2018/19 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第7戦エンゲルベルク

小林陵侑 4勝目 開幕から1ヵ月で世界を席巻

2018年12月16日(日) エンゲルベルク(SUI)HS140/K125 

10th World Cup Competition 

 小林 陵侑(土屋ホームスキー部)  294.4pt  144.0m 137.0m
 ピオトル・ジワ(POL)  285.1pt  137.5m  135.0m
 カミル・ストッフ(POL)  279.5pt  138.0m  131.0m
 
14  中村 直幹(東海大学)  259.6pt  126.0m  136.5m
20  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)  255.9pt  130.0m  132.5m
30  葛西 紀明(土屋ホームスキー部)  233.9pt  124.5m 125.0m
32  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)  115.2pt 125.0m  
44  伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部) 106.4pt 119.5m  

予選 リザルト

オフィシャル リザルト


 

小林陵侑が束の間の小休止を経て”定位置”に戻ってきた。
7戦して4勝。3位2回。最も悪かったのは前戦の7位。
WC初優勝から3週間足らずで、陵侑は世界の勢力図を完全に塗り替えてしまった。

 

この日も予選も含めて3本のジャンプはいずれもトップ。
本戦1本目こそテレマークが入らず飛型点を大きく失ったけれど、それもヒルレコードに並ぶ144.0mも飛んでしまったゆえのこと。

 

こうなると宮平コーチもゲートに神経を使わざるを得なくなる。
2勝目となったルカの2本目で、1段ならまだしも2段下げのリクエストを出したのはかなり勇気のいることだったように思える。
ただ、あの頃は国内戦で痛めた右膝のこともあって思い切った決断が出しやすかったのだろうけど。

 

で、この試合の2本目はどうだ。
1本目より基本ゲートが1段下がりラスト10人でもう1段下がったが、そのゲートで7人飛んだ時点でアイゼンビヒラーが137.0m、クリモフが136.0m。もっとも飛距離が出なかったクバツキでさえ133.5m。
ラストの3人(ジワ、ストッフ、陵侑)を残し、みやじの頭にはリクエストがよぎっていたのではないか?  今の陵侑であればアイゼンビヒラーやクリモフを5.0mぐらい上回ったとしても全然不思議ではないから。

 

ところがここで潮目が変わった。ラスト3人で追い風が強まった。
これなら飛びすぎにはならないはず。
みやじはリクエストを発せず、陵侑は完全なジャンプを安全に決めて見せた。
陵侑の快進撃の陰にはみやじの好采配アリ。とは少し褒めすぎかな?

 

陵侑の勝利の瞬間をリーダーボードの前で苦笑いで見届けたジワは2戦連続の2位。
2本目のアプローチでミスしたというストッフは3位で今季3度目の表彰台。
それにしても、ここはまるでポーランドのホーム。大挙して押しかけたポーランドサポーターの大声援が凄まじい。

 

もちろんそれに負けない大声援を受けたアマンは29位で今季初ポイントを獲得。
予選を50位で通過した葛西紀明も今季初ポイントとなる30位。
今季5度目のポイントゲットとなる中村直幹は自己最高位の14位。
そして、我が愛しのコウデルカは2016/17トロンハイム以来となる実に1年10ヵ月ぶりのシングル。

 


 

さて、これでクリスマス前の日程は終了。1週休んで次戦はいよいよジャンプ週間。
陵侑は「まず1勝を目指す」と謙虚だが、日本人選手の勝利は2000/01シーズンの葛西紀明が最後。1勝するだけでも偉業だ。
でも、今の陵侑なら1997/98シーズンに船木和喜が成し遂げて以来の総合優勝を夢見てしまう。

 

選手は18日に既に帰国した。
22日に札幌大倉山で開催されるTVh杯に出場する予定だったと思われるが、雪不足で開催延期。
宮の森も使えないらしいので、少なくとも札幌ではトレーニングで飛ぶことすらできない。
そのことがジャンプ週間に影響するのかしないのか? そこはちょっと気になる。

 

下表はジャンプ週間開幕前(7試合終了時点)の今年と昨年のWC総合順位の比較。
そして、昨年のジャンプ週間の総合順位。

今季(7戦終了時点) 昨季(7戦終了時点)  昨季の4HT
1 小林陵侑 556pt 4勝 フライターク 550pt 3勝 ストッフ 1108.8pt
2 ジワ 445pt   ヴェリンガー 399pt 1勝 ヴェリンガー 1039.2pt
3 ストッフ 365pt   タンデ 356pt   ファンネメル 1021.3pt
4 ガイガー 327pt   ストッフ 323pt   小林潤志郎 1021.1pt
5 フォルファング 321pt 1勝 クラフト 292pt   ヨハンソン 1009.4pt

 

昨季、ジャンプ週間前の7試合で3勝を挙げWC総合トップをひた走っていたフライタークは、ジャンプ週間3戦目で転倒し万事休す。
一方、ジャンプ週間前に無勝利だったストッフがグランドスラムでジャンプ週間総合優勝を果たしたのはご承知のとおり。

 

まぁ、それがあるだけに、今季ここまで無勝利のストッフが何とも不気味。
昨季ストッフのジャンプ週間総合優勝は2年連続2度目。
ジャンプ週間に関しては2016/17ビショフスホーフェンからシーズンを跨いで5連勝中でもある。

 

しかし、それよりもジワが怖い。
実は今季ジワは陵侑に2度勝っている。第4戦で陵侑3位vsジワ2位。第6戦で陵侑7位vsジワ2位。
キャリア最高の好調さを見せているジワ。そろそろ勝ちそう。

 

なお、17日にSAJより発表されたジャンプ週間派遣メンバー(ザコパネ大会まで)は、小林潤志郎、小林陵侑、葛西紀明、佐藤幸椰、伊東大貴、中村直幹の6名。
ジャンプ週間は29日(土)にオーベルストドルフで開幕する。

 

スタンディング(12/16時点)


 

1890年と並び128年ぶりの遅い初雪となったこの冬の札幌。
例年1月~3月に開催されてきたTVh杯を、WC派遣メンバーが一旦帰国するクリスマス時期に移してきたのに雪不足で開催延期となってしまった。
現在の大倉山は、圧雪状態での積雪が30cm必要とされるところ15cmしかないらしい。

 

札幌スキー連盟関係者によると、このまま雪が降らなければ年明けの宮の森2連戦(5日:雪印杯、6日:五輪記念)にも影響しかねないとのこと。

 

さすがに年明けは大丈夫と思うけれど・・・