ジワが大逆転で2大会連続の金 史上稀にみるスリリングな熱戦
2023年2月25日(土)プラニツァ(SLO)HS102/K95
Men Normal Hill Individual
金 | ピオトル・ジワ(POL) | 261.8pt |
銀 | アンドレアス・ヴェリンガー(GER) | 259.2pt |
銅 | カール・ガイガー(GER) | 257.7pt |
25 | 中村 直幹(Flying Laboratory SC) | 229.8pt |
30 | 小林 陵侑(土屋ホームスキー部) | 126.7t |
43 | 二階堂 蓮(日本ビールスキー部) | 105.9pt |
29 | 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) | 104.4pt |
大逆転での金メダルとスリリングな表彰台攻防。
史上稀にみる面白い試合だった。
1本目13位だったピオトル・ジワは2本目でHSを3.0mオーバーする105.0mの大ジャンプを見せた。着地も決まり19.0ptが4人並んだ。
17人を残して、ジワが描いた遠すぎる緑のラインを目指す困難な戦いが始まった。が、結局誰一人としてそれを超える者は現れなかった。
今季ワールドカップにおいて、グランネル、クバツキ、ラニセク、クラフトの四天王に次ぐ第5の男が演じた大逆転劇。
世界選手権での大逆転といえば2019ゼーフェルト男子NHが記憶に新しいが、あれは悪天候による特殊な状況がもたらしたもの。今回は、まごうことなき力と力の勝負だった。
ジワは世界選手権個人NHで2大会連続の金。
世界選手権での男子個人の連覇は2001年と2003年のアダム・マリシュ以来となる。
表彰台攻防もまた極めてスリリングだった。
1本目の1位から表彰台を失ってしまったクラフトはメダルまで僅か0.4pt差。5位クバツキは0.8pt、6位ストッフも1.4pt。このあたりの選手は誰がメダルを獲ってもおかしくなかった。
一方で今季WCで圧倒的な強さを誇る総合1位のグランネルが11位、2位のラニセクも9位と振るわなかった。
ノーマルヒルそれもHSとk点の間隔が7.0mしかない台であることが影響したかもしれないが、やはり世界選手権という特別な舞台がそうさせたという気もする。
それは例えばウクライナのマルシアクが103.0mを飛び、つかの間のヒルレコードホルダーとなったことなどにも表れていたように思う。
日本勢は中村直幹と小林陵侑が2本目に進んだ。
陵侑は1本目は15位と出遅れたが2本目で会心の一発を決めてメダルに望みをつないだ。
しかし、その後にスーツの通気量違反となり2本目のポイントは取り消されてしまった。
「日本勢に再びの悪夢」などと煽情的な見出しを使った報道もあるが、陵侑自身は試合後のインタビューでも「しかたない」と割とさばさばした感じで答えていた。
「日本潰しだ! 日本ばかりが狙われている!」という意見に与するつもりは毛頭ないが、日本チームのスーツ違反による失格は少し多いかなという気はする。
日本チームには帯同するスーツの専門スタッフが2名しかおらず、しかも男女かつ複合も手掛ける。よって人手不足でチェックが追い付いていないという実情があるようだ。
ならば人手を増やせばいいだけのことなのだが、予算が少なくそれもままならない。
事情は分かるが、しかし、それによって失ってきたものは大きい。
なので、どこかで歯止めをかけなければならない。失うのはメダルやポイントだけではなく、一般の人たちのこの競技に対する興味や信頼でもあるのだから。
男子個人ノーマルヒル歴代メダリスト
金 | 銀 | 銅 | |
2007 | A.マリシュ | H.オリ | T.モルゲンシュテルン |
2009 | W.ロイツル | G.シュリーレンツァウアー | S.アマン |
2011 | T.モルゲンシュテルン | A.コフラー | A.マリシュ |
2013 | A.バーダル | G.シュリーレンツァウアー | P.プレヴツ |
2015 | R.ベルタ | S.フロイント | S.クラフト |
2017 | S.クラフト | A.ヴェリンガー | M.アイゼンビヒラー |
2019 | D.クバツキ | K.ストッフ | S.クラフト |
2021 | P.ジワ | K.ガイガー | A.ラニセク |
2023 | P.ジワ | A.ヴェリンガー | K.ガイガー |