2018/19 FISスキージャンプワールドカップ男子個人第10戦インスブルック

ジャンプ週間3連勝 小林陵侑 偉大なる記録に挑む

2019年1月4日(金) インスブルック(AUT)HS130/K120 

13th World Cup Competition 

 小林 陵侑(土屋ホーム)  267.0pt  136.5m  131.0m ライトナー
 シュテファン・クラフト(AUT)  254.2pt  129.5m  130.5m パブロフチッチ
 アンドレアス・ストエルネン(NOR)  242.7pt  131.0m  126.0m コジセック
 
6  佐藤 幸椰(雪印メグミルク)  231.4pt  129.0m  123.5m クリモフ
15  伊東 大貴(雪印メグミルク)  222.3pt  124.5m  124.5m グランネル
26  小林 潤志郎(雪印メグミルク)  200.5pt  124.0m 114.0m ジーゲル
31  中村 直幹(東海大学)  102.1pt  119.0m   ヘール
32  葛西 紀明(土屋ホーム)  100.9pt  120.0m    ラニセク

予選 リザルト スタートリスト

オフィシャル リザルト


 

正直、戸惑っている。
ワールドカップで勝つのって、こんなに簡単だったっけ?
ジャンプ週間で勝つのって、こんなに簡単だったっけ?
いったい何を見せられているのか。これは現実に起こっていることなのか。

 

小林陵侑は、ジャンプ週間3連勝。笠谷幸生と船木和喜の偉大なる記録に並んだ。
前戦まで僅かに2.3ptだった2位アイゼンビヒラーとの差を45.5pt に拡げ、1997/98船木和喜以来となる日本人二人目のジャンプ週間総合優勝の可能性を磐石なものとした。
そして、過去66回でハンナバルトとストッフのたった二人しか成し遂げていないスキージャンパーとしての究極ともいえる偉業―グランドスラム―に王手をかけた。

 

それだけではない。
陵侑はこれで今季WCで7勝目。葛西紀明が持っていた同一シーズンでの日本人最多勝利数を抜いた。
更に、この試合でWC4連勝を果たしたが、これも日本人初。

 

陵侑がWCで初優勝を遂げたのは昨年の11月24日。
今、我々が目にしているのは全てそこから1ヶ月半足らずの間の出来事。
決して簡単にやっているわけではない事は百も承知だが、陵侑のキャラクターとも相まって簡単に事が成されているような錯覚を覚える。
夢か現(うつつ)か… という気持ちになったとしても仕方あるまい。

 

インスブルックでの陵侑には、ルカでの自身2勝目の時よりも衝撃を受けた。
前戦の記事にも書いたが、陵侑の快進撃にストップがかかることがあるとすればそれは“転倒“しかないと思える。
今季の陵侑の圧倒的な高さと飛距離は時として飛びすぎてしまい、それゆえに着地にリスクが伴う。なので、オーストリアでの残り4本は飛ばし合いにならないことを願っていた。

 

インスブルックでは飛ばし合いの設定ではなかったのだが、強い向かい風にゲート設定が追いつかないという事態が発生。
基準ゲート1番でスタートしたもののHSに届きそうな飛距離がバンバン出てしまったのだが、もう下げるゲートがない。
私が思う内で陵侑にとっては最も嫌な展開。

 

そして実際に陵侑は1本目で優勝争いをした選手たちより5mも伸ばし136.5mも飛んでしまった。
しかし―
私が衝撃を受けたのは、これに対し19.5ptが4つ並ぶ完璧な着地を決めて見せたこと。
“飛びすぎて転倒”などというリスクなどはとっくに凌駕しているのだろう。
もう、陵侑を止められるのはインフルエンザぐらいしか思いつかない。

 

2本目はリクエストにより0番ゲートを使用。
試合直前に行われた試技でもこの0番ゲートが使われており、宮平コーチはそのことがしっかりと頭に入っていたのだろう。
采配にも隙が無く、ライバルたちには成す術なし。

 

オーベルストドルフでも3位に入ってるクラフトが2位。
こうなると49位に終わったガル-パルが本当に悔やまれる。
3位ストエルネンは今季初表彰台。
ジャンプ週間総合で3位に浮上してきた。

 

佐藤幸椰は初のシングル。
1本目を6位で折り返した時点で3位ストエルネンとは3.3pt差しかなかった。表彰台ははっきりと見えていた。
伊東大貴は2戦連続ポイントゲット。
KOラウンドはグランネルがスーツ違反で失格だったので不戦勝だったけれど、対戦してても勝ててたように思う。

 

ジャンプ週間総合順位
Rank Name Nation Total 1st 2nd 3rd
1  小林 陵侑 JPN 815.9 282.3 266.6 267.0
1 1 1
2  マルクス・アイゼンビヒラー GER 770.4 281.9 264.7 223.8
2 2 13
3  アンドレアス・ストエルネン NOR 766.2 278.2 245.3 242.7
4 10 3
4  カミル・ストッフ POL 750.9 267.6 249.2 234.1
8 6 5
5  シュテファン・ライエ GER 748.1 260.0 249.0 239.1
13 7 4

ジャンプ週間総合順位(第3戦終了時点)

 

さあ、いよいよ最終戦。
余程のことがない限り、陵侑の総合優勝はだれにも止められないと思う。
よって、焦点はグランドスラム。
「取れたらうれしいけど、それほど気にしていない」と陵侑。
昨季のストッフ同様、陵侑も自然体で臨む。

 

 

コメント

  1. NORKEYさん、久しぶりにコメントさせていただきます。

    陵侑選手、NORKEYさんが仰るとおり、
    本当に現実の出来事なのか?…と疑いたくなるくらいの勝ちっぷりですね。

    去年、ストッフ選手がグランドスラムを達成した時、
    まさか2年連続で同じようなことが起こりそうになるとは、
    想像することもできませんでしたし、
    まさかそれが日本の選手とは…。

    高梨選手が勝ちまくっていたときとは、何か違う感覚。
    本当に、こんな簡単(そう)に勝てていいのか?と思えてしまいます。

    その半面、宮平コーチの何とも言えない笑顔とガッツポーズは見慣れてきました。
    飛び過ぎに毎回ヒヤヒヤさせられるなんて、
    コーチ冥利に尽きるのではないでしょうか??

    陵侑選手、体調管理には気を付け、
    これからも勝ちまくって、これが現実の出来事なんだということを
    世界に気づかせてもらいたいですね。

    それと、NORKEYさんが以前書かれていましたが、
    この陵侑選手が得た大きなヒント、
    葛西監督にも教えてあげていただけないかな?と私も思ってます。

    でも、映像を見ているわけではないですが、
    葛西監督は助走速度が改善してきてますね。
    陵侑選手に引っ張られ、今後の飛躍に期待です。

    ついでに女子選手にも陵侑フィーバーが乗り移って…
    とはならないでしょうかね???
    初の大倉山での女子WC、風が荒れないか心配ですが、
    会心のジャンプに期待したいですね。

    • Supiさん、コメントありがとうございます。

      今、これを書いているのは2019年1月7日の朝。
      未明に既に陵侑がグランドスラムを達成しております。

      「感動した!」とか「泣きそう!」といった感情は皆無で、只々「スゴイ!」
      現実感に乏しく、深夜から未明にかけての観戦だったことも手伝って夢の中の出来事のようにさえ思えます。

      一生に一度見られるかどうかというほどの快挙の瞬間を見させていただいて、陵侑くんには「おめでとう」と同時に「ありがとう」という気持ちでいっぱいです。