2017/18 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第22戦プラニツァ

総合王者ストッフ 今季9勝目で有終の美

2018年3月25日(日) プラニツァ(SLO)HS240/K200 

31st World Cup Competition 

 カミル・ストッフ(POL)  455.6pt  245.0m  234.5m
 シュテファン・クラフト(AUT)  440.1pt  243.0m  236.0m
 ダニエル-アンドレ・タンデ(NOR)  439.6pt  243.5m  234.5m
 
10  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)  423.2pt  236.5m  223.5m
15  小林 陵侑(土屋ホームスキー部)  404.4pt  220.0m  233.0m
22  葛西 紀明(土屋ホームスキー部)  376.1pt  216.5m  213.0m
29  竹内 択(北野建設)  330.4pt 196.0m  201.5m

オフィシャル リザルト


 

カミル・ストッフが有終の美でシーズンを締めくくった。
既に総合優勝は手中に収めており、残す個人タイトルはフライングとプラニツァ7。
フライングはストエルネンに逃げ切られたが、プラニツァ7はフォルファングから逆転でタイトルを奪った。
最終戦も主役はストッフだった。

 

シュテファン・クラフトには2000/01シーズン以来となるオーストリアの無勝利を阻止する使命が課せられていた。
1本目4位からあと一歩のところまで迫ったが、これまたストッフに阻まれてしまった。
クラフトは今季3度目の2位。これを含めて8回表彰台に上ったが、ディフェンディング・チャンピオンとして臨んだ今シーズンは結局一度も中央に立つことなく終わってしまった。

 

今季12回目のトップ10入りとなった小林潤志郎は、前戦の7位と合わせてフライングを掴んだ感がある。この日も1本目で5位。PBも更新した。
陵侑も2本目でPB230m台に乗せてきた。
小林兄弟は最後まで楽しませてくれた。

 


 

ストッフの勝負強さが際立ったシーズンだった。

 

ただ、2015/16シーズンに15勝を挙げたぺテル・プレヴツのようにシーズンを通じて強さを見せつけたわけではない。
シーズン初勝利はジャンプ週間初戦となる第8戦のこと。それまでの7試合では登壇も3回だけ。第7戦終了時点の順位は4位でトップのフライタークとは227ptの開きがあった。

 

先ほど「ストッフの勝負強さが際立った」と書いた。際立ったのは「強さ」ではなく「勝負強さ」。
それが如何なく発揮されたのがジャンプ週間。ここぞというときにしっかりと勝ちに行く。これぞ勝負強さの為せる業。これぞストッフの真骨頂。
今シーズンはストッフのグランドスラムを抜きにして語ることはできないだろう。

 

そこからいったん調子は下降気味で、五輪期間中もタイミングを大きく踏み外すなど本調子とは程遠かった。ザコパネでは自国のファンの前で2本目に進めない失態もあった。
でも、ストッフは勝負所を知っている。シーズン終盤になると再び調子を上げ、ヴィリンゲン5、RAW AIR、プラニツァ7、そして総合優勝とタイトルをほしいままにした。
2013/14シーズンにプレヴツとフロイントとの三つ巴の争いを制し、さらにはソチ五輪で二冠となったときよりも際立った勝負強さを見せたシーズンだったように思う。

 

好きな選手が活躍するかしないかでシーズンの印象はがらりと変わる。
今シーズンはとにかく楽しかった。好きな選手が活躍しタイトルを総なめにしたから。
一方でコンペティションとしてはどうだったか?

 

シーズン序盤を席巻したフライタークはインスブルックでの転倒でその後は明らかにおかしくなったし、日替わりでヒーローが誕生したノルウェー勢は大事な局面で勝ち切れない感じがあり、クラフトとヴェリンガーは本人にとってもファンにとっても不本意なシーズンで終わってしまった。
試合数が例年より少ない割には初優勝4名を含む11人の優勝者を出したが、ストッフの9勝以外に複数勝利を挙げたのはフライタークとタンデだけ。しかも3勝と2勝。
結果としてストッフに真のライバルはなく、その意味からはコンペティションとしてやや物足りなさも残った感じがする。

 

個人的には大好きなロベルト・クラニエッツとロマン・コウデルカ、そして葛西紀明と伊東大貴が活躍できなかったことも寂しい。
特にコウデルカは3度の予選落ちもあり、出場した12試合でポイント獲得はなんとたったの2試合(20位と30位)のみ。
チェコ自体があまりにも低調で、ポイント獲得はコジセック2試合(13位と21位)とストゥルサ1試合(28位)だけ。個人戦の総ポイントは45pt。団体で2本目に進んだのも1試合だけで、その50ptを加えても95ptとあまりにひどい。
特異な形状のヘルメットと、開幕戦でヤクブ・ヤンダが引退したこと以外は何も印象に残っていない。

 

葛西が個人戦で一度も表彰台に立てなかったのは2012/13シーズン以来のこと。
相変わらずアプローチスピードが出ず、スリップ現象も改善されていない。
「持っていた引き出しは空っぽ」としゼロから作り直す覚悟だそうだ。復活を期待したい。
大貴は開幕戦での転倒による右肩亜脱臼が、実は選手生命を脅かすほどの重傷だったらしい。結局出場は2試合のみ。
転倒したジャンプは上位陣とも遜色のない126.0mの飛距離で着地もきれいに決まっていた。良いシーズンの入り方ができていただけにホントに残念。
大貴の他にも何人かの選手が荒れたバーンの餌食になったが、開幕を雪の少ないヴィスワで迎えることに無理があったようにも思う。

 

一方で小林潤志郎、小林陵侑そして佐藤幸椰が大いに楽しませてくれた。
特に潤志郎は開幕戦でいきなりWC初優勝。それだけでも驚きなのに、そこから9試合連続のトップ10。しかもジャンプ週間総合3位にあと0.2pまで迫った。
ただ、結局表彰台に上ったのは優勝した1試合のみ。もっとやれたと考えるのは欲張りすぎか?
小林陵侑は、昨季は使われ続けたにもかかわらず結局一度もポイントを取ることができなかったが、その経験が今季に繋がった。
佐藤幸椰は、国内戦を観る機会のない方達にしてみれば突然現れたような印象があるかもしれないが、国内に置いておくのはもったいない選手の内の一人。どうか彼も使い続けてあげてほしい。

 

さて、長いシーズンが終わった。
最後に一言。
「団体戦多すぎ!」

 

 

 2017/18 ワールドカップ 総合順位                      
 1   カミル・ストッフ   POL  1443  9勝
 2   リヒャルト・フライターク   GER  1070  3勝
 3   ダニエル-アンドレ・タンデ   NOR  985  2勝
 4   シュテファン・クラフト   AUT  881  最高位2位
 5   ロベルト・ヨハンソン   NOR  840  1勝
 6   アンドレアス・ヴェリンガー   GER  828  1勝
 7   ヨハン-アンドレ・フォルファング   NOR  821  1勝
 8   アンドレアス・ストエルネン   NOR  665  1勝
 9   ダヴィド・クバツキ   POL  633  最高位2位
 10   マルクス・アイゼンビヒラー   GER  597  最高位2位
 11   小林 潤志郎 (雪印メグミルクスキー部)  JPN  568   1勝 
12  アンデシュ・ファンネメル  NOR   500   1勝 
17  イエルネイ・ダミヤン  SLO  379   1勝 
22  アンツェ・セメニッチ  SLO  256   1勝 
 24   小林 陵侑 (土屋ホームスキー部)  JPN  187  最高位6位 
 26   葛西 紀明 (土屋ホームスキー部)  JPN  164  最高位5位 
 31   竹内 択 (北野建設)  JPN  89   最高位15位 
 45   佐藤 幸椰 (雪印メグミルクスキー部)  JPN  41   最高位11位 
 63   伊東 大貴 (雪印メグミルクスキー部)  JPN   最高位25位 
 69   中村 直幹 (東海大学)  JPN   最高位29位 

オフィシャル スタンディング

 

 2017/18 ワールドカップ 大会別優勝者                     
1  2017.11.19   ヴィスワ LH  小林 潤志郎
2  2017.11.26   ルカ LH  イエルネイ・ダミヤン
3  2017.12.02   ニジニ・タギル LH  リヒャルト・フライターク
4  2017.12.03   ニジニ・タギル LH  アンドレアス・ヴェリンガー 
5  2017.12.10   ティティゼー-
 ノイシュタット 
LH  リヒャルト・フライターク
6  2017.12.16   エンゲルベルク  LH  アンデシュ・ファンネメル
7  2017.12.17   エンゲルベルク LH  リヒャルト・フライターク
8  2017.12.30   オーベルストドルフ LH  カミル・ストッフ
9  2018.01.01   ガルミッシュ-
 パルテンキルヘン
LH  カミル・ストッフ 
10  2018.01.04   インスブルック LH  カミル・ストッフ
11  2018.01.06   ビショフスホーフェン LH  カミル・ストッフ
12  2018.01.13   タウプリッツ-
 バートミッテルンドルフ 
FH  アンドレアス・ストエルネン 
13  2018.01.14   タウプリッツ-
 バートミッテルンドルフ 
FH  キャンセル
14  2018.01.28   ザコパネ  LH  アンツェ・セメニッチ 
15  2018.02.03   ヴィリンゲン  LH  ダニエル-アンドレ・タンデ  
16  2018.02.04   ヴィリンゲン  LH  ヨハン-アンドレ・フォルファング 
17  2018.03.04   ラハティ LH  カミル・ストッフ
18  2018.03.11   オスロ LH  ダニエル-アンドレ・タンデ
19  2018.03.13   リレハンメル LH  カミル・ストッフ
20  2018.03.15   トロンハイム LH  カミル・ストッフ 
21  2018.03.18   ヴィケルスン FH  ロベルト・ヨハンソン
22  2018.03.23   プラニツァ FH  カミル・ストッフ
23  2018.03.25   プラニツァ FH  カミル・ストッフ

 

 2017/18 4ヒルズ・トーナメント 総合順位                  
 1   カミル・ストッフ  POL   1108.8 
2  アンドレアス・ヴェリンガー   GER   1039.2 
3  アンデシュ・ファンネメル   NOR   1021.3 
4  小林 潤志郎  JPN   1021.1 
5  ロベルト・ヨハンソン  NOR   1009.4 
 22   小林 陵侑 JPN  815.9 
25  竹内 択 JPN  786.7 
40  葛西 紀明 JPN  350.7 
64  作山 憲斗 JPN  85.4 

オフィシャル・スタンディング

 

 2017/18 フライング 総合順位                         
 1   アンドレアス・ストエルネン    NOR     257 
=2  カミル・ストッフ  POL   250 
=2  ロベルト・ヨハンソン NOR 250 
4  シュテファン・クラフト AUT 214 
5  ダニエル-アンドレ・タンデ  NOR 200 
9  葛西 紀明 JPN 104 
 14   小林 潤志郎 JPN 70 
17  小林 陵侑 JPN 48 
=39  佐藤 幸椰 JPN 11 
=39  竹内 択 JPN 11 

オフィシャル スタンディング

 

 2017/18 ヴィリンゲン・ファイブ 総合順位                   
 1   カミル・ストッフ  POL   657.8 
2  ヨハン-アンドレ・フォルファング   NOR   650.0 
3  ダニエル-アンドレ・タンデ  NOR   633.5 
4  ロベルト・ヨハンソン  NOR   614.2 
5  アンドレアス・ヴェリンガー   GER   607.1 
 23   佐藤 幸椰 JPN  510.3 
32  中村 直幹 JPN  371.9 
39  作山 憲斗 JPN  263.0 
47  原田 侑武 JPN  225.3 
54  内藤 智文  JPN  132.6 

オフィシャル・スタンディング

 

 2017/18 RAW AIR トーナメント 総合順位                  
 1   カミル・ストッフ  POL   2590.6 
2  ロベルト・ヨハンソン NOR  2553.6 
3  アンドレアス・ストエルネン  NOR 2508.3 
4  シュテファン・クラフト AUT 2480.9 
5  ダニエル-アンドレ・タンデ NOR 2408.3 
 11   小林 陵侑 JPN 2140.1 
16  小林 潤志郎 JPN 2025.7 
21  佐藤 幸椰 JPN 1774.9 
24  葛西 紀明 JPN 1631.8 
43  竹内 択 JPN 848.9 

オフィシャル スタンディング

 

 2017/18 プラニツァ・セブン 総合順位                     
 1   カミル・ストッフ  POL   1538.2 
2  ヨハン-アンドレ・フォルファング   NOR   1528.8 
3  ロベルト・ヨハンソン  NOR  1512.5 
4  シュテファン・クラフト  AUT  1477.8 
5  リヒャルト・フライターク  GER  1471.7 
7  小林 潤志郎  JPN  1428.8 
9  小林 陵侑  JPN  1413.9 
 13   葛西 紀明  JPN  1374.0 
31  佐藤 幸椰  JPN  705.0 
32  竹内 択  JPN  679.0 

オフィシャル スタンディング

 

 2017/18 団体戦 大会別優勝国                         
 1  2017.11.18  ヴィスワ  LH   ノルウェー   日本5位 
2 2017.11.25  ルカ LH  ノルウェー  日本3位 
3 2017.12.09  ティティゼー-ノイシュタット LH  ノルウェー   日本6位 
4 2018.01.27  ザコパネ LH  ポーランド  日本5位 
5 2018.03.03  ラハティ LH  ドイツ  日本5位 
6 2018.03.10  オスロ LH  ノルウェー  日本5位 
7 2018.03.17  ヴィケルスン FH  ノルウェー  日本6位 
8 2018.03.24  プラニツァ FH  ノルウェー  日本5位 

 

 2017/18 ネイションズカップ                          
 1   ノルウェー   7149 
 2   ドイツ   5976 
 3   ポーランド  5795 
 4   オーストリア    3642 
 5   スロベニア   3223 
6  日 本 2659

オフィシャル スタンディング