スキージャンプFISワールドカップ2025/26男子個人第18戦札幌

ドメン・プレヴツが見事な空中技術で今季9勝目 小林陵侑は札幌でまたも表彰台を決める

21st World Cup Competition
  • 2026年1月18日(日)
  • 札幌(JPN)
  • Large Hill Individual
  • HS137/K123

Official Results

1  ドメン・プレヴツ(SLO) 277.7pt
2  小林 陵侑(TEAM ROY) 274.2pt
3  ダニエル・チョフェニック(AUT) 265.8pt
 
6  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 248.4pt
13  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 232.4pt
17  内藤 智文(山形市役所) 222.8pt
24  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) 212.0pt
27  小林 潤志郎(Wynn.) 205.9pt
33  佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部) 95.2pt
34  小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部) 95.0pt
   葛西 紀明(土屋ホームスキー部) 予選56位
   山元 豪(ダイチ) 予選57位

予選リザルト 本戦リザルト


前日は、中村直幹が自身最高位の2位、二階堂蓮が3位と、20年ぶりに日本勢がダブル表彰台となり大いに盛り上がったワールドカップ(WC)札幌大会。

チームメートの活躍を喜ぶ一方で、負けていられないという思いはもちろんあったという小林陵侑。
その思いを見事に結果で表した。

HS付近での争いとなったハイレベルな混戦のなか、ドメン・プレヴツに対し5.2pt差の2位で折り返した2本目は138.5mを飛び1位の得点。プレヴツを3.5pt差にまで追いつめた。

この日は前夜に降った雪の質のせいか、着地で足を取られる選手が多かった。
が、陵侑の2本目は微動だにせず、全体の最高点である58.0ptを叩きだした。
このランディングを見れただけでも、ここに観戦に来た価値がある。そう思わせるに十分すぎるほどの凄まじさがあった。

前日の試合で5位となったことで、2020年から続いていた札幌大会での連続表彰台が途絶えた。
でも、この日2位となったことで、少なくとも毎年1試合は札幌で表彰台に乗るという記録は続いたことになる。

小林陵侑の札幌大会全リザルト

2016.01.30(土曜) 20位
2016.01.31(日曜) 36位
2017.02.11(土曜) 46位
2017.02.12(日曜) 予選落ち
2019.01.26(土曜) 5位
2019.01.27(日曜) 3位
2020.02.01(土曜) 15位
2020.02.02(日曜) 3位
2023.01.20(金曜) 優勝
2023.01.21(土曜) 3位
2023.01.22(日曜) 優勝
2024.02.17(土曜) 2位
2024.02.18(日曜) 2位
2025.02.15(土曜) 優勝
2025.02.16(日曜) 優勝
2026.01.17(土曜) 5位
2026.01.18(日曜) 2位
 ※ 2018年、2021年、2022年は開催なし。

なお、2026.01.07(土曜)は前述の通り中村直幹が2位、二階堂蓮が3位。2020.02.01(土曜)は佐藤幸椰が優勝。
よって、日本勢は札幌大会において12試合連続で表彰台を獲得していることになる。

Top10 & Team Japan

1 ドメン・プレヴツ(SLO)
2 小林 陵侑(TEAM ROY)
3 ダニエル・チョフェニック(AUT)
4 マニュエル・フェットナー(AUT)
5 ヤン・ヘール(AUT)
6 二階堂 蓮(日本ビールスキー部)
7 マキシミリアン・オルトナー(AUT)
8 シュテファン・エンバッハ―(AUT)
9 フィリップ・ライムント(GER)
10 ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR)
13 中村 直幹(Flying Laboratory SC)
17 内藤 智文(山形市役所)
24 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部)
27 小林 潤志郎(Wynn.)
33 佐藤 慧一(雪印メグミルクスキー部)
34 小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部)
予選56位 葛西 紀明(土屋ホームスキー部)
予選57位 山元 豪(ダイチ)

1本目で137.5mを飛びトップで折り返したドメン・プレヴツ。
2本目は目前で小林陵侑がHSオーバーの見事なパフォーマンスを見せた。
陵侑の逆転か、プレヴツの逃げ切りか。

大倉山の観衆が固唾をのんで見守るなか空中に飛び出したプレヴツは、なんと激しくローリング。
この日の大倉山はかなり穏やか。風にあおられたわけではなく「攻撃的に出過ぎた」ことによるものらしい。

完全にバランスを失っており、空中分解して墜落してもおかしくない状態で、観ているこちらも思わず「あっ!」と声が出た。

しかし、ここからがドメン・プレヴツの真骨頂。
稀代の空中技術を存分に見せつけ瞬時にこれを修正すると、フライト後半は何事もなかったかのように飛距離をグイグイと伸ばした。

届いた先はHSに迫る136.5m。テレマークも普通に入れて見せる凄み。
3位の得点ではあったが、小林陵侑の追撃をかわすには十分だった。
今季9勝目。通算18勝目。札幌では3勝目。

一人だけ違う競技をしているのかと思わせるぐらいに飛行曲線が低いけど、それでいてグライダーのように斜面をなめながらヒルサイズを超えてくる姿には思わず驚きの声を上げてしまった。

2015/16 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第14戦札幌

今は随分と”大人になった”ので、かつてのようなイケイケぶりもなく、よって地を這うような低空飛行でもなくなった。
それでも空中でのスピードは相変わらずで、カメラで追うのが難しい選手であることを思い出させてくれた。

スキージャンプFISワールドカップ2023/24男子個人第20戦札幌

2023/24札幌での勝利は、プレヴツにとって2018/19ヴィケルスン以来となる5シーズンぶりの勝利だった。
2018/19の頃は、V字に開いたスキーの間から顔が出るほどに前傾を掛ける超攻撃的なスタイル。一発屋感があって、正直、今のように安定して勝利を重ねるような選手になるとは全く想像していなかった。

それが今や、2位の小林陵侑に467ptの差をつけてWC総合トップをひた走る。

兄ペテルがジャンプ週間制覇してから10年の今年、ドメンもゴールデンイーグルを手にした。そのシーズンにペテルはWC総合優勝に輝いている。
ドメンも同じことを成し遂げようとしている。その前に兄が成し遂げられなかったオリンピックの金メダルを獲ることになるかもしれない。

表彰式

前日と同じくトップ10に5名を送り込んだオーストリア。
しかも、ダニエル・チョフェニックが表彰台を獲得。
チョフェニックは、優勝2回を含む今季4度目の表彰台。

そして、今季限りでの引退を表明しているマニュエル・フェットナーが前日の7位からさらに順位を上げて4位に入った。
引退を早めに発表してくれることにより、ファンは “最後の雄姿” と知ったうえで目に焼き付けることができる。

その意味では、同じく今季限りの引退を表明しているカミル・ストッフがここにいないことがとても寂しい。
最後の雄姿を見届けることはできなかったけれど、2018/19のあの驚愕のヒルレコードは、永遠に目に心に焼き付いて離れることはない。

ピックアップ ギャラリー

大倉山に愛された選手であるシュテファン・クラフト。
これまでに5勝を含む9回の表彰台がある。

ところが、この日はなんと予選で失格。
スーツの足の長さ違反ということなので、オーベルストドルフでティミ・ザイツが失格になったのと同じ理由だろうか。

そんなクラフトは敢えて載せないけど、遠い遠いSapporoまで遥々やってきてくれた海外選手たちに敬意を表し、下手な写真ではあるが例によって何人かをピックアップ。

12 カツペル・トマシアク(POL)
14 カール・ガイガー(GER)
16 イサク-アンドレアス・ラングモ(NOR)
18 ヨナス・シュスター(AUT)
23 シモン・アマン(SUI)
25 イェヴヘン・マルシアク(UKR)
31 ロマン・コウデルカ(CZE)
35 ジョバンニ・ブレサドーラ(ITA)
41 ヴァランタン・フベール(FRA)
42 キリアン・パイエル(SUI)

WC個人総合順位

WRL アロケーション

前日は7名がポイントを獲得した日本勢だが、この日は一人減って6名。
トップ10圏内の6位に二階堂蓮が入った一方で、葛西紀明と山元豪は予選を通過することができなかった。

この結果により、数字上は可能性が残っていた葛西紀明のミラノ・コルティナ五輪出場の可能性が消滅した。
しかし、次回の五輪に向けて「もちろん狙っていきたいと思っている」と意欲を語ったという。やはり、この男はとんでもない化け物だ。

オリンピックの各国の出場枠は、1月19日時点のオリンピックアロケーションリストにより決定する。
最大の4枠を目指していた日本だが、結果は3枠となった。
SAJの派遣推薦基準に従い、小林陵侑、二階堂蓮、中村直幹の3名が選出されたことが20日に正式に発表された。

派遣推薦基準を満たしていた佐藤幸椰、内藤智文、小林朔太郎は最後まで望みを捨てずに夢の舞台を目指し続けた。それぞれの選手にそれぞれのドラマがあった。

小林朔太郎は、4枠確保の渦中に置かれてしまいなんともかわいそうだった。
夏の好調を冬に繋げることができないでいるが、4枠確保のプレッシャーもその要因の一つだったはず。状況が許さなかったのは理解しているが、それでも自分自身の戦いに専念させてあげたかった。

雪印メグミルクの選手が五輪出場できないのは、1984サラエボ大会以来のことらしい。
主将である佐藤幸椰は、その責任を背負おうとしているが、それは違うと思う。
今回から出場枠数が大幅に減ったことが要因の全てであって、選手の責任であろうはずがない。

昨年のサマーシーズンが始まった時点では可能性は限りなくゼロに近かった内藤智文は、何度もの逆境を跳ね返してここまで来た。
その夏のコンチネンタルカップで1pt差でピリオド3位を死守し、WC開幕メンバー入り。
WC第2戦で念願のWC初ポイントを獲得すると、第9戦で6位となりSAJの派遣推薦基準をクリア。困難なミッションを次々と乗り越えてきた。

山形新聞の取材に「ここまでこぎ着けたのは誇らしい」と語った内藤智文。
僭越ながら、いちファンとしても「誇らしい」
佐藤幸椰と小林朔太郎に対しても同じ思い。おそらく多くのジャンプファンがそう思っているはずだ。