スキージャンプFISワールドカップ2023/24女子個人第12戦リュブノ

ピンケルニッヒが今季3勝目で総合3位に浮上 伊藤有希4位 高梨沙羅8位

2023/24スキージャンプワールドカップ
14th World Cup Competition
  • 2024年1月27日(土)
  • リュブノ(SLO)
  • HS94/K85

Official Results

1  エバ・ピンケルニッヒ(AUT) 269.3pt
2  ニカ・プレヴツ(SLO) 262.5pt
3  アレクサンドリア・ルティト(CAN) 258.9pt
 
4  伊藤 有希(土屋ホームスキー部) 254.7pt
8  高梨 沙羅(クラレ) 249.2pt
22  勢藤 優花(北海道エネルギースキー部) 230.3pt

予選リザルト 本戦リザルト


日本シリーズ終了時点でWC総合4位にまで上がってきていたピンケルニッヒ。
今季は膝の不調で開幕からの4試合にはエントリーせず、個人第5戦ガル‐パルで自身の開幕を迎えた。
そこから破竹の勢いでポイントを積み上げ、今季3勝目となるこの試合の結果により、ついに総合3位に浮上した。

1本目で4位だった伊藤有希。
3位で折り返したルティトとは0.4ptの差しかなかったので表彰台が期待されたが惜しくも届かなかった。
ただ、表彰台を逃したことを悔しいとしつつも、リュブノでK点越えを2本揃えたのはたぶん初めてなので一つステップを踏めたと前向きなコメントが聞かれた。

1本目で5位だった高梨沙羅。
2本目ではテレマークが決まらなかったのが残念だったが、それでも今季6度目のシングル順位。総合順位を1つ上げて11位。

それにしても、リュブノにこんなに観客が多いのは初めて見た気がする。
ニカ・プレヴツの活躍がその要因の一つではあろう。
また今回は、昨年の洪水被害によるジャンプ台の修復に尽力された消防団の関係者が2,000人ほど招待されてもいたらしい。

何であれ、多くの観客の前での試合は選手にとっても大きな力となることだろう。
特にWCデビュー戦で見事に17位となった16歳のエルザールにとっては、自国の大声援にとても勇気づけられたのではないだろうか。

WC総合順位

ところで、この試合に日本勢は3名しか派遣されていない。
『選考基準』に書いてある通りの選考なので、その点は何も問題はない。
ただ一方で、基準の定め方としてこれでよかったのかどうか。

『選考基準』は、基本的にはクォーター枠を使い切るような設定がなされている。
ただ、女子のリュブノ以降の選考基準はこれとは少し異なる。
結果としてリュブノと次のヴィリンゲンは3名しか選考されなかった。

これは、意図せずそうなってしまったのか?
つまり、この基準で枠は埋まると想定していたのに、蓋を開けてみたら思いのほか成績が良くなくて枠が埋まらなかったということ?

一つにはジュニア世界選手権(WJC)との間で代表選手が重複する可能性があることが関係しているのかもしれない。
あるいは同じくWJCの日程により、WCヴィリンゲンとルシュノフの間が一週開くことも関係しているのかもしれない。

いずれにしても、何らかの意図があってこのような基準にしたのではないかという気がする。ちなみに昨季もほぼ同じ基準。

ただ、どうであっても枠を余らせるのはもったいない。
喉から手が出るほどにこの枠を欲している選手たちが国内にはたくさんいるはず。

記憶が正しければ『選考基準』が明文化されるようになったのは2019年からだったはず。
それまでは、ともすればブラックボックス化してやや曖昧だったともいえる代表選考の過程が、透明化されて誰の目にも明らかになった。
年々、内容としても精度が上がってきていると思うし、よって納得性も高くなってきているようにも思う。

まずもって、この「納得性」という点は非常に重要。
仮にそれまでは曖昧ゆえに選ばれていた選手がいたのであれば、一方で曖昧ゆえに選ばれなかった選手もいたわけで公正とは言えない。
選考の方法を「事前に」「明確に」示すことで、その選考は公正となり納得性が生まれる。

また、『選考基準』とは、言い換えれば代表選手になるための道筋ともいえる。
道筋が明確に示されたことで、選手にとっては何をどう頑張れば代表に選ばれるのかが明確になった。
これにより選手としてもモチベーションが高まるだろうし、観ている側として応援により一層力が入るようになった。

個人的には、これが無かった頃より100倍良くなったと感じる。
願わくば、誰が読んでもより明快で、より納得性のある内容となるよう精度を高めていっていただきたい。
そしてもちろん、これに則って適正な選考を行っていただきたい。

最後にもう一つ。
『選考基準』の存在をもっとファンに対して積極的に周知してほしいと願う。
ただし、もちろん、それを見るか見ないのかは、それぞれが判断すればいい。

実際にこの基準に選手の名前を当てはめてみると、既に選考基準に達している選手と、この試合で何としてでもその権利を掴もうとしていたであろう選手が見えてくる。

こうしたことを知っていて観るのと知らずに観るのとでは、試合の趣は随分と違ってくるのではないだろうか。
当落線上の選手たちにとっては、まさに人生を賭けた試合ともいえるものであったはず。そう考えると岩佐勇研の転倒にも特別な思いがこみ上げてくる。

誤解を恐れずに敢えて言えば、国内戦は “ショー” の部分をファンに提供することに偏重しすぎているように思える。
でも、行われているのは “コンペティション” であるはず。
この試合に勝てばどうなるのか? 何位までに入れば次にどんなステップが待っているのか? 野球やサッカーであれば当たり前のようにあるこういった楽しみ方がスキージャンプの国内戦には希薄だ。

実は「この試合に勝てばどうなるのか? 何位までに入れば次にどんなステップが待っているのか?」を表したものが『選考基準』だ。
だがそれは、明らかに選手・関係者向けのものであり一般的なファンが見てもわかりにくいし、そもそも存在自体が知られていない。記憶に誤りがなければ、昨夏のGPの選考基準がSAJのサイトにアップされたのは10月。GPはとっくに終わっていた。

選考基準の内容を上手にファンに向けて発信し、それぞれの試合がどのような意味を持ち、どうしたら日本代表に選ばれるのかの道筋を分かり易く伝えることができたら国内戦をもっと楽しめるはず。
SAJをはじめとした主催者側は、ショーとしての楽しみを提供することも大事だが、もっとコンペティションとしての魅力をストレートに訴求していくことに注力してもよいのではないか。

少なくとも私は、その方が100倍楽しめる。

サマースキージャンプ2023山形蔵王大会
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