リンビークが屈指の名勝負を制し金 接戦を演じた小林陵侑は見事に銀
2022年2月12日(土) 北京(CHN)HS140/K125
Men’s Large Hill Individual
金 | マリウス・リンビーク(NOR) | 296.1pt |
銀 | 小林 陵侑(土屋ホームスキー部) | 292.8pt |
銅 | カール・ガイガー(GER) | 281.3pt |
4 | カミル・ストッフ(POL) | 277.2pt |
5 | マルクス・アイゼンビヒラー(GER) | 275.7pt |
6 | ティミ・ザイツ(SLO) | 273.2pt |
7 | マニュエル・フェットナー(AUT) | 272.7pt |
8 | ハルヴォア-エグナー・グランネル(NOR) | 271.4pt |
15 | 佐藤 幸椰(雪印メグミルクスキー部) | 260.6pt |
24 | 小林 潤志郎(雪印メグミルクスキー部) | 252.0pt |
29 | 中村 直幹(Flying Laboratory SC) | 240.9pt |
歴史に残る屈指の名勝負だった。
風向風速は限りなく0に近い稀に見る公平なコンディションの中、実力勝負の素晴らしい戦いが繰り広げられた。
勝った者が強いのではなく、強い者が勝った試合だったように思う。
リンビークは2.2pt差の2位から逆転で金メダルを射止めた。
公平な試合だったとは言え、彼の2本目は数値上でこの日一番の追い風を受けた。ゲートも1段下がっている。
しかし、そこでHSジャンプ見せた。たまに不安定さを見せることもあるテレマークも、しっかりと決めた。
小林陵侑にプレッシャーを与えるに余りあるパフォーマンス。それをこの局面で見せるとは。
1本目に142.0mを飛びトップに立った陵侑。公式練習と予選は今一つLHの台とあっていない印象を受けたが、本戦前の試技でトップを獲りしっかりとアジャストしてきた。
2本目は、リンビークの大ジャンプで上がった歓声が聞こえ「さすがに緊張した」らしい。そのせいか、わずかに踏切が遅れ、空中で少しスキーが乱れた。
僅かに3.3pt差で金メダルには届かなかったが、素晴らしい戦いの果てに見事に銀メダルを掴み取った。
日本ジャンプ勢として、同一大会で複数の個人メダルの獲得は1998長野大会の船木和喜以来2人目。
またひとつ、陵侑に “快挙” が加わった。
リンビークと小林陵侑が金メダルを争ったのに対して、銅メダルのガイガーは自分との戦いだったのかもしれない。
WCでは陵侑を抑えて総合首位につけている。その勢いのまま北京に乗り込んだ。目指すはもちろん金。
ところが、トレーニングから精彩を欠き続け、得意のNHでは15位に沈んだ。
起死回生で臨んだLH。予選で12番手ながらも自らを鼓舞するかのようにガッツポーズを見せた姿に、彼の苦悩が垣間見えて心が震えた。
本戦1本目でも、そして2本目でもガッツポーズを作った。そうして自分を鼓舞し続けて掴んだ銅メダル。
リンビークも陵侑も素晴らしかったが、個人的に一番胸に迫ったのはガイガーの不屈の姿。
カミル・ストッフ、ペテル・プレヴツといった王者たちもその名に恥じない姿を見せてくれた。
特にストッフはよくぞここまで立て直してきたと感銘を覚えた。試合後に涙した姿には、彼が五輪3連覇を本気で狙っていたことがうかがえる。
予選で4位だったシュテファン・クラフトは、結果とし13位に終わったが、2本目では136.5mを飛び見事なテレマークも決め意地を見せてくれたと思う。
佐藤幸椰、小林潤志郎、中村直幹も全員2本目に進んだ。
もちろん、この結果に対して納得も満足もしていないだろうが、LHにきて調子は上向きだと思う。団体戦に期待したい。
選手たちも見事な戦いを見せてくれたが、運営もまた見事だったと思う。
風がない分ゲート設定は比較的簡単だったかもしれないが、1本目ではビブ20番台の選手たちが次々と130mオーバーを繰り出したがゲートに手を加えることなく競わせたし、2本目はラスト6人で初めて1段下げたがメダル争いに直接影響するものではなかった。
名勝負の陰には、運営の適切なゲートコントロールがあったように思う。