2019/20 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第6戦エンゲルベルク

ストッフ 目覚める 陵侑4位 竹内16位

2019年12月21日(土)エンゲルベルク(SUI)HS140/K125

9th World Cup Competition

1  カミル・ストッフ(POL) 288.7pt
2  シュテファン・クラフト(AUT) 287.0pt
3  カール・ガイガー(GER) 277.6pt
 
4  小林 陵侑(土屋ホームスキー部) 274.1pt
16  竹内 択(team taku) 255.7pt
29  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 227.2pt
30  岩佐 勇研(東京美装グループスキー部) 223.6pt
48  伊藤 謙司郎(雪印メグミルクスキー部) 99.9pt
53  栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部) 予選落ち

予選リザルト オフィシャル リザルト


 

カミル・ストッフが目覚めた。
今季ここまでの目立った成績は開幕戦ヴィスワでの3位表彰台のみ。それ以外はトップ10争いがせいぜいのところだった。
それが、この日は2位となった予選も含めて3本の素晴らしいパフォーマンスを見せた。
元々ピーク調整のうまい選手だとは思うが、ジャンプ週間を控えてしっかりと調子を上げてきたのはさすがだ。

 

なお、ストッフは通算34勝目となり、WC歴代勝利数で歴代5位になった。

  1. 53勝 グレゴア・シュリーレンツァウアー
  2. 46勝 マッチ・ニッカネン
  3. 39勝 アダム・マリシュ
  4. 36勝 ヤンネ・アホネン
  5. 34勝 カミル・ストッフ

 

しかし、個人的にはこの日のベスト・ジャンプはクラフトの2本目だったように思う。
着地こそややバランスを崩しかけたが、フライトの美しさは際立っていた。
クラフトは優勝-2位-2位ときて3戦連続の表彰台。スタンディングのトップに浮上した。

 

金曜の予選はジャンプ場周辺が立ち入り禁止となるほどの強風に見舞われキャンセルとなり、この日に順延された。
一転してこの日は穏やか。風の状況を気にすることなく見ることができた試合は今季初めてではないだろうか。

 

そんな好コンディションの中、ストッフとクラフトの差はわずかに1.7pt。
大接戦だったわけだが、ちょっと残念なのはエンゲルベルクはいつもカメラアングルがあまりよろしくないということ。

ただ、肝心の競技の映像はカメラの位置があまりよろしくない。
特に着地がかなり後方から小さくしか映し出されない上に高さも足りないので、to beatのラインの手前で落ちたかそれとも超えたかが何ともわかりにくい。

2018/19 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第6戦エンゲルベルク

このような大接戦の場合は、必然的にto beatラインの手前か・オンラインか・超えたかを凝視することになる。
でも、映像では肝心のところが見えにくく、結果として面白さが若干スポイルされてしまった感がある。

 

日本チームは、当初の予定通りWC開幕メンバーは陵侑を除いていったん帰国。
代わってここにはCOC開幕メンバーがにエントリーされた。
今季初めてイエロービブを纏って登場した小林陵侑は、1本目はやや踏み外したようにも見え11位と出遅れたが、2本目で捲ってあれよあれよと4位に浮上。

 

前戦クリンゲンタールでの今季初優勝の際の報道によると、序盤戦の陵侑は宮平コーチ曰く ”踏み切りから空中姿勢へ移る際に早く前傾を掛け過ぎていたことがロスの原因になっていた” が、それが改善されつつあるらしい。
前傾が深くなっていたのはGP白馬の頃から見られていたけれど、私はそれを勝手に「進化」と捉えていた。

「前戦では「気のせい?」と書いたが前傾は明らかに深くなっているように見え、昨季の遺産で食いつないでいこうとしているわけではなことがうかがえる。
昨季の陵侑は、おそらく多くの選手の研究対象となり、そのコピーを試みた選手も多いのでないかと思われる。
でも陵侑は既にバージョンアップしている。そう簡単には追いつけそうにないことを、この2戦で世界に示したのではないだろうか。

2019 FISグランプリジャンプ 男子個人第6戦白馬

やはり素人が安易に技術的なことに言及するもんじゃないね。実際は「進化」ではなく「悪化」だったわけだから。
優勝したクリンゲンタールの映像を改めて見返してみると、元々の陵侑のスタイル通りに「ユ」の字型に程良く板と体が離れていることがよくわかる。
ベストな状態に戻りつつあるということで、これまたジャンプ週間が楽しみだ。

 

COCチームは、今季ここまでのCOCスタンディングで竹内択と佐藤慧一がワンツー、岩佐勇研が8位と健闘ぶりを見せつけていた。
けれど個人的には、WCではこの3人がポイントゲット、残る伊藤謙司郎と栃本翔平は予選突破が現実的な目標となるんじゃないかなと思っていた。

 

いやいや、少なくともたっくんには謝らなくてはなるまい。
14位で予選を通過し、本選は見事に16位。
竹内がWCで20位以内に入ったのは、ちょうど2年前の2017/18エンゲルベルクでの20位まで遡る。
竹内と慧一はこのままWCチームに残りに、ジャンプ週間・バルディフィエンメ・ザコパネにエントリーされることが決まっている。これもまた楽しみだ。

 

一方で葛西紀明がCOCに回ることとなった。
葛西は、この夏に16年ぶりにCOCにエントリーしているが、このときはクリンゲンタールの2試合に出場し28位と15位だった。

記録をひも解くと、葛西のCOC出場は2003年の札幌大会2戦のみ。
(札幌でCOCを兼ねて開催されるSTVカップやHTBカップには何度か出場しているが、COCにはエントリーしていない)
出場すれば実に16年ぶりのこととなる。

ミタカカップ第19回妙高サマージャンプ大会

 

ああ、それよりも、ジャンプ週間の出場が25年ぶりに途絶えることとなってしまった。
残念ではあるが、今の状態であれば仕方がないだろうね。