ミラノ・コルティナ オリンピック2026 女子個人ラージヒル

五輪初の女子ラージヒル ストロームが二冠達成 伊藤有希は「幼い頃からの夢は達成できた」

Large Hill Individual
  • 2026年2月15日(日)
  • ブレダッツォ ジャンプ競技場
  • HS141/K128

Official Results

 アンナ-オディヌ・ストローム(NOR) 284.8pt
 エイリン‐マリア・クバンダル(NOR) 282.7pt
 ニカ・プレヴツ(SLO) 271.5pt
 
4  フリダ・ヴェストマン(SWE) 265.4pt
5  シリエ・オプセット(NOR) 262.6pt
6  ハイディ-ディレ・トゥルーセル(NOR) 259.1pt
7  リサ・エダー(AUT) 257.6pt
8  丸山 希(北野建設SC) 257.0pt
 
14  伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 236.9pt
15  勢藤 優花(オカモトグループ) 235.2pt
16  高梨 沙羅(クラレ) 234.5pt

リザルト


「オリンピックでメダルを獲るっていうのは達成できたんじゃないかなと思います」

昨年の夏は過去に例を見ないほどの成績不振に陥った伊藤有希。
しかしこれは、冬にピークを合わせるために敢えてサマートラックに合わせないようにしていたという戦略によるものだったという。

その言葉の通り、冬シーズンが始まると序盤は確かに成績が上を向いた。
しかし、それも長くは続かず。ワールドカップでは自身過去に一度しかなかった予選落ちもあった。
決して万全の状態ではないまま臨んだオリンピック。個人ノーマルヒルで17位。混合団体ではメンバーに選ばれなかった。

それでも、舞台がラージヒルに移ると復調の兆しが見えた。
1回目の公式練習の1本目で、他の選手たちが120mを越えられない中、断トツの138.0mを繰り出した。
2回目の公式練習でも1本目で134.5mで2位。2本目も131.0mで2位。公式練習全6本で3本の130mオーバーを見せた。

迎えた個人ラージヒル。
伊藤有希としては珍しく、師匠の葛西紀明がよくやるように本戦前の試技を飛ばなかった。公式練習での好感触を崩したくなかったからだ。
いつものルーティーンとは違う形で試合に臨んだが、功を奏したか1本目は表彰台まで9.8pt差の8位につけた。

が、メダルに近づいたことで逆に力みに繋がっただろうか。2本目は19位の得点で結果は14位。
4度目のオリンピック。これまでの最高位は個人では2014ソチ大会の7位。混合団体では2022北京の4位。まだメダルを手にしたことがない。

そんな伊藤有希が、試合後に口にしたのが冒頭の言葉だ。
「今まで私がさせていただいた経験と、携わってくださった方々が私にとって金メダル以上に大切なものだということを感じたので、幼い頃からの夢であるオリンピックでメダルを獲るっていうのは達成できたんじゃないかなと思います」

4回目のオリンピックはどんな舞台でしたかと聞かれて、「今までの五輪で空が一番キレイに見えた気がします」と答えたまでは何とか笑顔を保っていた。
でも、「最後﹅﹅に家族全員でオリンピックに来ることができてすごく嬉しい。幸せでした」と、元スキー選手である両親や弟のことを話し出すと涙を抑えられなくなった。

今まで伊藤有希には何度も泣かされてきたが、こうしてカメラの前で伊藤有希が涙する姿を見たのは初めてのような気がする。
いつの頃からか、自分のことは脇に置き、仲間を立て仲間を気遣うチームリーダーとして気丈にふるまい続けてきた。泣きたいことも多々あっただろう。

今あらためて思うが、伊藤有希は日本のスポーツ史に残る素晴らしいオリンピアンであり、素晴らしいアスリート。まさに不世出の選手だと断言できる。

「最後」という言葉がオリンピックだけを指すのか、他のもっと大きな意味を指すのかは分からない。
今は、ただ、このオリンピックに対して「おつかれさま」という言葉を伝えたい。

2014ソチ大会でオリンピック種目となった女子スキージャンプ。
当初は個人ノーマルヒルの一種目だけ。結果が良くても悪くても、次の試合まで4年待たなければならなかった。

前回の北京大会では混合団体が加わり、さらに今大会からは個人ラージヒルが新たに採用された。
同じ大会の中で複数の試合に挑める環境が整ったことで、選手にとっては巻き返しの機会が生まれると同時に、好結果をさらなる好結果につなげる可能性も広がった。

個人ノーマルヒルの金メダリストのアンナ-オディヌ・ストロームは、その好結果をさらなる好結果につなげて今大会個人種目で二つ目の金メダルを獲得した。
女子ラージヒルでの最初の金メダリストであり、個人種目で複数のメダルを狙える環境が整った最初の大会でのいきなりの二冠達成。

1本目終了時点では4位までをノルウェーが独占。
トップだったエイリン‐マリア・クバンダルが2.1pt差の2位となり、初出場で見事に銀メダルを獲得。

個人ノーマルヒルでは銀メダルを獲得するも失意の涙を見せたニカ・プレヴツは銅メダル。
圧倒的な金メダル候補だったが、個人種目では最後まで本来の姿を世界に披露することはできなかった。
それでも、2位の得点だった2本目は納得の出来だったようで「このメダルに誇りを持てる」と笑顔が見えた。

もう一人の金メダル候補だった丸山希も、この日は本来の姿を見せることができたとは言い難い。
それでも「すごく楽しんで飛べたので自分的には満足」と、いつも通りのポジティブなコメント。さらに「こんなにすがすがしく終われると思っていなかったので満足です」と恐ろしいまでのポジティブさ。

対照的に涙のコメントとなった勢藤優花。現地入り後は「自分で自分のことを苦しめている日がすごく続いて」ずっと不安定な精神状態にあったことを明かした。
2022北京大会後に引退も考えたがメダルを取るためにもう一度目指した舞台。「次のジャンプ人生や、今後の人生に繋がる経験ができた」という言葉に胸が熱くなる。

試合は、1本目の途中から急激に追い風が強まった。
その渦中で飛ばされた高梨沙羅や最後のオリンピックとなるカタリナ・シュミットはかわいそうだった。
普段のワールドカップであれば、ゲートを変えないまでも、せめてシグナルコントロールを行うであろう場面だったように思うのだが… 
五輪ならではのタイトなスケジュールゆえのことだろうか。

高梨沙羅は、今季ワールドカップにおいて、出場した22試合中14試合でトップ10に入っており、3度の4位もある。メダルに届かないまでも入賞圏内は狙える力は十分にあった。
そのせいだろうか、試合後には珍しく「悔しい気持ちがある」と率直な言葉を残した。

ただ、同時に「悔しさをバネに、次に繋げていけたらなと思う」と、4年前は全く異なるポジティブな言葉で大会を締めくくった。
そのことが何よりもうれしい。