2017 FISノルディックスキー世界選手権ラハティ 女子個人NH

カリーナ・フォークト2連覇 伊藤 銀 高梨 銅

2017年2月24日(金) ラハティ(FIN)HS100/K90 

Ladies Normal Hill Individual 

金 カリーナ・フォークト(GER) 254.6pt(98.5m 96.5m)
銀 伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 252.6pt(97.0m 96.5m)
銅 高梨 沙羅(クラレ) 251.1pt(98.0m 95.0m)

 

11 岩渕 香里(北野建設スキークラブ) 221.5pt(92.0m 89.5m) 
14 勢藤 優花(北海道メディカルスポーツ専門学校) 213.7pt(88.0m 87.5m)

 

オフィシャル リザルト

 


 

カリーナ・フォークトが強さを発揮した。
僅か3.5pt差の中で3つのメダルがひしめく僅差の試合ではあったけれど、点差以上にフォークトの力が際立っていたように感じられた。

 

金メダルの可能性があったのは高梨、伊藤、フォークト、ルンビの4人。
そのうちの誰が獲ってもおかしくなかったと思う。
明日もう一度試合をやれば違う結果になるかもしれない。
それぐらい現時点での実力は拮抗していたと思う。

 

でも「金メダルを取る力」はフォークトが(加えてドイツチームが)上回っていたのかもしれない。
その力の要素の1つに「運」もあるが、フォークトは2014年ソチ五輪、2015年世界選手権に続いてこれで3つ目の金メダル。
さすがに3回続けば単に「運」だけで勝ったわけではないと言い切れる。
一発屋みたいな見方をされるのも気の毒な話で、もっと評価されてもいい選手だと思う。

 

高梨沙羅は、目指していたものが明確に「金」であったはず。
それが獲れなかったのだから、本人がこれを「負け」と捉えるのは当然だろう。
「よく頑張った。立派な成績だよ」という思いはもちろん私の中にもある。
だからと言って「悔しいというより落胆というか。同じことを繰り返してしまっている自分が情けない」と涙を流す選手に対し、「銅メダルおめでとう!」と言うのはむしろ残酷すぎやしないか。

 

「大舞台であっても自分のやるべきことは同じだが、頭のどこかで『応援してくれる方たちに結果で恩返しがしたい、いいジャンプをしたい』という気持ちが先走って、自分のやるべきことが考えられていなかったかもしれない」 試合後にこうコメントしたらしい。
ソチの試合後にも「皆さんへ感謝の気持ちを伝えるためにここに来たので、いい結果を出せなかったことはすごく残念です」と語った。
やはり沙羅は背負いすぎなんだと思う。
ソチの時は、日本女子ジャンプの礎を築いてきた先輩たちへの思いまで背負い込んでいた。

 

一部のメディアやファンがこれらを美談のようにとらえているが果たしてそうか?
こうしたことを沙羅が語れば語るほど、言霊となって自分自身を呪縛していく。
私も含めて応援している人たちの大半は勝手に応援しているだけ。勝てばもちろんうれしいけれど、勝てないことがあることもわかっているし、そういうことも全部ひっくるめて「応援することを楽しんでいる」だけ。
応援している者たちは、沙羅ちゃんが思うほど「結果だけ」を求めているわけではないんだよ。

 

「今後、もっと深く根本的なところから変えないといけない」
その「根本的なところ」が何なのかは私にはわからないし、本人にもわかっていないのかもしれない。そもそも変えなきゃいけないものなのか、そうでないのか。
いずれにしても、私は今まで通り黙って見守り続けるのみ。

 

一方、伊藤有希には、心の底から「銀メダルおめでとう!」と叫びたい。
彼女が目標としてきた「メダル」は金に限定されていたわけではなかったようだけど、できれば金を獲りたかったに決まっているし、獲れるポジションにもいた。
だからこそ「悔しい」という言葉も出た。
フォークトとの差は2.0pt。飛距離にしてわずか1.0m。

 

それでも本人の口からは、いつも通りの「踏切が遅れて・・・」などの言葉ではなく、「ジャンプの内容的には今季一番」で、2本ともアプローチから踏切り、空中まで「すべて満足」の出来だったなど充実感が漂う言葉が並ぶ。
葛西紀明もうなるほどの負けず嫌いということらしいが、この結果をけっして「負け」と捉えていないところが素晴らしい。

 

底知れぬ才能と不断の努力。
そこに勝者のメンタリティが加わった。
有希ちゃんの今後が楽しみでならない。

 

 

  世界選手権 女子個人NH 歴代メダリスト
 
2009 リンジー・バン ウルリケ・グレッスラー アネッテ・サーゲン
2011 ダニエラ・イラシュコ エレナ・ルンガルディエール コリン・マテル
2013 サラ・ヘンドリクソン 高梨 沙羅 ジャクリーン・ザイフリーズベルガー
2015 カリーナ・フォークト 伊藤 有希 ダニエラ・イラシュコ・シュトルツ

 

 

2大会連続出場となった岩渕香里と勢藤優花。
岩渕は前回大会の36位から大きくジャンプアップしての11位。
勢藤も大きく伸ばして31位から14位。
二人とも何と大きな成長を見せたことか。
でもまだまだ上を目指せる。
これもまた楽しみでならない。