ヴェリンガー 涙の金 小林陵侑 7位入賞
2018年2月10日(土) 平昌(KOR)HS109/K98
Men’s Normal Hill Individual
金 | アンドレアス・ヴェリンガー(GER) | 259.3pt | 104.5m | 113.5m |
銀 | ヨハン-アンドレ・フォルファン(NOR) | 250.9pt | 106.0m | 109.5m |
銅 | ロベルト・ヨハンソン(NOR) | 249.7pt | 100.5m | 113.5m |
4 | カミル・ストッフ(POL) | 249.3pt | 106.5m | 105.5m |
5 | ステファン・フラ(POL) | 248.8pt | 111.0m | 105.5m |
6 | ダニエル-アンドレ・タンデ(NOR) | 242.3pt | 103.5m | 111.5m |
7 | 小林 陵侑(土屋ホーム) | 240.8pt | 108.0m | 108.0m |
8 | マルクス・アイゼンビヒラー(GER) | 240.2pt | 106.0m | 106.5m |
20 | 伊東 大貴(雪印メグミルク) | 214.7pt | 103.0m | 102.0m |
21 | 葛西 紀明(土屋ホーム) | 213.3pt | 104.5m | 99.0m |
31 | 小林 潤志郎(雪印メグミルク) | 98.8pt | 93.0m |
ヴェリンガーの2本目は金メダリストとなるにふさわしい圧巻のパフォーマンスだった。
文句のつけようのないサッツのタイミング・角度・キレ。
他の選手たちよりも1段高いフライトを見せ、圧倒的な推進力でグイグイと飛距離を伸ばしヒルレコードとなる113.5m。
そして3人が19.5ptをつけた完璧なテレマーク・ランディング。
荒ぶる風と凍てつく寒さ。
7日・8日の公式練習、トライアル、予選を通じて、夜は比較的穏やかで平均0.3~0.5m/s程度の追い風傾向だったのに対し、この日は平均1.5~2.0m/sもの強い向かい風が吹き荒れた。
時折5.0~6.0m/sにもなることもあり何度もシグナルで試合は止まった。
21時35分(日本との時差無し)に始まった試合が終わったのは、日付が変わった深夜0時19分。2時間45分もの長丁場となってしまった。
数値上は向かい風であるものの、場所によっては向きも強さも出鱈目に吹き荒れた。
最悪な条件を引いてしまった小林潤志郎とダヴィド・クバツキは1本目でメダル争いからはじき落とされてしまった。
一方で、WCでは未だ表彰台経験がないが、このところ上り調子にあったフラが、ストッフばりの華麗なテレマークを決め1本目をトップで折り返した。
2本目になると更に向かい風は強まった。
運営は1本目で2度、2本目で1度、それぞれゲートを1段ずつ下げたが、それでもto beatはHSを上回るような有様だった。
ひょっとするとこのあたりは、飛ばし屋のフォルファンとヨハンソンには有利に働いたのかもしれない。
二人ともオリンピック初出場にして、みごとメダリストに輝いた。
荒ぶる風と寒さは、「シモン・アマンの10分間」として語り継がれていくであろう感動的な場面を生むことにもなった。
アマンの2本目は、アルペンシアの風と寒さが最も牙をむいた時。
何度もシグナルでゲートを外されて10分もの時間を待たされたのにも関わらず、鬼気迫る表情で集中を保ち続け見事なジャンプを決めた場面は、この試合のハイライトだったと言ってよい。
こうして、様々なドラマに彩られた2時間45分の先に待っていたのは、カミル・ストッフの連覇ではなく、リヒャルト・フライタークの戴冠でもステファン・フラの奇跡でもなく、1本目5位からの逆転勝利を手中にしたヴェリンガーの歓喜の涙だった。
WCでは今季ニジニ・タギルでの勝利を含む通算3勝。
オリンピックでは、2014ソチ団体に次ぐ2つ目の金メダル。
ドイツ人としては、1994リレハンメルLHのバイスフロク以来の金メダリスト。
日本勢ではやはり小林陵侑の7位入賞が光る。
WCデビュー戦となった2015/16ザコパネでいきなりの7位。そして五輪デビュー戦も7位。
2016/17はWC個人戦25戦にエントリーするも1ポイントも取れずに終わった。その経験が今に繋がっているのだろう。
それにしても、この五輪のジャンプ競技の開始時間はなぜこんなに遅いのだろう。
冬の屋外競技は天候に左右されやすいし、風に影響を受けやすいジャンプ競技はなおのこと。しかも、ここアルペンシアは元々風が強いことで有名だ。
天候次第で開始時間が1時間遅れたり、途中で30分や場合によっては1時間程度中断することもジャンプ競技ではそんなに珍しいことではない。
その点を踏まえるならば、21時30分という開始時間はやはり遅すぎるだろう。
事実、この試合も日付を跨いだわけで。
WCのナイトゲームは、現地時間16時または17時に開始されることが多い。
例外としては、今季ではニジル・タギルが土曜19時、日曜20時開始と遅かったのと、昨年ピョンチャンで行われたプレ大会が土曜20時、日曜19時開始だった。
ただ、いずれにしても今大会の21時30分というのは飛び抜けて遅い。
観客は、1本目を終えると明らかに減った。
寒さのせいもあるだろうけど、帰りの足も気になるのだろう。
そもそも夜中の12時にスポーツ観戦などしたくはない。
そして、テストジャンパーの多くは日本の高校生だ。
法令上は問題ないとしても、教育上、倫理上はどうなんだろう。
欧州や北米のテレビ中継に合わせたのかどうかは知らない。
だとしても限度と程度がある。
夜中の12時に競技をしたい選手など誰一人としていない。