2030年冬季五輪の札幌招致に向け、大倉山ジャプ競技場が6月5日にリニューアルオープンされた。
といっても、ジャンプ台そのものに手が加えられたわけではない。
リニューアルされたのは、これまでクリスタルハウスと呼ばれていた棟とオリンピックミュージアム棟の3階部分にあたる多目的ホール。
リニューアルは総工費約6億5千万円。
設計から2年がかりだったそうで、2019年秋ごろから現地では工事をしている姿が見られていた。
2019/20ワールドカップ札幌大会に訪れた観客の皆さんも、養生シートに囲われたクリスタルハウスの姿を覚えておられることだろう。
このように工事が行われていたのだが、さて、何がどのように変わったのか?
さっそく現地を訪れてみた。
- 探訪日:2020年(令和2年)6月7日
- 大倉山ジャンプ競技場のリニューアルオープンは、本来であれば1ヵ月ほど前に既に行われているはずでした。
コロナ禍によりこれが遅れたわけですが、北海道においても5月25日に緊急事態宣言が解除され、晴れて6月5日にオープンする運びとなったわけです。
駐車場から展望エスカレーターを上ると、まずは見慣れない円形のモニュメントが目に飛び込んでくる。
歴代の冬季オリンピックの開催都市が刻まれているらしい。
1972年の第11回大会はもちろんSAPPOROだ。
でも、なんでNAGANOは7thなんだろう?(18回大会のはずだけど…)
→ 疑問は解決しました
こんなモニュメントも出来ていた。
新しい記念撮影スポットなることだろう。
ミュージアム3階の多目的ホールは『チケット販売所・ミュージアムショップ』に生まれ変わった。
チケット販売所ではミュージアム入場券とリフト券を販売する。
冬季オリンピックのポスターが描かれたピンバッチ(1,300円~1,350円)が大会ごとに販売されていたりして、収集欲を刺激させられる。
ドリンクやソフトクリームなどを提供していたミュージアムカフェがなくなってしまった。
それに伴ってか、今まで置かれていたイスとテーブルは撤去され、代わりに窓際にカウンターとカラフルな座面の椅子が配置されていた。
でも、座れるのはここだけ。ジャンプ観戦の際の休憩スペースとしては、このホールはもうほとんど使えないとみてよさそう。
ホールとトイレの間には間仕切りができた。
残念ながらトイレの中はリニューアルされず今までと一緒。
2020.11.1追記
個室は温水洗浄便座になっていました。
さて、次はいよいよ今回のリニューアルの目玉。
かつての『クリスタルハウス』は、オリンピックミュージアムの『アネックス』として、名称だけでなく中身もまったくの別物に変わっていた。
上の画像は、改装前の『クリスタルハウス』
1階はお土産なども揃った売店。2階はレストラン「ラムDINING大倉山」
外には、ラーメンやそば等をセルフ式で提供する「ラージヒル」や「リフト券売り場・総合案内所」などがあった。
こちらの画像が、改装された『アネックス』
かつての面影を残しつつも、よりモダンで洗練されたデザインに生まれ変わった。
2階の窓ガラスが大きくなったことが特徴か。
クリスタルハウスの時とは位置が変わった『アネックス』のエントランス。
お祝いの花もたくさん飾られていた。
上の画像は、改装前の『クリスタルハウス』1階売店。
いかにも観光地のお土産屋さんといった感じでやや雑然とした印象があった。
それが…
なんとびっくり! 吹き抜けのオシャレな『多目的ギャラリー』に変わっているではないか。
今までお隣の多目的ホールが担っていたジャンプ観戦の際の休憩スペースとしての役割を、今後はこのホールが引き継ぐのだろうか?
ギャラリーの一角には、これまたオシャレなカフェ『REPOS』
写真左端の黒枠の部分はガラス戸。外との出入りがここからできるのだろうか。(この日は施錠されていたが…)
そのガラス戸を外から写した。左端の黒枠のガラスがドアだ。
ここを入るとすぐにカフェがある。
ところで、写真の場所に見覚えのある方もいるだろう。そう、ここの場所は…
そう、ここは、かつてラージヒルがあった場所。
その場所にオシャレなカフェができたわけだ。
ただ、メニューを見ると、このカフェはラージヒルの後継というよりは、お隣の多目的ホールにあったミュージアムカフェの後継店と見た方がよいだろう。
いずれにしても、もう試合の合間にラーメンやそばを食べることはできなくなったようだ。
トイレももちろんリニューアル。温水洗浄便座になっていた。
ギャラリーの奥から見た景色。
長い階段が2階へと続く。
階段を上ると、そこは今回のリニューアルの目玉であるレストラン『ヌーベルプース大倉山』のエントランス。
ヌーベルプースとは、フランス語で「新芽」の意味。元々は、地下鉄西18丁目駅にほど近い知事公館前に店があったようだ。
かつてここは、ラムDINING大倉山という、名前の通りジンギスカン等のラム料理を提供するレストランだった。
北海道を代表する料理からフランス料理に代わったしまったことに一抹の寂しさはある。
『ヌーベルプース大倉山』に許可を頂いて写真を撮らせてもらった。
ちょうどお昼時でテーブルが半分ほど埋まっていたので、端っこの方からの写真しかないが、雰囲気は伝わるだろうか?
以前より窓ガラス1枚の面積が大きくなったために外の景色が映える。
ランチは2,500円。
ディナーは5,000円、8,000円、10,000円の3コース。アラカルトもあるようだ。
いずれも北海道の食材を使った創作フレンチとのこと。
右に写るのはエレベーター。
1階のカフェREPOSの前から乗れば、長い階段を上らずともレストランに直行できる。
エントランスの壁面に冬季オリンピックの開催都市名が並ぶ。
こちらは、トイレに通じる壁面。
その対面にVIPルームとBarルームがある。
写真はBarルーム。カウンターと二人掛けのテーブル席があり、札幌の夜景を望む。
全体として、観光客の視点で見るとなかなか魅力的なリニューアルだと思える。
なんにしても「新しい」というのはそれだけで素晴らしい。
一方、観戦者の視点で見るとどうだろう。
少し意地悪な見方をすれば、観光客が優先されスキージャンプ観戦客のことはあまり考えられていないようにも感じられる。
特に、観戦時の休憩スペースや飲食については若干の不安が残る。
不安は杞憂であってほしいが、それが証明されるには大会の再開を待つしかない。
全日本スキー連盟は9月末までの主催事業の延期または中止を発表しているので、ここで大会が開かれるのは早くても10月になるだろう。
2020.6.13追記
6月12日に札幌スキー連盟より、例年7・8月に開催している札幌でのサマー大会を10月に開催する方向で検討していると発表がありました。
ところで…
昨年(2019年)4月。ラージヒルである大倉山の台とノーマルヒルである宮の森の台を集約し、大倉山に二つの台を並べる構想があることが報道されたことをご存じだろうか。
2030年冬季五輪招致にあたり、施設整備費の削減や大会運営の効率化、あるいは維持管理費を抑えることなどが狙いとされている。
大倉山ジャンプ競技場の歴史の中で、1957年(昭和32年)から10年ほどの間、80m級(1964年に90m級に改装)の大倉シャンツェの横に国体競技用に新設された60m級の雪印シャンツェが併設されていた時代がある。
その後、1972年(昭和47年)の札幌オリンピック開催に向け、雪印シャンツェを70m級に改装して、大倉シャンツェと共にオリンピックの舞台とすることがほぼ決まっていたらしい。
しかし、最終的には雪印シャンツェを取り壊し宮の森に新たに70m級を新設することとなる。
その理由は、
- 大倉山の狭い起伏に二基のシャンツェを並べるのは難しい
- 二基併設すると観客席のスペースが十分に取れない
- 70m級のすぐ横に90m級があることで、70m級がレベルの低い台という印象を与えかねない
3番目の理由は、今となっては「冗談でしょ?」と突っ込みを入れたくなるようなものだが、1番目と2番目は現在でも全く同じことが言えるのではないだろうか。
特に、観客席のスペースについては個人的には最も気になるところだ。
現在の観客席にノーマルヒルが設置され、それに伴い観客席が右にずれると、観客席からラージヒルが遠くなってしまう。
それだけは是非とも避けていただきたいというのが本音だ。
- 2020.6.12
第3回 美流渡シャンツェの記事をリライトしました。
コメント
管理人のnorkeyです。
あとから気が付いたんだけど、クリスタルハウスの横に立っていた時計の塔もなくなっているね。
その横にあった郵便ポストもないし、まりもっこりの顔出し看板もなくなっている。(要らないけど)
ラージヒルの横にあったテーブルとイスも無くなったので、観戦の合間に座れる場所はホントに少なくなった。
それに自販機も随分と減ったんじゃないかな?
一番ショックだったのはミュージアムの1階の2017世界選手権の表彰台の横にいたノルッキーがいなくなっていたこと。