第48回HTBカップスキージャンプ競技大会

渡部陸太 悪天候の中シニア初優勝

2021年1月30日(土)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123

男子組(基本ゲート1本目12、2本目10)

1  渡部 陸太(東京美装グループスキー部) 214.7pt
2  伊藤 将充(土屋ホームスキー部) 208.1pt
3  栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部) 205.7pt
 
4  渡部 弘晃(東京美装グループスキー部) 178.1pt
5  藤田 慎之介(東海大学) 175.8pt
6  山元 豪(ダイチ) 165.5pt

リザルト

強い風が吹く予報があった大倉山。
9時の時点ではまだ穏やかだったが、9時30分に試技が始まると徐々に風が強まった。ゲートはどんどん下げられ、途中からは吹雪。最後の2人を残して中断した。

本戦開始予定は10時30分ではあったが、11時まで待機するとのアナウンスが流れた。
試技はキャンセルとなり、本戦が始まったのは11時30分。
しかし、天候は回復せず大荒れのなか試合は進んだ。

K点付近では強い向かい風があるが、上の方では相当風が舞っているらしい。
風速は最大で+3.49m/s 最小で±0.0m/s
福引試合の様相を呈してはいるが、それでもリザルトの上位には力のある者たちが並んだ。

渡部陸太は1本目で最長不倒となる138.5mを飛びトップで折り返した。
優勝が懸かった2本目。
思いだされたのは2019年の夏。

選手たちからのため息は陸太のときにも起こった。

陸太がカレントリーダーに上がってきた陵侑に勝つには87.0mぐらいは必要だったはず。この時点での2本目の最長不倒は88.5mだったので、簡単ではないとはいえ決して困難ともいえないミッション。

しかし、結果は80.0m。先日の名寄ほどではないにしてもこの日も風のいたずらは多々あった。でもそれよりも、この場面の陸太は緊張によるところが大きかっただろうか。

第37回札幌市長杯宮の森サマージャンプ大会

この試合で陸太は1本目でトップ。
5位と出遅れた小林陵侑が2本目で猛追してきたが、その陵侑を抑えて優勝できるチャンスだった。
しかし、2本目は28位のスコアに終わり、結局2位で試合を終えた。

最後の6人で視界を奪われるほどの吹雪となった中、陸太は最終ジャンパーとしてゲートに着いた時に2年前の夏を思い出しただろうか。
「極限状態でも動じない」と菅野総監督。
評する通りに陸太は「自分のジャンプをすればどうにかなる」として、今度こそしっかりと勝利をつかんだ。

日大を経て社会人3年目。
ついにシニア初優勝。

男子組

1 渡部 陸太(東京美装グループスキー部)
2 伊藤 将充(土屋ホームスキー部)
3 栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部)
4 渡部 弘晃(東京美装グループスキー部)
5 藤田 慎之介(東海大学)
6 山元 豪(ダイチ)

渡部陸太は佐藤幸椰と同期だ。
札幌日大高校の頃だろうか、二人でワールドカップ札幌大会を観戦する姿を何度か見かけたことがある。
その幸椰はワールドカップで2勝を挙げ、今や代表チームのエース格。
友として活躍を喜ぶ気持ちはある反面、ライバルとしての悔しさもあったことだろう。

陸太の3位は立派。幸椰に負けんな!

第30回吉田杯ジャンプ大会

2014年にどういう思いでこれを書いたかは今となっては定かではないが、幸椰とのライバル関係において、何故かすごく気になる存在であったことは確かだ。
だから、この日の勝利はとてもうれしい。
少し差はついたけれど、まだまだ追いつき追い越せる。

表彰式


例年はFISコンチネンタルカップを兼ねて行われるこの大会。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で国内での男女ワールドカップと共にコンチネンタルカップ札幌大会が中止となったために、大会名から「国際」の文字が外されて純粋な国内大会として開催された。

外国人選手たちが出場しないからというわけでもないのだろうけど、HTBは大会前からSNSを通じて高校生選手たちをフィーチャーしていた。

その企画に便乗して、この試合に出場した高校生6名を紹介しておく。
いずれも、日本ジャンプ界の将来を担う精鋭。
この日も信じられないほどの悪条件の中、果敢に戦いに挑んでいた。

26 辻 創太(東海大学付属札幌高校)
27 森野 幹登(札幌日本大学高校)
28 中村 正幹(東海大学付属札幌高校)
31 川上 航太郎(札幌日本大学高校)
36 高田 雄生(東海大学付属札幌高校)
38 千葉 大輝(札幌日本大学高校)

なお、この試合はyoutubeで生配信された。
全国のジャンプファンがその全貌を知ることとなった訳だが、よりによって悪条件の試合。
試合開始は1時間遅れ何度も中断があり、転倒者が出たり得点集計のトラブルもあった。
おかげで40名ほどしか出場していないのに、2時間12分もの時間が費やされた。

「これぞ大倉山という試合だ」なんて書き込みもあったけれど、それは違う。

こんな試合はめったにない。
試合ができたことが、しかも2本飛べたことが奇跡のような天候だった。本来なら中止となるような最悪のコンディションだった。だから、全然いつもの大倉山ではない。
こんな特殊な条件下の試合をつかまえて、「ほらね。やっぱり大倉山ってクソ台でしょ」などと不埒なことを言う奴が現れないことを祈りたい。

今季はただでさえ試合が少ない。
だから中止は避けたかっただろうし避けてほしかった。
優勝インタビューで陸太は言った。
「2本飛んだうえで優勝できて本当にうれしいです。ありがとうございます」

そのとおりだと思う。
2本できてホントに良かった。
お客さんにとっては少し過酷な観戦にはなってしまったけれど。

この天気の中よく集まった天気さえ良ければもっと集まっただろう。

毎年、外国人選手たちにいじりまくられるon
来年は、何としても外国人選手たちにいじりまくられるonが見たい。
いや、コンチネンタルカップが見たい。