栃本翔平 6年ぶりの優勝 丸山希 亡き母に捧げる勝利
2021年1月10日(日)札幌市 大倉山ジャンプ競技場 HS137/K123
女子組(基本ゲート1本目26、2本目25)
1 | 丸山 希(明治大学) | 242.2pt |
2 | 伊藤 有希(土屋ホームスキー部) | 241.0pt |
3 | 岩渕 香里(北野建設) | 204.3pt |
男子組(基本ゲート1本目15、2本目13)
1 | 栃本 翔平(雪印メグミルクスキー部) | 251.7pt |
2 | 清水 礼留飛(雪印メグミルクスキー部) | 234.5pt |
3 | 渡部 弘晃(東京美装グループスキー部) | 233.0pt |
4 | 宮﨑 敬太(東海大学) | 226.7pt |
5 | 渡部 陸太(東京美装グループスキー部) | 224.6pt |
6 | 伊藤 将充(土屋ホームスキー部) | 222.6pt |
例年はSTVカップ国際スキージャンプ競技大会としてFISコンチネンタルカップを兼ねて行われるこの大会。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、国内での男女ワールドカップと共にコンチネンタルカップ札幌大会が中止となったために、大会名から「国際」の文字が外されて純粋な国内大会として開催されることとなった。
また、当初の予定では1月31日に開催される予定だったが、女子ワールドカップ札幌大会が予定されていた1月10日に日程を変更し女子組が追加されることとなった。
男子組では栃本翔平が1本目3位から逆転優勝。
最長不倒となる141.0mを飛んだ2本目は、数値上は全選手中で最も条件が良かった。
でも、とっちーはそもそも飛ばし屋。
宮の森の冬のバッケンレコードホルダー(104.0m 2012年1月)であり、大倉山の冬においても2019年1月のWCでカミル・ストッフ(148.m)に抜かれるまでバッケンホルダー(146.0m 2017年2月)だったその実績は伊達ではない。
女子組では、1本目でトップに立った丸山希が、140.5mの大飛躍で猛追した伊藤有希から逃げ切り優勝。
この日の大倉山は、いつもに比べて風はとても穏やか。
でも、伊藤有希の1本目は向かい風が強くなりコーチリクエストで2段ゲートを下げた。
これが勝敗の分岐点となった。
有希は、GFの加点を得られるHSの95%(130.0m)に7.0mも足りず、単に飛距離点を失ってしまった。
丸山にとってこの日は、4年前に亡くなったお母さんの命日。
見えない力が丸山に味方したのかも。
女子組
男子組
報道によると栃本翔平は、昨年末の名寄での練習中に、かかとのプレートを5mmほど高くしたら前傾が深まり、これにより力強い踏切ができるようになったとのこと。
そういえばジャンプ週間だったかのJスポ中継で元康氏が佐藤幸椰のかかとの位置が高くなったように見えるということを言っていた。
幸椰も同じようなことを行っているのだろうか?
もっとも、5mm程度の調整では映像からでは確認できないだろうとも思えるので、幸椰の場合は、とっちーとはまた違ったことを行っているのではないかとは思うが。
また、とっちーの勝利は6年ぶりとのこと。
調べてみたが、たぶん2015年7月の第35回全日本サマージャンプ朝日大会がそれにあたると思われる。冬では2015年1月の第57回HBCカップジャンプ競技会。
あの頃の強いとっちーが戻ってきたのだとしたら、とてもうれしい。
それにしても、今季の雪印勢の充実ぶりは目覚ましい。
10月から11月にかけて行われた白馬・札幌での国内秋季大会7試合でも佐藤幸椰が4勝。
表彰台の占有率7割。6入賞の占有率6割。
もちろん、所属している人数が多いからということはある。
でも、この日は出場は3名のみで、そのうち二人がワン・ツー表彰台。
いずれにしても、雪印勢がここまで上位に顔を揃え続けるのは最近ではちょっと記憶にない。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | |
全日本NH | 幸椰 | 小林 | 伊東 | 慧一 | ||
全日本LH | 幸椰 | 伊東 | 小林 | 慧一 | ||
宮の森サマー | 小林 | 栃本 | ||||
UHB杯 | 幸椰 | 伊東 | 慧一 | 小林 | ||
大倉山サマー | 伊東 | 慧一 | 幸椰 | 栃本 | ||
チャレンジ杯 | 幸椰 | 伊東 | 慧一 | 小林 | ||
NHK杯 | 幸椰 | 伊東 | 栃本 | |||
STVカップ | 栃本 | 清水 |
その勢いの中にあって、やや蚊帳の外に置かれていた感のあった清水礼留飛がこの日は2位。
特に2本目は条件も厳しかった中、128.5mまで持っていき2番手のスコア。
雪印勢は、ここに怪我からの復帰が待たれる原田侑武がいずれ加わる。
そして、春に新入団の工藤漱太も力をつけてきた。
チーム力が底上げされ穴が無くなりつつあると感じられる。
原田監督と岡部コーチの手腕はもっと評価されて良い気がする。
表彰式
1本目でトップだった渡部弘晃は2本目は9番手のスコアで結果は3位。
勝てる試合を失い表彰台では笑顔無し。
1本目でその渡部と6.4pt差の2位だった竹花大松。
社会人1年目でのシニア初優勝に期待がかかったが、2本目は条件にも恵まれず19番手のスコアで結果は10位。
このところ坂野旭飛ばかり紹介しているが、どうしても紹介したくなる魅力がある。
中学生のエントリーは二人だけだったが堂々の21位。この大会は少年組の設定がないが、あれば高校生たちを差し置いて旭飛が優勝だった。
1本目ではなんと11位!
この試合のテレビ中継は「FISジャンプワールドカップ札幌大会特別編」という形で放送された。
その内容の大半は女子WCチームの紹介に費やされ、肝心の競技は特に男子においてはほとんど映されることはなかった。
ただし、STVの動画サイトで試合の「完全版」を見ることができた。
「札幌大会特別編」は、普段なかなか見ることのできない選手の素顔も見られて、これはこれで楽しかった。
こういうものを観たいというニーズはあると思うし、そういう人たちにとっては試合の「完全版」はオーバースペックで、ダイジェスト版くらいがちょうどいいということもあると思う。
テレビではライト層向けのダイジェスト版。ネットではコア層向けの完全版。
これからは、こういう形になっていくのではないか。
STVの動画サイト「どさんこ動画+」は、昨年の12月21日に始まったばかりのサービスらしい。
STVが制作した過去の番組などを無料または有料で見ることができるが、今回の「完全版」は無料だった。
今後は有料となっていくだろうと勝手に予測しておくこととする。
来季は、元の通りコンチネンタルカップを兼ねて開催することができる世の中になっていることを切に願う。
でも、女子組も開催してほしいので、2007年から2013年まで7回だけ開催されたSTVカップレディーススキージャンプ競技大会の復活を望みたい。