2016/17 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第26戦プラニツァ

今季最終戦 クラフト総合優勝 葛西紀明3位

2017年3月26日(日) プラニツァ(SLO)HS225/K200 

33rd World Cup Competition 

① シュテファン・クラフト(AUT) 244.3pt(250.0m)
② アンドレアス・ヴェリンガー(GER) 236.2pt(238.5m)
③ 葛西 紀明(土屋ホームスキー部) 223.9pt(239.0m)

 

22 伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部) 190.1pt(213.0m)
27 竹内 択(北野建設スキー部) 183.6pt(210.0m)

 

オフィシャル リザルト

 


 

シュテファン・クラフトが自身初のWC総合優勝に輝いた。
前戦で2位ストッフとの差を86にまで拡げタイトルはほぼ手中にあった。
精神的にも余裕をもってこの試合に臨めていたであろうか。
今シーズンの集大成ともいえる素晴らしいパフォーマンスで8勝目を挙げ、同時に総合優勝と、フライング総合も決定した。

 

1本目。
28番ビブのストッフは踏切でやや遅れたか、222.5mの平凡な飛距離に終わった。
その時点で3位。
対してクラフトは、マシーンのようなスピードと正確さで踏切を決め250.0mの大台に乗せて見せた。
1本目を終えて、クラフトがトップ。ストッフは5位。クリスタルトロフィーの行方は決まった。

 

2本目を観戦するにあたってのモチベーションは、8.1pt差で2位につけたヴェリンガーvsクラフト。そして、3位につけた葛西紀明の表彰台攻防。
が、8人目の伊東大貴のところで、ここまで吹かなかった赤い風が巻き始める。
で、5分と待たずにいきなりのキャンセルの宣告。
何とも消化不良ではあるが、葛西は4位アイゼンビヒラーとは0.7pt差しかなかったから、結果オーライだったかも。

 

葛西は、ビケルスンでの2位に続き今季2度目の表彰台。
プラニツァ第1戦でも4位に入っており、フライング総合で4位となった。
昨季の5位よりも好成績だったわけで、苦しいシーズンではあったけれど最後にはきっちりと結果を出すあたりはホントに素晴らしい。

 


 

さて、これで今シーズンのWCは全日程を終了。
シーズン序盤はドメンとタンデが席巻し、ジャンプ週間以降はストッフが無双し、その後にクラフトとヴェリンガーが覇を競った。
昨シーズンのぺテル・プレヴツ圧勝劇とは違い、主役が何度か入れ代わりながらも高いレベルで主導権争いを続けた、極めてコンペティティブなシーズンだったように思う。

 

全体の構図は、最終戦まで総合優勝を争い、8勝vs7勝という拮抗した数字で終わったことからも、「クラフトvsストッフ」のシーズンだったとは言える。

 

ただ、確かにこの二人は最後まで総合優勝争いを繰り広げたが、「直接対決」としてそれが繰り広げられたという印象は薄い。
事実、クラフトの8つの勝利のうちストッフを2位に従えての勝利は1つだけ。ストッフの7つの勝利のうちクラフトを2位に従えての勝利も1つだけ。
また、クラフト17回の表彰台とストッフ12回の表彰台のうち、二人同時に登壇したのは6回だけ。

 

むしろ、クラフトと直接対決の関係にあったのはヴェリンガーだ。
ヴェリンガーは今季8回の2位があるが、そのうち6回がクラフトに抑えられての2位。
また、ヴェリンガー12回の表彰台のうち、クラフトと同時に登壇したのは11回。
この数字からも、直接対決は、「クラフトvsヴェリンガー」の間で繰り広げられていた印象が強い。

 

クラフトの優勝には100%納得だ。
もし、投票により優勝者が決まるのなら、間違いなくクラフトに投票する。
一方で、「クラフトvsヴェリンガー」には、はっきりとクラフト圧勝という結果が出たのに対して、「クラフトvsストッフ」は前述のとおり、はっきりと結果が出た感じがしないことに何かもどかしい思いもかすかに残る。
ただもちろん、クラフトはストッフとだけ戦っていたわけではないし、直接対決を制したかどうかで総合優勝が決まるわけでもない。
彼ら二人が、がっふりよつでぶつかり合う試合をもう少し見たかったなという欲張りな思いを述べたまで。

 

日本勢にとっては厳しいシーズンだった。
昨シーズンとの比較でも、葛西は7つ、大貴は8つ、竹内は12とそれぞれ総合順位を落とした。
表彰台登壇も葛西は5回から2回に減り、竹内は1回からなしに、大貴は2季連続表彰台なしとなった。
小林陵侑は昨季の衝撃的なデビューから一転、今季は結局一度もポイントを取ることができなかった。彼を使い続けたことが来季に繋がると信じたい。
一方で小林潤志郎が唯一昨シーズンよりポイントを増やし6枠確保に貢献した。

 

日本勢の不調の要因がマテリアルにあるという声は、あながち間違ってはいないと思う。
ただ、マテリアルが全てではないとも思う。
少なくとも、葛西のスリップ現象(こちら)などは技術的な問題だ。
大貴が国内調整してから調子を上げてきたこともマテリアルとは無縁の話のように思える。
ちなみに、葛西は、「この2、3年はトレーニング不足だったので、来季は講演やテレビ出演を減らすつもり」とコメントしている。
私には、少なくとも葛西の不調の最大の要因は、このあたりにあるのではないかと思えてならない。

 

マテリアルの進化が、この競技を進化させてきたことは疑いないことだとは思う。
新たなマテリアルの開発が新たな技術を生み、新たな技術がまた新たなマテリアルを欲する。
技術面だけでなく安全面からも、マテリアルの進化は欠かせないものだと思う。
ただし、これらはあくまでもルールの範囲内で行われるべきこと。
残念ながら、今季は(今季も?)スーツ違反が多かった。

 

最終戦でもタンデが失格となった。
シュトックルが、他チームへのスーツに対し物申すことが多いため、意趣返し的にノルウェーが狙い撃ちされているという声もあるらしい。
一方で、いちいち全て取り締まっていては競技が成り立たないので見逃されている場面も多いとも聞く。
仮に後者の話が本当だとしたら?
見逃されたスーツで勝敗が決するなんてことは、マテリアルの進化でも技術革新でもない、ただの茶番だ。
来季はスーツチェックが厳しくなるという声もあるようだが、それは昨季も今季も言われていた。FISは本気を見せた方が良いと思う。

 

 

2016/17 ワールドカップ 総合順位                  (全順位
1シュテファン・クラフトAUT16658勝
2カミル・ストッフPOL15247勝
3ダニエル-アンドレ・タンデNOR12012勝
4アンドレアス・ヴェリンガーGER11611勝
5マチェイ・コットPOL9852勝
6ドメン・プレヴツSLO9634勝
7ミハエル・ハイベックAUT 8141勝
8マルクス・アイゼンビヒラーGER 807最高位3位
9ぺテル・プレヴツSLO 7161勝
10マニュエル・フェットナーAUT 703最高位3位
15葛西 紀明(土屋ホームスキー部)JPN401最高位2位
21セヴェリン・フロイントGER3091勝
24伊東 大貴(雪印メグミルクスキー部)JPN294最高位4位
30竹内 択(北野建設スキー部)JPN130最高位12位
54小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部)JPN20最高位17位
62作山 憲斗(北野建設スキー部)JPN9最高位25位
71岩佐 勇研(札幌日本大学高校)JPN1最高位30位

 

2016/17 ワールドカップ 大会別優勝者                     
2016.11.25ルカLHドメン・プレヴツ
2016.11.26ルカLHセヴェリン・フロイント
2016.12.04クリンゲンタールLHドメン・プレヴツ
2016.12.10リレハンメルLHドメン・プレヴツ
2016.12.11リレハンメルLHカミル・ストッフ
2016.12.17エンゲルベルク LHミハエル・ハイベック
2016.12.18エンゲルベルクLHドメン・プレヴツ
2016.12.30オーベルストドルフLHシュテファン・クラフト
2017.01.01ガルミッシュ
パルテンキルヘン
LHダニエル-アンドレ・タンデ
2017.01.04インスブルックLHダニエル-アンドレ・タンデ
2017.01.06ビショフスホーフェンLHカミル・ストッフ
2017.01.14ヴィスワLHカミル・ストッフ
2017.01.15ヴィスワLHカミル・ストッフ
2017.01.22ザコパネLHカミル・ストッフ
2017.01.29ヴィリンゲンLHアンドレアス・ヴェリンガー
2017.02.04オーベルストドルフFHシュテファン・クラフト
2017.02.05オーベルストドルフFHシュテファン・クラフト
2017.02.11札幌LHぺテル・プレヴツ
マチェイ・コット
2017.02.12札幌LHカミル・ストッフ
2017.02.15平昌LHシュテファン・クラフト
2017.02.16平昌NHマチェイ・コット
2017.03.12オスロLHシュテファン・クラフト
2017.03.14リレハンメルLH開催中止
2017.03.16トロンハイムLHシュテファン・クラフト
2017.03.19ビケルスンFHカミル・ストッフ
2017.03.24プラニツァFHシュテファン・クラフト
2017.03.26プラニツァFHシュテファン・クラフト

 

2016/17 ジャンプ週間 総合順位                  (全順位
1カミル・ストッフPOL997.8
2ピオトル・ジワPOL962.5
3ダニエル-アンドレ・タンデNOR941.8
4マチェイ・コットPOL934.3
5マニュエル・フェットナーAUT926.8
25伊東 大貴JPN711.4
29葛西 紀明JPN608.7
34竹内 択JPN512.4
43小林 陵侑JPN305.3
58作山 憲斗JPN96.7

 

2016/17 RAW AIR 総合順位                    (全順位
1 シュテファン・クラフトAUT2298.1
2 カミル・ストッフPOL2272.6
3 アンドレアス・ヴェリンガーGER2251.3
4 アンドレアス・ストエルネンNOR2210.1
5 ぺテル・プレヴツSLO2180.4
6 ヨハン-アンドレ・フォルファングNOR2160.4
7 マチェイ・コットPOL2102.9
8 葛西 紀明JPN2099.0
9 ロベルト・ヨハンソンNOR2090.7
10 伊東 大貴JPN2082.2
25 竹内 択JPN1308.5
39 小林 陵侑JPN939.4
54 小林 潤志郎JPN626.9
66 作山 憲斗JPN433.6

 

2016/17 フライング 総合順位                   (全順位
1シュテファン・クラフトPOL445
2アンドレアス・ヴェリンガーPOL333
3カミル・ストッフNOR279
4葛西 紀明POL230
5ぺテル・プレヴツAUT196
18伊東 大貴JPN55
40竹内 択JPN8

 

2016/17 団体戦 大会別優勝国                        
2016.11.03クリンゲンタールLHポーランド日本7位
2017.01.21ザコパネLHドイツ日本8位
2017.01.28ヴィリンゲンLHポーランド日本8位
2017.03.11オスロLHオーストリア日本5位
2016.03.18ビケルスンFHノルウェー日本6位
2016.03.25プラニツァFHノルウェー日本6位

 

2016/17 ネイションズカップ 総合順位               (全順位
1ポーランド5833
2オーストリア5586
3ドイツ5513
4ノルウェー4415
5スロベニア3713
6日本1555