スキージャンプFISワールドカップ2022/23男子個人第11戦インスブルック

クバツキがグランネルのグランドスラムの夢を打ち砕く

2023年1月4日(水)インスブルック(AUT)HS128/K120

12th World Cup Competition

1  ダヴィド・クバツキ(POL) 265.2pt フラ
2  ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR) 261.7pt チェコン
3  アンツェ・ラニセク(SLO) 258.8pt ベルショー
 
25  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 208.7pt ジワ
32  小林 陵侑(土屋ホームスキー部) 106.1pt ザイツ
34  小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) 96.6pt コス
39  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) 90.1pt ヴェリンガー
49  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 71.7pt チョフェニック
   佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 予選敗退  

予選 マッチアップ リザルト


昨シーズンは強風によりキャンセルとなりビショフスホーヘンでの順延開催となったジャンプ週間第3戦インスブルック。

この台は、すり鉢状の形状のせいか不規則に風が舞いやすい。加えてHS128というラージヒルとしては小ぶりな台でK点からHSまでは8mとノーマルヒル並みの短さなのでゲート設定が難しい。
ゲートを1段上げるとあっという間にHSを超えてしまったり、逆に下げるとたちまちK点に届かなくなったりするので運営にとっては非常に悩ましい。

この日の運営もまさにそんな感じ。基本は追い風傾向だが割と頻繁に向かい風が混じるので渋めにゲートを設定せざるを得ない。
その結果、K点を超えることがまず難しく、日本勢などは一人としてそこに届かなかった。

ドイツ・ラウンドで圧巻の4本により2連勝を飾ったグランネル。その素晴らしいパフォーマンスからグランドスラムの期待も高かった。
しかし、難攻不落のベルクイーゼルはグランネルに試練を与える。予選で13位、1本目でも6位と振るわない。

一方トーナメントを2位で追う予選トップのクバツキは、1本目をトップで折り返す。
この時点で、26.8ptあったトーナメントの差は一気に14.0ptにまで縮まった。
グランネルにとっては、2本目の出来如何によってはグランドスラムはおろかゴールデンイーグルにまで黄色信号が灯りかねない。

ところが、天はグランネルを見放さなかった。
2本目で絶好の向かい風を引き当てHSを5.0mも超える133.0mまで飛距離を伸ばして見せた。そして完璧なテレマーク。
それまで、ややスペクタクル性に欠けていた試合が一瞬にして彩られ、グランネルはカレントリーダーに。

正直なことを言うと、グランネルのグランドスラムを望む気持ちは希薄だった。
彼は好きな選手の一人だけど、グランドスラムは10年に一度、いや20年に一度、あるいはもっともっと達成の難しい大偉業であってほしいと願う気持ちが強くある。

ただ、この場面でこんな凄まじいスーパージャンプを繰り出す姿を見るとさすがに気持ちも揺らぐ。
続くクラフト、リンビーク、ストッフ、ラニセクをリーダーボードの前で見送ったグランネル。
迎えるはラストのクバツキ。

クバツキは121.5mまでしか伸ばせず4番手の得点にとどまった。でも1本目の貯金が活き、3.5pt差で逃げ切りに成功。
かくしてグランネルのグランドスラムは夢と消えた。
それでもジャンプ週間総合の追い上げを3.5ptしか許さなかったのは大きい。
あとはゴールデンイーグルに邁進するのみ。

ガイガーが予選で沈むなど、やはり難しかったインスブルック。
そんな中でもクバツキ、グランネル、ラニセクの三強は揺るぎなかったし、四天王のクラフトも4位で追随した。

ただ、もう一人の今季の強者ジワは10位とやや振るわなかった。
このジワは今、スーツ論争の渦中にある。
確かに、股下は少し気にはなってはいたけれど…

スーツのルールが大きく変わった今季。その対応によりチーム間・選手間で明暗が分かれている部分はあると思う。
不振の日本チームは、ここにきてチーム内からもそのあたりに関するコメントが聞かれるようになってきた。

報道によると、チームに帯同する作山憲斗コーチは「マテリアル合戦みたいになり始めている」と語ったとあり、小林陵侑も「言い訳にはしたくないが、国として出遅れている」とある。

Jスポのゲスト解説を務めた全日本コーチの岡部孝信氏は、チームがザコバネをスキップして帰国することを明言した。
2週間ほど日本に滞在することになり、その間は国内戦もあるのである程度まとまった本数を飛ぶことは可能だと思われる。

でも、マテリアルの調整はどうだろう? この期間で対応できるのだろうか?
仮に一旦ここで対応できたとして、欧州に戻れば日進月歩のマテリアル合戦に再び身を投じることとなる。
起死回生はあるのか-

4ヒルズ・トーナメント暫定順位

1  ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR) 877.8pt
2  ダヴィド・クバツキ(POL) -23.3
3  アンツェ・ラニセク(SLO) -54.3 1↑
4  ピオトル・ジワ(POL) -70.3 1↓
5  カミル・ストッフ(POL) -79.8 3↑

4HT総合順位

WC総合順位