ルンビ 息詰まる接戦でアルトハウスをかわし金
2019年2月27日(水) ゼーフェルト(AUT)HS109/K99
Ladies Normal Hill Individual
金 | マーレン・ルンビ(NOR) | 259.6pt | 106.5m | 104.5m |
銀 | カタリナ・アルトハウス(GER) | 259.1pt | 108.0m | 107.0m |
銅 | ダニエラ・イラシュコ-シュトルツ(AUT) | 247.6pt | 101.0m | 105.5m |
6 | 高梨 沙羅(クラレ) | 236.7pt | 101.5m | 102.0m |
15 | 伊藤 有希(土屋ホーム) | 216.6pt | 97.0m | 94.5m |
17 | 丸山 希(明治大学) | 211.5pt | 95.0m | 97.0m |
28 | 勢藤 優花(北海道ハイテクアスリートクラブ) | 194.2pt | 94.0m | 89.0m |
ルンビvsアルトハウス。
優勝候補筆頭の二人が、最後の瞬間までどちらが勝つかわからない息詰まるような金メダル争いを演じた。
1本目トップのルンビに対し1.6pt差で2位につけたアルトハウス。着地でお尻が沈んでしまい飛型点を大きく失ったが、前日の団体戦同様に右に倒れそうな着地となったルンビには高得点が付いた。
逆転を狙う2本目では飛距離も着地も決めて見せたアルトハウスに対し、ルンビは踏切りが大きく遅れ飛距離を伸ばせなかったが飛型点は高得点となった。
結果は果たして-
得点を待つルンビは「やられた…」と思っていただろうし、アルトハウスは「やった!」と思っていたことだろう。正直、私はアルトハウスの逆転を信じて疑わなかった。
結果はルンビの勝利。その差は僅かに0.5pt。しびれるような結末だった。
どちらが勝ってもおかしくなかったが、アルトハウスにはほんの少しだけ運が足りなかった。
3位争いも熾烈。
今月初めに肺炎を患い、そこからWCを欠場していたイラシュコは前日の団体戦で復帰したばかり。本調子ではなかったかもしれないが、自身3度目となる世界選手権の表彰台を射止め開催国の面目を保った。
一方、4位に終わったザイファルトは1本目をトップから4.6pt差の3位で折り返した時点では金メダルさえも夢ではなかった。
2本目でイラシュコの上に立てず、事実上メダルを失ったことが分かったときの凍り付いたような表情はちょっと忘れられない。獲らせてあげたかったなぁ。
様々なドラマに彩られた名に恥じぬ好ゲームだったように思う。
WCオーベルストドルフの際にこんなことを書いた。
手に汗握る、中々の名勝負だったように思う。
世界選手権でもこんな勝負が見たい。誰がそれを演じるにせよ。
願い通りの名勝負となったが、演じたのはこの時と同じルンビとアルトハウス。
そしてこの時も二人の差は僅かに0.4ptだった。
ルンビにとっては世界選手権で初の表彰台にして初優勝。
この勝利でルンビは、五輪個人金メダル、WC総合優勝、世界選手権個人金メダルをすべて成し遂げた最初の女子選手として歴史に名を刻むこととなった。
それを最初に成し遂げることを期待され、2シーズン前まではそこに一番近い位置にいたはずの高梨沙羅は、五輪・世界選手権を通じてワーストとなる6位に終わった
今季WCではアプローチの見直しを重点的に行ってきたが、その答えが見つからないまま世界選手権を迎えてしまったようだ。
団体戦もこの日の個人戦も上半身と下半身がバラバラに動いているようにも見え、今季で最も悪い状態だったようにも見えた。
本戦当日に行われた予選のブレーキングの最後でコケて照れ笑いを見せたシーンは可愛かったが、着地で「転んだらどうしよう」と本戦に引きずっていたらしい。
前回大会まで2大会連続の銀メダルだった伊藤有希も「今季の中では内容が一番良かった」としながらも厳しい結果に終わってしまった。
3大会連続の出場となった勢藤優花も前回大会の14位からは大きく順位を落とした。
そんな中、丸山希は初出場ながら17位と大健闘。
唯一大会を楽しんでいたように見えるが、そもそも沙羅や有希とは置かれている立場が全く異なる。
やがて彼女も底知れぬプレッシャーにさいなまれる立場となる日が来るだろう。でも、どうか楽しむ気持ちを忘れないでほしい。
そして、おそらく今は失意の渦中にいるであろう岩渕香里も。
世界選手権 女子個人NH 歴代メダリスト | |||
金 | 銀 | 銅 | |
2009 | リンジー・バン | ウルリケ・グレッスラー | アネッテ・サーゲン |
2011 | ダニエラ・イラシュコ | エレナ・ルンガルディエール | コリン・マテル |
2013 | サラ・ヘンドリクソン | 高梨 沙羅 | ジャクリーン・ザイフリーズベルガー |
2015 | カリーナ・フォークト | 伊藤 有希 | ダニエラ・イラシュコ-シュトルツ |
2017 | カリーナ・フォークト | 伊藤 有希 | 高梨 沙羅 |
2019 | マーレン・ルンビ | カタリナ・アルトハウス | ダニエラ・イラシュコ-シュトルツ |