ミラノ・コルティナ オリンピック2026 男子個人ラージヒル

二階堂蓮が今大会3つ目のメダル獲得も「悔しい」銀 ドメン・プレヴツは兄を超えスロベニア史上初の個人金

Large Hill Individual
  • 2026年2月14日(土)
  • ブレダッツォ ジャンプ競技場
  • HS141/K128

Official Results

 ドメン・プレヴツ(SLO) 301.8pt
 二階堂 蓮(日本ビールスキー部) 295.0pt
 カツペル・トマシアク(POL) 291.2pt
 
4  クリストファー-エリクセン・スンダル(NOR) 288.0pt
5  ヤン・ヘール(AUT) 286.9pt
6  小林 陵侑(TEAM ROY) 284.5pt
7  シュテファン・エンバッハ―(AUT) 284.1pt
8  イリヤ・ミゼルニク(KAZ) 281.6pt
 
16  中村 直幹(Flying Laboratory SC) 257.2pt

リザルト


二階堂蓮が涙した。
喜びの涙ではなく悔し涙。

どうしても獲りたかった金。
1本目終了時点で2位に7.0pt差をつけトップに立ったとき、確かにそれは目の前にあった。
本当にあと一歩だったからこそ、悔しさで涙があふれて止まらなかった。

1本目は完璧だった。この舞台でこのパフォーマンスを出せる凄み。
対して2本目は踏切で少し力が入ってしまっただろうか。ほんの少しの左右のバランスの違いがフライト後半に表われてスキーが揺れた。その分だけスピードと揚力をロスした。と、そんなように見えた。

2本目だけで見れば9位。それでも銀メダルに踏みとどまった。
「失敗したジャンプでも銀メダルに届いたってところは1番の成果かなと思います」と二階堂。ただ「心からメダルを獲得したことに自分から祝福できない」とも。
やはり”銀メダルを獲得した”のではなく、”金メダルを失った”という思いが強いのだろう。試合後に父の学さんから「よくやったよ」と抱きしめられると涙が止まらなくなった。

本人がこれほどまでに悔しさを表している以上、「銀メダルおめでとう」と口にすることは憚られる。

それでもやはり、見事な銀メダルであることは疑いがない。
個人ノーマルヒルと混合団体の銅に続く今大会3つ目のメダル。スキージャンプで日本人選手が1大会に3つのメダルを獲得したのは、1998長野での船木和喜に続き史上二人目。
「4年前の僕からしたらありえない話」と本人が語る通り本当にとてつもない偉業だ。

ただ、1998長野とは違い4つ目のメダルを獲得するチャンスがまだ残っている。
「スーパーチームはこの悔しさを全部ぶつけて、金メダルを絶対取りに行きたいと思います」

2日後のスーパーチーム戦は、おそらくは二階堂蓮と小林陵侑の二人が出場することになるだろう。
今日の試合では1本目は11位ながら、2本目は2位の得点でメダルまで6.7ptに迫る6位となった小林陵侑にとっても、混合団体の銅だけでは終われない。

「次こそ金だな」と、誓い合ったという二人。
二人の思いが報われることを願って試合を見守りたい。

男子個人ノーマルヒル歴代メダリスト(直近5大会)

 
2010 S.アマン(SUI) A.マリシュ(POL) G.シュリーレンツァウアー(AUT)
2014 K.ストッフ(POL) 葛西 紀明(JPN) P.プレヴツ(SLO)
2018 K.ストッフ(POL) A.ヴェリンガー(GER) R.ヨハンソン(NOR)
2022 M.リンビーク(NOR) 小林 陵侑(JPN) K.ガイガー(GER)
2026 D.プレヴツ(SLO) 二階堂蓮(JPN) K.トマシアク(POL)

男子個人ノーマルヒルで6位に終わったドメン・プレヴツを見て、次のような正直な感想を書いた。

オリンピックには予定調和を求めてしまっている自分がいる。
この舞台は、日ごろ圧倒的な強さを誇っている選手が、その姿を全世界に披露する場。普段この競技を見ない人にも、こんなすごい選手がいるんだと知ってもらう場。
オリンピックとはそういう場であってほしいと思っている。

その意味では、女子はニカ・プレヴツに存分にその無双する姿を披露してほしかったし、男子はドメン・プレヴツにいつもの異次元の姿を披露してほしかったという思いが正直ある。

そのドメン・プレヴツは、妹ニカと共に混合団体で金メダルを獲得したが、やはり個人種目で日頃のように強い姿を見せてほしい。
この日は二階堂蓮との金メダル争いとなったので当然に蓮を応援したけれど、同時にドメン・プレヴツがいつもの強い姿を見せてくれることも願っていた。

二階堂蓮の1本目が完璧だったのと同じく、プレヴツの2本目も完璧だった。
7.0pt差をひっくり返して、最後は6.8pt差をつけた見事な勝利。
「今日のこのジャンプのことは生涯忘れることはないと思う」とプレヴツ。見ていた誰もがそう思うであろう強い姿を見せてくれた。素晴らしい金メダルだと思う。

4度のオリンピックに出場した兄ペテル・プレヴツは、2022北京の混合団体で金を獲得してはいるが、個人では2014ソチのノーマルヒル銀とラージヒル銅があるものの金メダルを獲得したことがなかった。
よって、ドメンにとっては兄が成し得なかった偉業を達成したことになる。
また、スロベニアにとってはスキージャンプ個人種目で初の金メダリストの誕生でもある。

銅メダルにはポーランドの19歳カツペル・トマシアク。
個人ノーマルヒルの銀に続く今大会2つ目のメダル獲得となるが、昨年11月にワールドカップにデビューしたばかりで、チーム戦を含めてもまだ20試合しか出場したことのない選手。

ポーランドでは、今シーズンを最後に過去3度の金メダルに輝くカミル・ストッフが引退することが決まっている。
そのストッフは、今大会では個人ノーマルヒル38位、ラージヒル21位。
今大会は、38歳のストッフから19歳のトマシアクへの世代交代が鮮やかに行われた大会としても記憶に残るかも。

トマシアクの予想以上の大健闘に加えて、この試合ではイリヤ・ミゼルニクがカザフスタン史上最高の8位となり驚かされた。
オリンピックには予定調和を求める? まぁ、予想外の結果というのも時として悪くない。

そもそもオリンピックに予定調和を求めてしまうのは、前述の通り、普段この競技を見ない人にもスゴイ選手がいるんだということを知ってもらいたいが故のこと。
逆の言い方をすれば、多くの人たちが普段からワールドカップなどを観てスゴイ選手たちのスゴイ姿を知ってくれれば、オリンピックに予定調和を求める必要はなくなる。

試合後のインタビューで中村直幹が、佐藤幸椰、佐藤慧一、小林朔太郎、内藤智文の名前を挙げ、そういった面白い選手たちもいるのでオリンピックだけでなくワールドカップも見てほしいと語った。
オリンピックをきっかけに、ワールドカップや国内戦にも目を向けてくれる方が増えてくれれば、スキージャンプファンの一人としてこんなにうれしいことはない。