スキージャンプFISワールドカップ2025/26男子個人第11戦エンゲルベルク

小林陵侑が5位からの逆転勝利でドメン・プレヴツの連勝を止める 通算37勝で歴代単独6位に

13th World Cup Competition
  • 2025年12月21日(日)
  • エンゲルベルク(SUI)
  • Large Hill Individual
  • HS140/K125

Official Results

1  小林 陵侑(TEAM ROY) 310.0pt
2  ドメン・プレヴツ(SLO) 306.4pt
3  フェリックス・ホフマン(GER) 303.8pt
 
10  二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 289.9pt
11  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 288.1pt
21  佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) 264.6pt
31  小林 朔太郎(雪印メグミルクスキー部) 130.1pt
45  内藤 智文(山形市役所) 113.2pt

予選リザルト 本戦リザルト


女子の試合から3時間が経って、風の状況は一段と厳しいものとなった。
激しい追い風は、時として向かい風に代わりレッドが頻発。何度もゲートの上げ下げを繰り返す難しい試合。

そんな状況下で、小林陵侑が1本目の5位から逆転で勝利を掴んだ。
この二日間、何度もゲートで待たされた挙句、結果は良くない方向に向いてしまっていた。この日の2本目も、待たされてスタートしてみれば2本目全選手中で最も強い追い風。
それでも132.0mまで伸ばし着地も決めカレントリーダーとなり、ガッツポーズも出た。

後続のトマシアク、フォルファン、ライムントが追い風に叩かれ順位を落とし、最後は6連勝が懸かるドメン・プレヴツ。
追い風がやや収まったことも手伝ってか141.0mまで伸ばして見せたが、着地でスキーを取られ飛型点を失ったことで陵侑の追撃をかわすことはできなかった。

小林陵侑は今季2勝目。通算37勝目となりヤンネ・アホネン(FIN)を抜き歴代単独6位の勝利数となった。
そして、この勝利によりドメン・プレヴツの連勝を「5」で止め、自らが他の4人の選手と共に持つ最多連勝記録「6」にプレヴツが加わることを自らの手で防いだ。

連勝は止まったものの、ドメン・プレヴツは8連続表彰台で、2位小林陵侑に199ptの差を付けて首位を走る。

3位のフェリックス・ホフマンは2戦連続、今季3度目の表彰台。
1本目をプレヴツと同点の1位で折り返したフィリップ・ライムントは多い風に泣き4位に落ち、初優勝はお預けとなった。

WC総合順位

WRL アロケーション


『選考基準』によれば、ジャンプ週間4試合とザコパネに派遣される選手は、エンゲルベルクまでのワールドカップ(WC)スタンディングの上位5名が選考されるとある。

7.WORLD CUP
  • 対象大会:オーベルストドルフ/ガル-パル/インスブルック/ビショフスホーフェン/ザコパネ
  • 選考人数:5名
  • 選考基準:
    1. 2025-2026 WCスタンディングス上位
    2. OWG Allocation List 上位
    3. 2025-2026 COCスタンディングス上位
  • 特記事項:
    • COC出場選手と入れ替えを行う場合がある
    • WCクォータおよび2026OWGクォータの確保を優先する場合、選考基準に沿わずコーチ会議を行い、HC判断で選手を決定する


エンゲルベルク終了時点のスタンディングは次の通り。(数字はポイント数)

  1. 小林 陵侑 651
  2. 二階堂 蓮 459
  3. 中村 直幹 168
  4. 内藤 智文 56
  5. 佐藤 幸椰 55
  6. 小林 朔太郎 37

これに対し、12月24日にSAJが発表したリストには上記6名と、COCの結果によりジャンプ週間4試合の追加枠を得た小林潤志郎の名前が載る。
つまり7名がリストに載っており、上記6名は誰もリストから外されていない。

これはどういうことか?
色々な解釈があるようだが、私は単に、発表の仕方が分かりにくいだけだと思っている。

このリストと同日にコンチネンタルカップ(COC)のリストも発表されている。
先述の通り、当初このリストの派遣先にはルカしか載っていなかった。今回ここにエンゲルベルクが追加される形で発表されたわけだが、エンゲルベルクに新たに派遣されることとなった佐藤幸椰の名前が載ったのに対して、エンゲルベルクには出ない小林潤志郎の名前は削除されずにそのまま残っている。

この第6次ジャンプ(男子)遠征の期間は「12月10日~12月30日」なので、その期間中に遠征に参加した選手の名前を、途中で遠征から外れた選手(小林潤志郎)も含めて全員載せているということなのだと思う。
SAJは過去にもこのような発表の仕方を何度か行ってきている。

同じように第5次ジャンプ(男子)遠征の期間は「11月16日~1月13日」なので、その期間中に遠征に参加した選手の名前を、途中で遠征から外れる選手も含めて全員載せているのだろう。
小林潤志郎の追加枠はジャンプ週間4試合だけだが、ザコパネまでの潤志郎の派遣が確定しているかのように見えてしまうのもこのためだと思う。

SAJのこうした発表の仕方は本当にわかりづらくて、何とかしてほしい。
いずれにしても、遠征の全期間における派遣選手を挙げているので7名になっているだけで、実際はここから外れる選手が1名いて、残る6名がザコパネまで(潤志郎は原則としてビショフスまで)派遣されると、私はそう解釈している。

では、誰が外れるかというと、それは佐藤幸椰ということになると思う。
先述の通り、ミラノ・コルティナ五輪の4枠確保のためには、小林朔太郎を外すという選択はちょっと考えられない。なので本来は5位なので生き残るはずの幸椰と朔太郎が入れ替わったと考えることが自然だ。事実、COCのリストに幸椰の名前が載っていることからも。

これは、選考基準の特記事項に明記されている「WCクォータおよび2026OWGクォータの確保を優先する場合、選考基準に沿わずコーチ会議を行い、HC判断で選手を決定する」が発動したということなのだろう。
五輪枠確保のためには致し方ないことだったと思う。

以上のことから、今回の選考は、特記事項が発動したとはいえ選考基準通りに行われたというのが私の解釈。

なお、成績如何によっては途中で選手が入れ替わることがあり得ることは、特記事項に「COC出場選手と入れ替えを行う場合がある」と明記されている通り。
また、COCエンゲルベルクは、この2試合で単独のピリオドを形成しているので、ザコパネからWCに参戦する道も残されている。

よって、結果的に佐藤幸椰がザコパネまでの間にWCに戻ってくることは全然あり得ることだと思う。
もちろん、葛西紀明、佐藤慧一、渡部陸太も。