FISスキーフライング世界選手権2020プラニツァ 個人後半

カール・ガイガー 初の個人ビッグタイトル

2020年12月12日(土)プラニツァ(SLO)HS240/K200

Flying Hill Individual

 カール・ガイガー(GER) 877.2pt
 ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR) 876.7pt
 マルクス・アイゼンビヒラー(GER) 859.3pt
 
4  ミハエル・ハイベック(AUT) 845.1pt
5  ロベルト・ヨハンソン(NOR) 841.0pt
6  佐藤 幸椰(雪印メグミルク) 835.1pt
7  ピオトル・ジワ(POL) 828.6pt
8  カミル・ストッフ(POL) 808.5pt
9  エフゲニー・クリモフ(RUS) 802.2pt
10  アンジェイ・ステカラ(POL) 792.4pt
17  佐藤 慧一(雪印メグミルク) 723.1pt
19  小林 陵侑(土屋ホーム) 716.7pt
35  中村 直幹(東海大学札幌SC) 151.3pt

オフィシャル リザルト


素晴らしい試合だった。
この日、プラニツァのモンスターヒルで繰り広げられたのは、一つのミスも許されない、息詰まるような緊張感に包まれた屈指の名勝負-

1日目の2つのラウンドが終了した時点で、トップのガイガーから5位ヨハンソンまでの差が19.8pt。8位ストッフまでで32.2pt。
上位陣は僅差の中にひしめく大混戦といっていい状況だった。
フラインクでは1回の飛躍で大きなポイントが得られるので、2日目で順位が大変動する可能性がある。

しかし、4本飛び終わっての最終リザルトは、まるで1日目終了時点のリザルトの焼き写しのよう。
初日のトップ10が、最終的にそのままの順位に収まった。
きわめて順位変動の少ない試合。

この日行われたのは、そういう試合だ。
誰もが皆、to beatのラインを超えてくる試合。
誰もがカレントリーダーになるので順位は落ちない。
結果として順位の変動は起こらない。

この日は-そして前日も-ほぼイコールコンディションといっていい試合だった。
多少の風向風速の違いはあったにせよ、アタリハズレと称されるほどのものではなく、WFにより効果的に吸収されていた。
つまり外的条件による順位の変動は起こりにくい状況にあった。

よって、もし、初日の順位から変動を及ぼす要因があるとすれば、それは「ミス」以外にはなかったのでないかと思われる。

しかし、ハイレベルな30人は、ほとんどミスを犯すことはなかった。
ほとんどの選手がto beatラインを超えるという最低限にして最大のミッションをクリアし続けた。
仮にそれをクリアできずとも、傷口を最小限にとどめた為、大きく順位がアップ又はダウンするようなこともなかった。

前述の通り、トップ10においては、誰一人として前日の順位を失うものはいなかったこの試合。
派手な逆転劇などは一切起こらなかった。

しかし、風が選手たちから主役の座を奪おうとする試合と違って、疑いもなく選手個々の力により雌雄が決する試合だった。
一つのミスも許されない、息詰まるような緊張感に最後まで支配された試合だった。
まさに名勝負と呼ぶにふさわしい試合だったように思う。

エンディングもまた、名勝負と呼ぶにふさわしいものだった。
2日間で4本の飛躍。合計900m以上を飛んだ結果、金メダルと銀メダルを分けたのは僅かに0.5pt。
飛距離にして50cmにも満たない差だ。

「ミス」と言ってはかわいそうだが、グランネルは4本目でこの日の最長不倒となる243.0mを飛んだがテレマークが入らず飛型点が17点台にとどまってしまった。
優勝したガイガーとの最終リザルトはわずかに0.5pt差。
17.0を付けた4人のジャッジの内あと一人が17.5を付ければ同点優勝だったし、飛距離であと50cm稼げば逆転優勝だった。

優勝したガイガーは、 昨シーズンのWCでクラフトとの総合優勝争いを繰り広げ、シーズンを通して高いパフォーマンスを見せた。
しかし、WC総合はクラフトに敗れ、4HT、RAWAIRなど個人タイトルを一つも取れないまま終わってしまった。
ようやく手にした個人タイトル。かつてのノーマルヒルマイスターも今や万能型の選手となった。

ガイガーの優勝が決まった瞬間、グランネルはリーダーボードの前に崩れ落ち帽子で顔を覆い頭を抱えた。
脳裏に去来したのはテレマークだったか、それとも飛距離だったか-