第31回TVh杯ジャンプ大会

岩佐勇研にいよいよ結果が追い付く 茂野美咲は圧巻のパーソナルベスト

2020年2月8日(土) 札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123

女子組(ゲート1本目28、2本目29)

1  茂野 美咲(CHINTAI)  240.4pt
2  岩佐 明香(大林組)  218.2pt
3  小林 諭果(CHINTAI) 216.5pt

公式リザルト

男子組(ゲート1本目13、2本目14)

1  岩佐 勇研(東京美装グループ)  255.4pt
2  伊東 大貴(雪印メグミルク)  249.6pt
3  渡部 陸太(東京美装グループ) 239.1pt
 
4  葛西 紀明(土屋ホーム)  237.8pt
5  渡部 弘晃(東京美装グループ)  235.5pt
6  栃本 翔平(雪印メグミルク)  234.5pt

公式リザルト


 

2016年白馬NBS杯で高校生ながら葛西紀明、伊東大貴、竹内択らのフルメン相手に優勝という離れ業を演じているけれども、シニアとしてはこれまで表彰台がなかったはず。
というのも、勇研は高校時代から常に海外を転戦しており国内戦に出場する機会が限られていたせいもあると思う。
同世代ではだれにも負けないぐらいの海外経験を積んできた勇研。その底知れぬ才能にいよいよ結果が追い付き始めた。

第98回全日本選手権LH兼第61回NHK杯

 

ついに岩佐勇研が来た。
私の記録と記憶に間違いがなければ、これが社会人となってからの初優勝。
その理由は前述の引用文にある通りだが、国内戦に出場する機会がもっと多ければ、高校生のころから成人組で更にいくつかの勝利を挙げていたはず。

 

今季はCOCを主戦場としているが、エンゲルベルクで海外WCデビュー。
そこでの2試合でポイントゲットし、続く札幌大会でも2試合でポイントゲット。出場した4試合ですべてポイントを獲得できている。
ホントに結果が追い付いてきた。今すぐにでもWCチームで戦う姿が見たいところではある。

 

茂野美咲の2本目は、いつもと違う姿で飛んできた。
いつもは顔をあげて前を見据えるような空中姿勢だが、この時はやや頭を下げて、なんだかちょっと窮屈そうに飛んできた。
29番ゲートというかなり高めの設定ではあったが、運営の思惑とは逆に最後の数名は向かい風がかなり強く吹いた。
茂野は、この向かい風に思いっきり上体を預けて攻めまくった結果として、気持ちが先行しすぎて頭だけ余計に前傾がかかってしまったのではないかと勝手に想像してみた。

 

フライト姿勢がどうだったかは別として133.5mの見事な大ジャンプ。
パーソナルベストを2.0m更新したんだとか。
WC日本シリーズでは、札幌は予選不通過、蔵王でも32位とポイントに届かなかった。「悔しくて自信を喪失していた」とのことだけれど、この日の大ジャンプで少しはうっぷんが晴れただろうか。

 

国内女子選手の場合、このぐらいの向かい風になると恐怖心と空気抵抗で逆に飛距離を伸ばせないような選手も散見される。
それに打ち勝ち、強い向かい風を飛距離に変えることができるのが茂野美咲と岩佐明香。
やはりこの二人が技術的に抜けていると思う。

 

女子組


1 茂野 美咲(CHINTAI)

 


2 岩佐 明香(大林組)

 


3 小林 諭果(CHINTAI)

 


4 大井 栞(早稲田大学)

 


5 松橋 亜希(株式会社ドリームリンク)

 


6 勢藤 理桜(下川商業高校)

 

男子組


1 岩佐 勇研(東京美装グループ)

 


2 伊東 大貴(雪印メグミルク)

 


3 渡部 陸太(東京美装グループ)

 


4 葛西 紀明(土屋ホーム)

 


5 渡部 弘晃(東京美装グループ)

 


6 栃本 翔平(雪印メグミルク)

 


 

1本目終了時点では、男子は岩佐勇研が、女子は岩佐明香が暫定トップ。
姉弟優勝も期待されたけれど実現ならず。
でも、いずれ近いうちに見られるんじゃないかな。

 

東京美装は表彰式に3人が名を連ねた。
好調の渡部弘晃は試技ではトップの飛距離。横風を受けたか空中で大きくバランスを崩したけれど、それでも立て直して126.5mまで持って行ったのは見事だった。
渡部陸太は佐藤幸椰と同期。幸椰の活躍に最も刺激を受けている選手のうちの一人ではないだろうか。
昨夏の札幌市長杯NHで小林陵侑を相手に0.5pt差の優勝争いを演じたことは記憶に新しい。着実に力はついてきている。次はいける!

 

伊東大貴は腰の調子が良くないとのことでWC遠征から外れた。
てっきり療養に専念するものと思っていたら、何事もなかったかのようにエントリー。
そして、何事もなかったかのように勇研と最長不倒を分け合っての2位表彰台。
試合後に「腰の調子はどうですか?」と声をかけたが、笑ってはぐらかされた。
ヴィリンゲン、クルムと体にきつそうな大きい台が続くのでそこを避けたのだろうか。
第10次遠征はこの二つの大会までだし、その次のルシュノフでは当初から入れ替えが予定されているので、そのあたりで復帰することになるのかな?

 

表彰式


女子組

 


女子組最長不倒賞 茂野 美咲(133.5m)

 


男子組

 


男子組

 


男子組最長不倒賞 岩佐 勇研、伊東 大貴(133.5m)

 


男女優勝者

 


 

WC札幌大会が終わってから一週間足らず。
札幌はその間に大雪に見舞われた。
この日の大倉山は、ブレーキングトラック横の観戦場所は除雪がされていたものの、一部に除雪の甘い部分もあり、そこには40~50cmほどの積雪が見られた。
寒さも一段と厳しさを増し、観戦中に冷たい風が吹きつけた時などは久しぶりに顔が痛くなる感覚があった。
男女WCで札幌を訪れた方たちは、とても良いときに来られてラッキーだったのかも。

 

 

雪と寒さに加えてウィルス感染のリスク。そんなことも手伝ってか観客数は伸びない。
さっぽろ雪まつり開催中なので観光客の方も多く来場されていたようだけれど、それがなかったらもっともっと寂しい客入りとなっただろう。

 

やはり地元の札幌市民をわんさか動員できないと絶対数は増えない。
でも、それは無理筋。
札幌市民がスキージャンプに興味があるとかないとか以前に、そして大倉山がエンターティンメントを提供できているかいないか以前に—
札幌市民は、雪と寒さが大嫌い。