沙羅は一歩届かず4位。
伊藤有希13位。勢藤優花14位。岩渕香里18位。
金のボガタイは1995年生まれの26歳。
2011年12月の記念すべき女子ワールドカップの第1戦にも出場しているキャリア的には古参の選手。
以降、WCにおいては時折トップ10内に顔を見せ、2018/19リュブノで初表彰台。
とはいうものの、お世辞にもあまり上手な選手とは言えず、2019年の年末に国内試合で右膝の前十字靭帯を痛める大怪我を負い約1年間表舞台から遠ざかったことも手伝って、表彰台の頂点に立つ姿があまり想像できない選手ではあった。
ところが、2021年の夏のグランプリで突然変異を起こす。
開幕戦でWC・GPを通じて自身初勝利を挙げ最終的には7戦4勝と2度の2位で総合優勝。
その勢いは2021/22のWCになっても衰えず、11試合で5度の表彰台を含む全戦シングル順位。未勝利ながらクラマー、アルトハウスに次ぐ堂々の総合3位。
こうした状態で迎えた北京オリンピックだった。
戦前から風の影響を受けやすい台であることはわかっていた。
メダル争いは、WCの総合上位の5人であるアルトハウス、ボガタイ、クリネツ、クリジュナル、高梨沙羅、オプセットに絞られていたといえるが、どういった順位に収まるかは条件次第だった。
2本目はまさにそのような展開。
トップで折り返したアルトハウスと4位で折り返したクリネツが悪い条件を引いてしまった。
ただ、ボガタイの2本目も決して良い条件ではなかったことからも、特定の誰かにだけ良い風が当たったり悪い風が吹いたりしたわけではなかったと思う。
いずれにしてもWC総合上位の6人は、この舞台でもほぼそのままに近い順位でトップ6に収まった。その意味からも順当な結果に落ち着いたと見てよいのではないだろうか。
いずれにしても、実力のある選手たちが、その実力をいかんなく発揮した面白い試合だった。ソチ、平昌と同様になかなかの名勝負だったように思う。
メダルに届かなかった高梨沙羅。
平昌で銅メダルを獲得した後から、それまでの自身のジャンプをすべて壊し、4年間かけて一から作り直すという作業を行ってきた。
平昌五輪後のシーズンから、沙羅はかつてのように勝てなくなった。2018/19は1勝、2019/20も1勝、2020/21は3勝。
もちろんそこには、ルンビやクラマーといった強力なライバルたちの台頭もあったが、目の前の結果を捨ててでも北京で金メダルを獲ろるための大改造を優先したした結果でもあった訳だ。
2021/22。成果はアプローチから踏切にかけての部分で見え始めた。
以前に見られた踏切の際に一度スキーが跳ね上がってから下がる動きは、跳ね上げずに真っすぐにスキーを空中に運ぶ動作に置き換わっていた。
続いて空中フォーム、最後にランディングを完成させる手順だったようだが、残念ながらランディングにまでは手が回らなかったようだ。
迎えた北京の舞台。
1本目のジャンプは踏み切りがやや遅れてスキーのハネ上がりが大きくなってしまい、4年間の改造の成果を見せることはできなかった。
また、飛距離の割にはテレマークもうまく入れることができなかった。
2本目は100.0mまで飛距離を伸ばして見せた。
この日100mの大台に乗せたのは上位の5人。なんとか意地は見せた。
しかし、同じく丁度100.0mを飛んだボガタイとクリネツの飛型点が52.0と54.5だったのに対し沙羅は50.0。
課題は最後まで修正しきれなかった。ただし、敗因はもちろんテレマークだけではないとは思うが。
試合後に「結果を受け入れているので、もう私の出る幕ではないのかもしれないなという気持ちはあります」と語ったという。
長く見続けてきた者の一人として、彼女の夢が叶えばいいなという親心のような気持ちを常に持ってきた。それだけに沙羅のこのような言葉は胸に刺さる。
ただ、そのことについては今まで何度か書いてきた。
また同じことを書くことになりそうなので、興味のある方は次のリンクをたどって欲しい。
伊藤有希は13位。
ソチ7位、平昌9位と2大会連続でシングル順位を続けてきたが、そこを逃してしまった。
1本目が10位だっただけになんとも残念だが、このあたりの順位の選手たちは2本目で良くない風の巡りにあたってしまった。
勢藤優花は14位。
平昌の17位より3つポジションがアップした。
今季WCではトップ10に3度入るなど上り調子にあったのでもう少し上が狙える力はあったはず。やはり2本目で順位を落としてしまった。
岩渕香里は18位。
平昌の12位より6つダウンしてしまった。
今季は自己最高位タイの6位になるなど調子がよく、伊藤有希を上回る日本勢2番手のポジションに付いていただけに落胆も大きいだろう。
高梨沙羅、伊藤有希、岩渕香里、勢藤優花
2014/15シーズンから不動のメンバーとして世界を転戦してきた4人。
それぞれに悔しい思いを抱えていることだろうが、過去2大会と違うのは、この後に混合団体か控えているということ。
出場できるのは2人だけだし、個人戦の代わりになることは決してないだろうが、選ばれた選手にはぜひ笑顔で終わってもらいたい。